後記「ビジネスモデルx図解x知財」(知財若手の会)
はじめに
知財若手の会(以下「チザワカ」)で「ビジネスモデル図解x知財」というテーマで登壇した。
チザワカは、35歳以下又は知財経験3年以下という若手人材のコミュニティ。
歳を取ると、この条件の人と対面する機会もだんだん減ってくる。
めったにないLIVEパフォーマンスの場だと割り切って、話したいことを話したいように話す(遠慮しない)ことにした。
登壇の経緯
「ビジネスモデル図解」は、「ビジネスモデル2.0図鑑」(図解総研)で紹介されるビジュアル表現のこと。
このビジュアル表現について、角渕さんと僕がほぼ同時に共感するタイミングがあった。
そこで意気投合し、すぐに意見交換をしたところ、現時点仮説を社会に発信しよう、ということになった。
その発信の第一段として、若手に聞いてもらったのが今回の場である。
特許脳を一度捨ててみよう

角渕さんが後で回収してくれることになっていたので、僕はただただしゃべりたいことをしゃべることにした。
「特許脳を捨てよう」
今までにない価値軸を伝える場であるので、今までの土壌の上に角渕さんの話を置くよりも、先入観のないフレッシュな状態で角渕さんの話を聞いてもらったほうが良いだろう。
そこで、こんな問いをなげかけてみた。

あの場にいた人には、どのように伝わっただろうか。
まとめ
チザワカでの登壇は、普段味わえない空気感も相まって満足度の高い時間になった。
なにより、1周りも2周りも下の若手と対面で意見を交わす機会など、願ってもそう手に入るものではない。
そういう動機付けのない風を自身に組み合わせることは、進歩性のある時間であった。
「ビジネスモデル図解x知財」という主題は、今後も、第二弾、第三段と発信機会を企画している。
しかし、僕がその企画で狙う目的は、「ビジネスモデル図解」を知財業界に持ち込むことではない。
知財という無形の財産に対して、様々な角度から光を当て、その影のカタチの変化を知ることにある。
関連情報
レポート(by Notebook LM)
なぜ、あなたの専門的な話は経営者に響かないのか?知財と広報のプロが明かす「納得感」を生む3つのコミュニケーション術
Introduction: The Expert's Dilemma
「この提案は論理的に完璧で、データも揃っている。なぜ経営陣に響かないんだ…」
知的財産のプロフェッショナルや技術開発のエンジニアなど、専門分野のエキスパートであれば、一度はこんな悔しい思いをしたことがあるのではないでしょうか。事実に基づき、論理的に構築されたプレゼンテーションが、意思決定者である経営者の心を動かせない。このコミュニケーションの断絶は、多くの組織で起きている根深い問題です。
この記事では、そんな専門家が陥りがちな「伝えることの罠」を乗り越えるための3つのコミュニケーション術を解説します。これらは、客観的な正しさを追求する「特許」の世界と、人の心を動かすことを目的とする「広報」の世界、両方を経験したからこそ見えてきた、思考の転換法です。これを読めば、あなたの専門知識が、単なる「正しい情報」から、経営者を動かす「納得感のあるストーリー」へと変わるはずです。
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1. 「論理的な正しさ」ではなく「物語としての分かりやすさ」を追求する
専門家がまず理解すべきは、「分かりやすさ」には2つの種類があるという事実です。そして私たちは、無意識のうちに片方だけを使い、もう片方を無視しがちです。
一つは**「特許脳」が求める「論理的明確性」**です。これは、特許の審査基準のように、客観的で非個人的な基準に基づいています。この基準の目的は、審査官AさんとBさんで判断がブレないように、主観的な解釈の余地を徹底的に排除することにあります。そのゴールは、論理的に完璧であること。たとえ専門家以外には難解であっても、一分の隙もない正確さが最優先されます。
これに対し、もう一つは**「広報脳」が求める「説明的明確性」です。これは、世の中のトレンドやタイミング、人々の感情といった、主観的で人間中心の要素に基づいています。その基準は「季節的」(季節やイベントに連動する)でもあり、「属人的」**(特定の新聞記者の好みなど、個人に依存する)でもあります。目的は、論理的な正しさよりも、聞き手の「共感」を呼び、心に響く「ナラティブ(物語)」を創り出すことです。
この違いは、チョコレートの例で考えると非常に分かりやすいでしょう。
特許脳の思考: 新しいチョコレートの製造技術を発明したら、特許は「先願主義」に基づき、1秒でも早く出願すべきです。たとえ元旦の1月1日であっても、それが論理的に正しい行動です。
広報脳の思考: 同じチョコレートの商品プレスリリースは、世の中が最もチョコレートに関心を寄せるバレンタインデー商戦の時期、例えば2月14日に発信すべきです。これが人々の心に最も響くタイミングです。
経営者とのコミュニケーションでは、ときに「広報脳」が求められることがありす。彼らは単なる事実の羅列ではなく、ビジネスの文脈に沿った説得力のあるストーリーを求めることがあります。「説明的明確性」とは、まさに次のような状態を生み出す発想方法です。
