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【初心者向け】べらぼうに面白い!江戸の黄表紙を楽しむ3つのポイント

江戸の知的エンタメ小説、黄表紙とは?
大河『べらぼう』で話題の〈黄表紙〉を楽しむ3つのポイントを紹介します。


大河ドラマ「べらぼう」で要注目の出版物・それが黄表紙!
絵と文が一体化した江戸のコミックともいうべき読み物で、NHKで5分のミニアニメとなって紹介もされました。


黄表紙とは江戸時代中期以降に流行した、全ページ絵と文で構成された本。縦18㎝×横13㎝くらいの大きさで、一冊は5枚の紙を半分に折って綴じた10ページからなる。通常は2~3冊で一つの作品となります。
画像は恋川春町作・画『金々先生栄花夢』国立国会図書館デジタルコレクション


でも、あらすじだけ見ると、夢の中で大金持ちになって遊びまくったり、モテたくて無茶苦茶したり、なんだかバカバカしい話ばかり。親近感は湧くけど、「え、ただのおふざけじゃん?」なんて侮ってる方にこそ伝えたい、黄表紙のふか~~い魅力を。

ここでは、黄表紙沼にはまったライターである私が、その楽しみ方を、ビジュアル、トレンド、風刺の〈3つのポイント〉に絞って紹介します。読めば、江戸のコミック・黄表紙にあなたもぐぐっとはまってしまうはず!

✅黄表紙について基本知識を知りたい方は下記の記事へ👇




🎍黄表紙とは? べらぼうに楽しい江戸のエンタメ小説

大河ドラマべらぼうでも核となる出版物として登場する黄表紙。
それは、江戸時代のライトノベルや漫画のような気楽な読物です。

江戸時代の初期には上方(京や大阪)が出版の中心でした。それが中期以降になると、江戸にも上方からやってくる「下り本」を扱う「書物問屋」とは別に、江戸オリジナルの書物を扱う「地本問屋」が登場します。

そしてそれまで主に子供や女性向けが多かった絵入り草紙(赤本・青本・黒本)に、安永四(1775)年、大人の男性を意識した一冊が登場しました。

これが恋川春町という、まるで少女漫画家のような名前の作者(でもれっきとした武士)が描いた「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」という作品。

田舎から出て来た主人公が、休憩に立ち寄った粟餅屋でついうたた寝。その夢の中で大金持ちになって遊びまくるというお話です。

これがヒットして、黄表紙というジャンルが流行しました。中国の故事から日本の古典、歌舞伎や当時流行した学問までパロディにするなど、縦横無尽に広がる黄表紙の世界。

その楽しみ方を簡単に紹介すると…?


📚その壱、ビジュアルの遊びを楽しむ

黄表紙の魅力は、なんといっても絵と文が一体となって楽しめる点! ビジュアルのおかげで当時の人も気軽に物語にハマったでしょうし、現代の私たちにも状況がわかりやすいのがありがたいところ。愛嬌たっぷりのキャラなど、読者の心をつかむ仕掛けが満載です。

①着物を見れば誰かがわかる!

特に登場人物がたくさん出てくる作品では、読者に分かりやすく着物の袖や背中などに名前が書いてあります。

昔話の桃太郎の後日譚。鬼ヶ島から連れ帰った白鬼と猿がバチバチの恋のライバルになるというトンデモ話。各人物の着物に名前のマークがある。山・川はそれぞれ山に柴刈りに行ったおじいさん、川に洗濯に行ったおばあさん。
朋誠堂喜三二作・恋川春町画『桃太郎後日噺』/国立国会図書館デジタルコレクション


当時の出版物を擬人化。大人気の青本(黄表紙)に嫉妬した上方下りの本たちが、赤本黒本たちをそそのかして青本の妹・柱隠し(ポスター)を誘拐させるドタバタ劇。各人物の袖や背中に本の本の名前と表紙が模様のように入る。山東京伝作・画『御存商売物』/国書データベース


②ふきだしや場面転換の描き方にも注目!

