8月15日はジュリアス・カッチェンの誕生日――早世した天性のピアニストが残した、ブラームス《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》の不滅の輝き
8月15日は、42歳という若さでこの世を去ったアメリカのピアニスト、ジュリアス・カッチェン(1926–1969)の誕生日である。彼の芸術を語るとき、欠かせないのがブラームスのピアノ作品群だ。特に1958年、カッチェンが30代後半の全盛期にデッカで録音した《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》作品24は、彼の典型的な演奏スタイルが鮮やかに映し出された一曲として、今日もなお特別な位置を占めている。
カッチェンはこの作品を生涯に三度録音している(1949年、1958年、1962年)。なかでも1958年の録音は、若々しい情熱と成熟した洞察が最も美しく均衡を保った時期のものだ。彼の作品に対する真摯な態度と、その奥に瑞々しい詩的な感興を行き渡らせた演奏は、ブラームスのピアノ曲における一つの指針としての価値を今も失っていない。
何より指摘すべきは、どの音にもピアニスト自身の音楽への感動が生き生きと投影されている点である。ヘンデルの簡素なアリアから始まる主題を、カッチェンは飾り気なく、しかし確かな敬意をもって提示する。続く25の変奏では、若々しい叙情性を引き立てる軽やかなタッチから、老練な作曲家のささやかな旋律にしっとりとした詩情を与える沈潜した表現まで、幅広い表情を自在に操る。そして最後のフーガでは、超絶技巧で猛進するような覇気と、深い静けさが見事に融合し、少しも不自然さを感じさせない。
基本的に彼の解釈は率直かつシンプルだ。どんなに大曲であってもくどくならず、非常に幅広いダイナミズムを駆使しながら、常に明晰な音を保つ。注意深く控えめなペダリングも特徴的で、デッカの当時の録音技術も概ね満足できる水準を維持している。ごく一部に音の歪みが聞かれる程度で、時代の経過をそれほど感じさせない。
技術的にはこの上をゆくピアニストはいくらでもいるだろう。しかし、こんな演奏を聴かせてくれる人はそうざらにはいない。カッチェンの《ヘンデル変奏曲》は、短かった生涯を駆け抜けるように精力的に生きた彼の芸術に触れる、絶好の機会を今も提供し続けている。誕生日を迎えるたびに、この録音に耳を傾けることで、早世した天才の魂が、ブラームスの音楽を通じて今なお鮮やかに蘇るのである。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 
