木の枝の瓦にさはる暑さかな
7月24日は芥川龍之介の百回忌。
昔は小生も、生前に出た著書を何冊か持っていたのだが、いつの間にか処分してしまって、本棚を眺めてみても、復刻版の『澄江堂句集』しか見出せない。まあ、それでもいいかと思いつつ大暑(1927年は7月23日)の翌日にみまかった作家にちなんで暑い句を探してみた。
開巻いきなり《暑さかな》があってビックリ。蝶とあるから春の句か。
蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな
以下掲載順に三句挙げる。
木の枝の瓦にさはる暑さかな
松かげに鶏はらばへる暑さかな
兎も片耳垂るる大暑かな
ついでに『澄江堂句集』の印譜もめくってみる。まず「鉞哉」という大きな印章(7cm×6.5cm)が目に留まった。鉞(エツ)は《まさかり。大きなおの。車につけた鈴の鳴る音。》。その印面につづいて側款の拓も掲載されているのだが、ただ、何が刻まれているのか、ほとんど読めない。君子などとあるからおそらく有名な文章だろう。



断片的な単語で検索してみると、唐の詩人である元結の「丐論(がいろん)」からの引用だと見当がついた。彫られている文章は次のように読める。
古人郷無君
子則與山水為
友里無君子
則以松竹為
友坐無君子
則以琴酒為
友
ただしネット上に出ている版本で見るテキストと文字使いが少し異なる。
元結「丐論」
古人郷無君子則與雲山為友里無君子則與松竹為友坐無君子則與琴酒為友
1927年7月23日の東京の日中の最高気温は35.6℃、湿度52%と、ほとんどの人が蒸し暑さのため不快感を感じる天気だったそうだが、それが芥川に死にたくなるほどの不快を感じさせたのか?
昨今の酷暑日連続の世界を生きる者としては35度なんて暑いうちに入らないよと言いたくなってしまうのだが。
