40代転職奮闘記 番外エクセル編ー感謝は最初の数日だけだったー
1. 「すごい!」と言われたあの日
最初は、たしかに感謝された。
「え、もう終わったの?」
「すごいですね!」
「これ、〇〇さんが作ったんですか?助かりました!」
そんな言葉を、何度か聞いた気がする。
VBAで組んだマクロが、誰かの作業時間を半分にした。
手作業だった集計業務が、一瞬で終わるようになった。
パソコンの前で驚いた顔を見るたびに、「やってよかったな」と思った。
けれど、その感謝は長くは続かなかった。
それは、ほんの数週間くらいのことだった。
2. 便利は、やがて当然になる
気づけば、「すごい」は聞こえなくなった。
代わりに返ってくるのは、
「これ、壊れてない?」
「今月のバージョン、なんか違う気がする」
「前の方が見やすかったかも」
あの時、驚いていた人たちが、
今では何の躊躇もなく「直して」と言う。
それが、「便利になる」ということだ。
役に立った瞬間から、“あるのが当然のもの”になっていく。
3. 誰も気づかない夜の修正作業
マクロが動かないと聞けば、その日の夜には家でExcelを開いている。
「もう頼まれてないし、やらなくてもいいか」
そう思いながらも、
誰かが困っているかもしれないという思いだけで、
独学で、粗削りなまま積み上げてきたコードをまた開く。
エラーの原因を探して、再現テストをして、
動作確認してから上書き保存。
たまに上司に「直しときました」と報告しても、
「あ、ありがとう」とだけ返されて終わる。
誰にも見られない場所で修正は続く。
何もなかったように、明日またファイルが開かれるように。
4. 辞めてもいいのに、なぜ手を止められないのか
正直、何度も思った。
「もうやらなくていいんじゃないか」
「感謝もされないのに、なんで自分ばっかり」
「むしろ壊れたら気づかれるくらいが、ちょうどいいんじゃないか」
でも、やっぱりやめられなかった。
誰も気づいていないだけで、
ちゃんとこの仕事は誰かを助けていると、自分だけは知っているから。
5営業日かかっていた集計が、今では半日で終わっている。
それは、私が組んだ関数と、黙って働くマクロの力だ。
5. それでも私は、黙ってExcelを開く
感謝されたいわけじゃない。
でも、粗削りで不格好でも、誰かの役に立てるものを作りたかった。
それを、誰にも見られず終わるのは、やっぱり少し寂しい。
それでも私は、今日もExcelを開く。
無音で、無表情で、指先だけが淡々とセルを走る。
コードは、言葉を返さない。
でも、私の手の中で確かに動いてくれる。
マクロが完成しても、誰も拍手はしない。
でも、誰かの残業が1時間減っている。
それだけが、ささやかな報酬だ。
6. さいごに:誰かの業務が今日も静かに終わっているなら
「影の努力」なんて言葉は、たぶん誰も本気では見ていない。
便利なものは、便利であることに感謝されることは少ない。
でも、
今日も何ごともなく1日が終わった、
その裏側に黙って支えた誰かの夜があったのだとしたら。
そんな仕事も、
それなりに意味があるのかもしれない。
そして、今、私たちが何事もなく過ごせているのも、知らない誰かの努力の結晶。
当たり前は誰かが苦労して作ってくれている当たり前なんだって。
忘れがちだけど、大事な事だと思う。
ありがとうございます。
