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ローカルLLMの速度はメモリ帯域で決まる。スペック表の正しい読み方

なぜ高いマシンでもローカルLLMが遅いことがあるのか。速度は「メモリ帯域÷モデルサイズ」という1本の式でほぼ予測できます。

ハードの名前を並べた比較記事は多いのに、この原理から書いた記事はほとんどありません。式を1本覚えるだけで、どのマシンでどのモデルがどれくらいの速度で動くか、買う前に自分で計算できるようになります。

「速いマシン」の直感が外れる理由

ローカルLLM界隈でよくある落胆があります。

  • 128GB統合メモリの最新マシンを買い、70Bモデルを動かしたら毎秒数トークンしか出ない

  • CPUを最上位にしたのに、LLMの生成速度がほぼ変わらない

  • 「AI性能◯TOPS」をうたうPCで、Ollamaが期待外れに遅い

PCの速さの直感(CPU世代、コア数、クロック、TOPS)は、LLM推論にはほぼ通用しません。LLMには固有の律速要因があるからです。

LLM推論の2つのフェーズ

LLMの推論は、性質の違う2つのフェーズでできています。

  • プリフィル(入力の読み込み): 投げたプロンプト全体を一気に処理する。計算力(GPUの演算性能)が効く。長い文書を貼り付けたときの「考えている時間」はここ

  • デコード(トークン生成): 1トークンずつ文章を生成する。体感速度はこちら

デコードには重要な構造があります。1トークン生成するたびに、モデルの全パラメータをメモリから読み出すのです。20GBのモデルなら、1トークンごとに20GBの読み出しが発生します。計算そのものは軽く、データを運ぶ作業が支配的になります。

だからデコード速度は、演算性能ではなく「メモリからデータを運ぶ速さ」=メモリ帯域で頭打ちになります。

速度を予測する式

デコード速度は次の式で近似できます。

毎秒トークン数 ≈ メモリ帯域(GB/s) ÷ モデル占有サイズ(GB)

計算例を3つ挙げます。

  • RTX 4090(帯域1,008GB/s)で20GBの32Bモデル → 約50トークン/秒

  • DGX Spark(帯域273GB/s)で43GBの70Bモデル → 約6トークン/秒

  • ノートPC(帯域135GB/s)で6.6GBの9Bモデル → 約20トークン/秒

実際にはKVキャッシュの読み出しなどが加わるため、実効値は理論値の7〜8割程度に落ちます。それでも「桁を外さない」精度で予測でき、購入判断には十分です。

冒頭の落胆例の種明かしもこの式です。128GB統合メモリ機は「容量」は立派でも「帯域」が273GB/s程度しかないため、70Bの高密度モデルでは毎秒4〜5トークンにしかなりません。

主要ハードのメモリ帯域一覧(2026年7月)

この式に代入するための帯域一覧です。カタログの「メモリ帯域幅」の行だけ見れば、マシンのLLM適性は読めます。


表1: 分類 / ハード / メモリ帯域


要点を文章でも押さえます。コンシューマGPUの上位は1TB/s級、Appleの上位チップは500〜800GB/s級、話題の統合メモリ機(DGX Spark・Strix Halo)は250〜270GB/s級、普通のノートPCとCPU実行は90〜140GB/s級。この4つの階級を覚えておけば、スペック表を見た瞬間におおよその速度が浮かびます。

なお「どのモデルがメモリに載るか」は容量の問題なので、別途『[2026年7月更新] ローカルLLM必要VRAM早見表。あなたのPCで動くモデル』と掛け合わせてください。容量で「載るか」、帯域で「速いか」。この2軸でハード選びは完結します。

MoEが速度問題を変えた

2026年のモデル事情には、この式の読み替えが1つ必要です。主流になったMoE(Mixture of Experts)型モデルは、総パラメータのうち一部(活性パラメータ)だけを毎トークン読み出します。

MoEの速度 ≈ メモリ帯域 ÷ 活性パラメータ分のサイズ

  • gpt-oss 120B(総117B・活性5.1B): メモリは65GB必要だが、毎トークンの読み出しは数GB。DGX Sparkでも毎秒30トークン級が狙える

  • Qwen3.5 122B-A10B(活性10B)、35B-A3B(活性3B)も同じ構造

ここから2026年の新しいハード選びの定石が生まれました。大容量・低帯域のマシン(DGX Spark、Strix Halo、128GB Mac)は、高密度70Bではなく100B超MoEを動かすための箱と考えると、性能を最大限引き出せます。逆に高密度モデル狙いなら、容量より帯域(=GPU)に投資すべきです。

実践: 購入前チェックの4ステップ

機材を買う前に、この順番で計算してください。

  1. 使いたいモデルの占有サイズを確認する(量子化後の実サイズ。VRAM早見表参照)

  2. 候補マシンのメモリ帯域をカタログで確認する

  3. 帯域÷サイズで理論速度を出し、0.7〜0.8を掛ける

  4. その速度が用途に対して許容できるか判断する

許容ラインの目安は用途によって変わります。

  • チャット対話: 毎秒10トークン以上あれば会話としてストレスが少ない

  • コーディング補完: 毎秒30トークン以上ほしい。待ち時間が作業リズムを壊すため

  • 夜間バッチ処理(要約・分類など): 毎秒数トークンでも成立する。速度より容量を優先してよい

「最新で高い=速い」ではなく、「自分のモデルサイズと帯域の割り算」で決まる。これがローカルLLMの機材選びで唯一覚えるべき原理です。

まとめ

  • LLMの体感速度はデコードで決まり、デコードは毎トークン、モデル全体をメモリから読み出す

  • だから速度 ≈ メモリ帯域 ÷ モデル占有サイズ。実効はその7〜8割

  • ハードは4階級: GPU上位1TB/s級 / Apple上位500〜800GB/s級 / 統合メモリ機250GB/s級 / ノートPC・CPU 90〜140GB/s級

  • MoEモデルは活性パラメータで読み替える。大容量・低帯域マシンはMoE向き

  • 買う前に「帯域÷モデルサイズ」を計算し、用途別の許容ライン(対話10、補完30トークン/秒)と比べる

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