厳密には現代のふきだし(せりふ部分を囲う)とは用途が違いますが、黄表紙の中にも現実から夢の中へうつるシーンや、場面転換に雲のような模様が取り入れられていて、視覚的効果を発揮。こんな表現が昔からあったんですね~。

田舎から江戸で出世しようと出てきた主人公が、途中の粟餅屋でうたた寝してしまうシーン。主人公の頭のあたりからふきだしのようなマークがでて、夢の中へと物語は移っていきます。
恋川春町作・画『金々先生栄花夢』/国立国会図書館デジタルコレクション


生真面目な若旦那の体内では、堅物の「心」が追い出され、かわりに「気」や「目」「鼻」「口」たちが贅沢な遊びを始めるという物語。右ページのもくもくした線を挟んで前のページからの流れと、クーデター後の新たな左側のシーンを分けて描く。
山東京伝作・画『人間一生胸算用』/国書データベース


③擬人化は当たり前!ユニークなキャラたち

現代でも愛されるゆるキャラのように、当時もいろんなおもしろかわいいキャラクターが描かれています。中には歌舞伎の舞台にピックアップされて「悪玉踊り」という踊りが流行ったキャラクターも!

当時の人気商品だった「鯛の味噌吸」(味噌和え)、「滝水」(銘酒)は地口(ダジャレ)によく使われた。この地口たちが化け物になった作品がこれ。とにかくかわいい。もう江戸のちいかわです。
恋川春町作・画『辞闘戦新根』/国書データベース


現代でも善玉悪玉コレステロールなどと使われる。その悪玉や善玉たちが生まれたのがこの作品。人間の心に入って善い行ないをさせるのが善玉で、悪玉は反対に吉原に連れて行って散財させたりと文字通り悪いことばかりさせる。
山東京伝作・北尾政美(鍬形蕙斎)画『心学早染草』/国書データベース


📚その弐、江戸のトレンドを楽しむ

黄表紙には、当時の流行語やファッション、芝居や歌など、「今これが江戸で流行ってるぜ!イケてるやつはわかるだろ?」と言わんばかりに詰め込まれています。それを読み解くのも楽しい。今だってヒットソングの替え歌や、アニメの名台詞のミームがバズりますよね。まさにそれと同じです。

①流行りのファッションやグルメも登場

当時の流行りや人気店の話も盛り込まれ、江戸の「旬」が楽しめるのも黄表紙の魅力。どんなファッションがイケてるか、どんな食べ物が人気か…。作品を読めばリアルに見えてきますよ。

作者の恋川春町は友人の朋誠堂喜三二とタッグを組んでファッション誌も出している「通」なお人。この作品には「未来にはこんな変なことが流行ってるかも!」という、当時の流行の誇張や反対が描かれていて楽しい。
恋川春町作画『楠無益委記』/国立国会図書館デジタルコレクション


吉原では遊女と客が初めて会うことを「初会」といい、お互いすまして食事には手はつけない。しかし内心はお腹が空いてるから「私はねぎまが食べたいな」「あら、私は竹村(人気菓子店)のあんころもちがいい」なんてこそこそおしゃべりしています。まさに当時の座敷を覗いているような気分に。
山東京伝作・鳥居清長画『九界十年色地獄』/国立国会図書館デジタルコレクション


②店のスタッフ同士しかわからない隠語も!

こんなことまで知ってたらスゴイ!吉原のスタッフ同士にしかわからない隠語(中国語っぽい発音にしているので唐言<からこと>という)も書き込まれていて、当時の読者も「え、そんなのがあったの?」とびっくりしたはず。

客である金々先生の前で自分の情夫(いろ/本命)の話をスタッフと隠語で交わす遊女。金々先生はやがて裏切られていることに気づいて暴れ出します…!
恋川春町作画『金々先生栄花夢』/国立国会図書館デジタルコレクション


③ヒットソングの替え歌で場面が盛り上がる

当時は、豊後節や河東節など浄瑠璃の曲が流行っていました。黄表紙にもよく出てきます。今でいえばみんなが知ってるJ-POP。それを替え歌にして遊んでいるシーンも。

これはおバカな若旦那が芝居の色男に憧れて心中ごっこをしようとしたら、おいはぎにあって身ぐるみはがされてしまったところ。そんな悲しくもおかしいシーンを、びっしり書き込まれた浄瑠璃の替え歌が一層バカバカしく盛り上げるという趣向。
山東京伝作・画『江戸生艶気椛焼』/国立国会図書館デジタルコレクション


📚その参、本質をつく視点を楽しむ

黄表紙の魅力の大きな柱は「うがち」と言われます。うがちとは、社会や人間の本質を鋭く突く視点のこと。まるでSNSの秀逸なポストのように、笑いの中にキレる風刺が隠れています。

①金がありすぎて苦しみまくる男

「うなるほど金を持ってみたい」。そんな庶民の夢を皮肉った作品も。金がありすぎてうんざりした金持ちが、博打、金貸し、投資などあらゆる金を失うことに手を出すもののなぜかますます増えていき、最後は金がうなり声をあげて蔵に飛び込んでくるという、まるで「世にも奇妙な物語」のような内容。タモリさんもびっくり?

