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国内マンガ市場が頭打ちの今、出版社がやるべきは「データ」を資産に変えて、「世界」で勝負することだと思う。

マンガ産業はいま、ちょっとした踊り場にいます。

2024年のコミック市場は7,043億円でした。電子が72.7%を占め、前年比6.0%増。一方で紙は8.8%減の1,921億円。数字だけ見れば「まあまあ順調じゃないか」と思うかもしれません。でも、その内訳を注意深く見ると、実は危険信号が点滅しています。

電子の成長率は年々鈍化しています。6.0%という数字は決して悪くありませんが、過去5年間の急激な伸びと比べると明らかにペースダウンです。

「コミックは電子版が7割超え 24年のコミック市場規模は過去最高7000億円規模に」より全国出版協会・出版科学研究所「紙と電子を合わせたコミック市場規模の推移」|ITmedia

紙のコミックス(単行本)とコミック誌に、電子コミックを合わせた推定販売金額は、前年比101.5%と横ばいになりました。

同上、全国出版協会・出版科学研究所「紙のコミックス(単行本)とコミック誌の推定販売金額」

そして何より深刻なのは、有料電子書籍の利用率が4年連続で低下していること。2024年度は17.8%まで下がりました。

『電子書籍ビジネス調査報告書2025』より「電子書籍利用率の推移」(株式会社インプレス、2025年7月24日)

これはつまり、新規の課金読者がもう増えていないということです。

スマホ普及は頭打ち、電子書籍への移行もほぼ完了しました。市場は「普及フェーズ」から「深耕フェーズ」に移行し、電子コミック市場は既存ユーザーからより多くのお金を引き出すことで成長を支える構造になっています。

市場が踊り場で立ち止まっているうちに、新たなマンガを生み出す揺りかご的な存在だった「マンガ雑誌」という足元の地盤が崩れ始めています。マンガ雑誌の休刊が相次いでいるのです。2024年だけでも「月刊コミックバンチ」「月刊アクション」「ちゃおデラックス」などが姿を消しました。

以前もnote(↓)で解説しましたが、マンガ雑誌が担っていた「新人発掘・育成」「作品のチューニング」「ヒット拡大」という機能が失われつつあるのです。

その一方で、電子コミック書店(プラットフォーム)では、売れるものがより売れ、売れないものは埋もれる「二極化」が進みます。ピッコマ36.6%、LINEマンガ32.3%、合わせて約7割という寡占状態では、プラットフォームの都合で読者の目に触れる作品が決まってしまいます新人作家の作品は、放っておけば読者の目に届かないかもしれないのです。

さらには、動画やSNSとの時間争奪戦も激しさを増しています。YouTube利用率80.8%、TikTok利用率33.2%。短尺動画の即効性の前では、マンガの「じっくり読む」体験は分が悪い。実質賃金も3年連続マイナスで、まとめ買いや衝動買いには逆風が吹いています。

要するに、国内マンガ市場は「成長の踊り場」ではなく「縮小への転換点」に立っている可能性が高いのです。

ヒット作の芽を見つけるために、「データ」を資産に変える

ではどうすればいいのでしょうか。答えは「データを資産に変えること」です。

ヒット作は偶然生まれるものではありません。読者の反応、アクセスパターン、離脱ポイント、シェア行動—これらすべてがヒットの兆しを教えてくれます。問題は、そのデータを電子書店が独占していることです。

出版社は、電子書店で自分たちの作品がどう読まれているか、詳細なデータを持っていません。

たとえば、秋田書店のヤンチャンWeb『片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』は、編集部とコミチが協力しながら大きく売り伸ばした作品の1つです。シリーズ作品の累計発行部数は700万部を超えています。

片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~|ヤンチャンWeb

Web雑誌『コミチ+』では、ユーザーが1訪問あたりにアクセスするページ数が他のマンガサイトより圧倒的に多くなっています。これは、特定の作品を読みに来た読者に対して「こんな新連載が始まりました」「この作品があなたにはオススメです」という告知を効果的に見せているからです。

読者のデータを出版社、編集者のみなさんが管理して、そのデータをプロモーションに活かせるのもコミチの強みです。

アクセス解析ツール「SimilarWeb」で比較したマンガサイトの推定トラフィック調査

データがあれば、新人作家の作品でもわずかな兆しを見つけてヒットの可能性を見極められます。データがなければ、ベテラン編集者の目利きに頼りっきりになってしまう、そんな可能性もあります。

SaaSから業務のアウトソーシングを引き受ける「BPaaS」への進化

一方で、出版社には課題があると思います。編集者は作家と一緒に作品を創ることで手一杯で、読者分析やプロモーションまで、なかなか手が回らないのです。

そこで重要になるのが「BPaaS(Business Process as a Service:ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)」の考え方です。

労務・経理を丸ごとクラウドに 「BPaaS」中小で広がる|日本経済新聞

創作・クリエイティブ以外のやらなくてもいい雑務をアウトソーシングしながら、データの主権は出版社が握る。これを可能にするのがBPaaSです。BPaaSなら、業務プロセス全体をアウトソーシングしながら、戦略上重要なデータは自社に蓄積できます

