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ただ、こころがふるえただけ(前編)《夫が脳梗塞(脳卒中)に。妻のリアルな葛藤日記》

はじめに

みなさん、はじめまして
和泉大輝の妻、花菜です

数ある記事の中から「リハビリはゲーム感覚で!」をお読みいただき、ありがとうございます
また、「ただだけ」シリーズにも興味をお持ちいただいたこと、とても嬉しく思っております

こちらはサイドストーリーとして、
本編では伝えきれなかった妻の心情や、子どもたちの反応を描いております

花菜の正直な胸の内を綴っているため、
一部、お見苦しい点があるかもしれませんが、
一夜にして患者家族となったリアルな姿をそのまま書き記しております
何卒ご容赦いただけますと幸いです

では、どうぞ!(´▽`)




ただ、こころがふるえただけ(前編)


救急車のなかでは
救急隊員からの聞き取りが続いていた

「お酒は飲まれていましたか?」
「タバコはどうですか?」
「麻痺は左右どちらにありますか?」
「手はにぎれますか?」

大輝が しっかりと答える


「奥さん ご主人の顔の表情に 普段とは違う左右差はありますか?」

いつもと変わらない大輝の表情に
「ないです いつもと変わりません」 と答えた

「なら 脳梗塞ではなさそうですねぇ」
救急隊員はそう言った


原因はなんだろう



病院について
大輝はすぐに検査室へ

ついて行こうとしたわたしに
「奥さんは受付で手続きをして 待合室で待機をしていてください」
と 看護師はドアを閉めた

あ そーなんだ
付き添えないのね……



誰もいない待合室

においもなくて
テレビもなくて
ただただ 静かすぎるほど 静かだった

少し背筋をのばして座ると
自分の呼吸だけが そっと空間を揺らしている

そんな気がした


顔に ゆがみはなかったし
言葉も 気張れば ハキハキ話せてた

意識だって
ちゃんとあった

なのに大輝は 立てなくて
手も足も 動かない


検査してるから
すぐにわかるよね

そんなふうに 思ってた



「検査の結果が出たのでどうぞ」 と遠くで声がして
大輝のもとへ 案内された



 医師から告げられたのは

「脳には異常はありませんでした
脳梗塞でもないですよ
ただ 三半規管が狂ってるだけなので心配するようなことはないです
もう帰ってもらってもいいですよ」

だった


帰っても
何も 出来ない

帰ることさえ 出来 ない……


「……え?」
「失禁するくらい 動けないのに??」

「はい 耳の中にある玉が出てきただけなので 沢山動いていたら治りますよ
というより 動かないと治りません」


……立てなくて 救急車でここに来たんだよ?

また 救急車で帰るの?
病院から 自宅に??



ふたりして 腑に落ちなくて
もう暫く病院で 様子をみることにした



時間が経つにつれ 酷くなる大輝……


入院したいと 何度も頼んだ

「まあ そこまで言うなら……
確かに来た時より悪化はしてますね
入院して様子をみましょう」


やっと 決まった


入院することになったはいいけど
大輝は数時間も そのベッドの上で
ただただ ひとり
不安とたたかっていた


わたしはというと
「奥さんは待合室にいてください」と言われ
元の場所にもどって
静かに じっと待っていた




どれくらい たっただろうか


声が遠くから響いた


「和泉さんのご家族の方 ご主人さんがおしっこをもらしてしまったので すぐに来てください」



おしっこ?


そんなことになるなんて 思ってもみなかった



驚きと心配とが 一気にこみ上げて
わたしは足早に
大輝の元へ かけつけた



トイレに行きたくて
なんとか 身体を動かして
ようやく そのベッドの隅にまで座れてたけど

そこで 力尽きて 失禁していた



「トイレに行きたければ 言ってくれればいいのに」
と言い放たれた大輝は
「呼んだのに」と 悲しげに怒った


大輝のこころが 心配だった
失禁って……

プライド あるよね……


わたしがそばに居たら 違ったね

ごめんね



後編に続きます



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