詳細までは理解できなくても「なんだか、いいね」と思ってもらえる状態。聞き手の共感を得て、ストーリーとして心に残っている状態が求められているのです。
まずは、自分の思考が「論理的明確性」に偏りすぎていないか、自問することから始めましょう。
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2. 「正解」を提示するな。「納得感」で心を動かせ
専門家は、自身の知識と分析に基づいて「これが唯一の正解です」と提示しがちです。しかし、この「正解観」が常に相手の心を捉えるとは限りません。
経営者は常に不確実な未来と向き合っており、未来が100%予測できないことを誰よりも知っています。彼らは「絶対的な正解」ではなく、**「納得感(Nattokukan)」**を求めています。
この感覚は、天気予報に似ています。「明日の降水確率は50%です」という予報は、当たるか外れるかの「正解」を提示しているのではありません。その予報を聞いた人が「なるほど、それなら傘を持っていこう」と納得し、自信を持って行動を決定するための判断材料を提供しているのです。**「納得感」**とは、まさにこの「確かにお前の言うことには一理あるな」と感じ、不確実な中でも意思決定できる、腹落ちした感覚のことです。
したがって、私たちのゴールは、論理的な議論で相手を打ち負かすことではありません。経営者が迅速かつ決定的な反応を示せるような、明確な「示唆」を提供することです。理想的なコミュニケーションの成果は、次のような反応を引き出すことにあります。
「なるほど、分かった。任せる」と言わせるような示唆を出すことが、一つのマイルストーンになるかなと思っています。
経営者が専門家に期待するのは、預言者になることではありません。データと知見に基づき、経営者が確信を持って前に進むための、最も説得力のある道筋を示すことなのです。
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3. 相手の「視座」に合わせ、情報の「解像度」を調整する
経営者とのコミュニケーションギャップは、**「視座(Shiza)」**のズレから生じます。「視座」とは、物事を見る視点の「高度」のこと。
この関係は、Googleマップで考えると分かりやすいでしょう。
経営者の視座: 日本地図全体を俯瞰する「衛星写真」のような視点。国全体の動きや市場の大きな流れを見ています。
専門家の視座: 特定のビルの一室を拡大した「ストリートビュー」のような視点。技術的な詳細や個別の判例など、ミクロな情報に集中しています。
経営者が日本地図を指して「あのあたりが…」と話している時に、専門家が「あのビルの屋根の形が…」と話していては、会話が成立するはずがありません。
優れたコミュニケーターは、この視座を自在に調整できます。経営者の話す抽象度に合わせてマクロな視点で全体像を語ることもできれば、深掘りされた際にミクロな視点で具体的な詳細を説明することもできるのです。
これは情報の**「解像度」を調整するスキルとも言えます。経営者は多くの場合、意思決定に必要な「適度に粗い解像度」**の情報を求めています。ここに、専門家が見落としがちな決定的な事実があります。経営者は、要約だけで意思決定したいのです。細かい話を聞かなければ意思決定できない時点で、それはもはやベストな状況ではありません。
あなたの仕事は、彼らを圧倒しない程度に、しかし「納得感」を醸成するには十分な量の詳細を、適切なタイミングで提供することです。大局と詳細をスムーズに行き来し、説得力のある要約を提示できる能力こそが、経営者からの絶対的な信頼を勝ち取る鍵となります。
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まとめ:専門家が身につけるべき、もう一つの「頭脳」
経営層に専門的な話が響かないのは、あなたの知識や論理が間違っているからではありません。それは、コミュニケーションの「OS」が違うからです。
このコミュニケーションは、**「一方向のベクトル」**でなければなりません。つまり、専門家が経営者を理解するのです。逆はありません。なぜなら、自社の知財の細部まで理解している経営者がいるとしたら、その会社は少し「暇」なのかもしれないからです。経営者は経営に全リソースを投じるべきであり、私たち専門家は、彼らの視座に立ってコミュニケーションを取る必要があります。
そのためには、論理的な正しさを追求する**「特許脳」という荷物を一旦置き、共感と物語を重視する「広報脳」**を意識的に使うことが不可欠です。
「物語としての分かりやすさ」を追求する: 論理的な完璧さより、相手の共感を呼ぶストーリーを意識する。
「納得感」で心を動かす: 「正解」を提示するのではなく、相手が自信を持って決断できる「納得感」を目指す。
相手の「視座」と情報の「解像度」を調整する: Googleマップのように視点を切り替え、適切な抽象度で情報を届ける。
これらのマインドセットは、一朝一夕に身につくものではないかもしれません。しかし、意識するだけで、あなたのコミュニケーションは劇的に変わるはずです。
最後に、あなたに一つ問いかけたいと思います。
「次に経営層へ報告する時、あなたは『特許脳』と『広報脳』、どちらで話しますか?」