コミチはこれまで「SaaS(Software as a Service:ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」として多くの出版社案件を引き受けてきました。

多くのマンガ雑誌を支援するなかで培った効率化ノウハウを、今度はBPaaSとして提供します。

たとえば、コミチは新たに「コミチプレス」というサービスを開始しました。これは出版社・編集部向けのニュース/公式サイト構築CMSで、従来のコミチ+とAPI連携することができるサービスです。

コミチプレスで解決できる課題は明確です。ニュース更新の散在を編集部内で一元管理し、ファン導線の分断を作品ページやECへの導線で解決し、海外読者への対応を多言語・タグ自動生成で支援します。

重要なのは、Next.js+Headless CMSによる高速化とSEO最適化、そしてCSS・コンポーネント単位でのカスタマイズ性の高さです。出版社ごとのブランドを保ちながら、運営の負荷を大幅に軽減できます。

ニュース・単行本データを共通DBで同期することで重複入力はゼロ。各種ニュース導線を最短1クリックで掲載できます。これにより編集者は本来の仕事である「作品づくり」に集中でき、データは確実に出版社に蓄積されます

ライツ売上の最大化を目指して、「世界」で勝負

出版社が読者データを確保し、アウトソーシングして効率化を進める。その先に見えるのは、グローバル市場での勝負です。

世界のマンガ市場は2023年の136.9億ドルから2030年には421億ドルへと約3倍に拡大する予測です。特に米国市場は9.3億ドルから38.87億ドルへと約4倍の成長が見込まれています。そしてアニメ市場を含めれば、2030年には600.6億ドル(約9.44兆円)という巨大市場が待っています。

出版社のビジネスの中心は、すでにライツ売上に比重が移っています。単行本の売上だけでなく、アニメ化、実写化、ゲーム化、グッズ展開──これらすべてが版権(IP)の価値を押し上げます。

下記は、実際に4大出版社さんの収益データをまとめたものですが、電子書籍が踊り場に入り、代わりに版権(IP)が成長領域に入っていることがわかります。このXポストは13万回閲覧されて多くシェアされましたが、「電子書籍は踊り場、IPは成長領域」という事実が多くの人にとって驚きだったのだろうと思います。

『ONE PIECE』のアニメ映画が北米で大ヒットし、トレーディングカードゲームが発売わずか1年で世界出荷10億枚を突破した事例を見れば、マンガIPの世界展開がいかに巨大なビジネスになるかがわかります。

Netflix版『ONE PIECE』『幽☆遊☆白書』が世界的ヒットを記録したように、VFX技術の向上によりマンガの実写化も現実的になりました。週刊少年ジャンプの『カグラバチ』が海外SNSで話題となり、アニメ化前から米国や韓国で急上昇した事例も示唆的です(参考noteは下記↓)。

一方で、世界進出には課題もあります。過去の大ヒットの版権(IP)だけに頼らず、継続的に新たなヒット作を生み出せる生態系が必要です。

日本のマンガ制作システムの強みは、作家と編集者による「職人の工房」的な関係性にあります。ハリウッドやWebtoonのような「工場」式の分業体制とは違い、作家の個性が色濃く反映される独創的な作品を生み出せます

この強みを活かしながら、データドリブンなアプローチで次のヒット作を発掘し育てていく。コミチが支援する前述の秋田書店のヤンチャンWeb『片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』のように、データ分析でヒットの兆しを見つけ、適切なタイミングで適切なプロモーションを仕掛ける。

そして何より重要なのは、紙のコミック誌が読者アンケートを重視するのと同じように、電子コミックでも作品と読者のインタラクションがある中で、次の大ヒットを狙う新たなトライができる環境を維持することです。売上最適化だけでは多様性が失われます。創り手の意図的な挑戦があってこそ、世界で通用する独創的な作品が生まれるのです。

電子書店に依存した現在の構造では、出版社はデータの蓄積ができず、新たなヒット作を生み出す力がだんだんと削がれていきます。①BPaaSによる効率化で出版社はクリエイティブに集中し、②データ主権でヒットの芽を見つけ、③グローバル展開でライツ収益を最大化する──この三段階の戦略が、縮小の危機を成長のチャンスに変えるはず。

マンガ市場の踊り場を突破するカギは、「データ」を資産に変え、「世界」で勝負することだと思います。

コミチのミッションは「マンガを世界に知らしめる」こと。まだまだ駆け出しのスタートアップですが、これからWeb雑誌『コミチ+』とサイト構築サービス『コミチプレス』を通じて、出版社のBPaaS支援に本気で取り組みます。200万人の会員基盤と月間500万ユーザーのプラットフォームで蓄積される読者データを、出版社の次世代ヒット作の制作・発掘に活用していきます。

お役に立てることが少しでもあれば、ぜひお声がけください!


<お知らせ>

マンガの読者データの利活用・支援にご興味がある出版社様、ぜひコミチの提供する最新ソリューション「BPaaS(Business Process as a Service)」をご紹介させてください。BPaaSならば、一部業務を効率的にアウトソーシングしながら、戦略上の重要な「データ」を資産として自社に蓄積できます。詳しくは下記HPよりお問い合わせください。

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