クライマックスは蔵の金を捨てようとするが、捨てた金がうなり声をあげて飛び戻ってくる!すごい展開だヨ。
唐来参和作・千代女画『莫切自根金生木』/国立国会図書館デジタルコレクション

②イケてないのに色男になろうとする坊ちゃん

いつの時代も我々に「モテたい」「ちやほやされたい」の承認欲求はつきもの。イケてないのにイケメンぶろうとして、大金をばらまきながら奮闘するお坊ちゃんの姿は、やれやれ馬鹿らしいけれどなぜかちょっと愛嬌もあって親近感がわきます。

ドラマに出てくるイケメンになって、アイドルや港区女子との匂わせでバズってみたいと、現代でも妄想してる人多いのでは?
山東京伝作・画『江戸生艶気椛焼』/国立国会図書館デジタルコレクション


③文武両道の本質を理解せず右往左往する武士たち

現代でも、文脈を読めない、意味を理解してない、なんてうんざりしたポストがSNSで散見されますね。当時の武士にもそんな人がたくさんいたんでしょう。幕府が出したお触れを伝言ゲームのようにはき違えて、無茶苦茶なことばかりする武士の姿や、それを指導する為政者をおちょくりまくったものもあります(寛政の改革で取り締まりを受けてしまいますが…)。

「文武両道に励め」という幕府のお達しを受けて、先生に選出されたのは日本史から登場した源義経たち。武術の鍛錬と言いながら見当違いのことばかりする武士をおちょくって描いています。
恋川春町作・画『鸚鵡返文武二道』/国立国会図書館デジタルコレクション



おわりに(そのほかパロディーや江戸文化も楽しめる!)


以上、私的黄表紙の楽しみ方3つのポイントを紹介しました。

  • その壱、ビジュアルの遊びを楽しむ

  • その弐、江戸のトレンドを楽しむ

  • その参、本質をつく視点を楽しむ

ほかにも、黄表紙の基本はパロディーでもあり、中国や日本の古典、桃太郎やカチカチ山などの昔話、歌舞伎のもじりもわかれば何重にもおもしろい。また、作者についてや当時の江戸文化、遊廓事情などもわかってくると、なお沼にズブズブとはまっていくでしょう。

今回は「黄表紙ってなに?」という初心者の方にもとっつきやすく紹介しましたが、まだまだ作者や各作品の魅力など、話し出せばキリがありません笑

黄表紙は庶民が楽しんだ庶民文化だと言われることもありますが、実際は高等教育を受けている武士の遊びから始まったもの。それだけに、ふざけたように見えて深い教養が下地にあり、噛めば噛むほど味がでます。今でいうと、「文豪たちが知識とテクニックを総動員して思いっきりふざけてみた」というようなイメージかも?

また黄表紙についての話は少しずつ、こちらのnoteにアップしていきたいと思いますので、どうぞお楽しみに。大河ドラマ「べらぼう」の感想・考察も毎週アップしていますよ。マガジンもあるので、ぜひフォローして一緒にお江戸を楽しみましょう♪


🎁おまけ:実際に黄表紙を読みたくなったら?

「いや、黄表紙読んでみたいけどくずし字読めへんし無理やわ」とnoteを閉じようとしたあなた。そんなあなたにぜひ読んでもらいたくて作ったのが「黄表紙のぞき」シリーズ。当時のレイアウトのまま現代語訳しているので、江戸の人々と同じように寝っ転がって気軽に楽しめます。ぜひ一度江戸のエンタメをその目で実際に読んでみてください。

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▶「黄表紙のぞき」シリーズについて詳しくはこちらの記事にも書いています。あわせてどうぞ👇

それではまた次回の記事でお会いしましょう〜🎵

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あらすじ・作家紹介・作品解説など、黄表紙関連まとめ


🌏 For international readers:
This article introduces kibyoshi, a genre of illustrated fiction from Edo-period Japan. Known for their humor, kibyoshi are sometimes called the comics of the Edo era.
If you're curious, feel free to check other pages where I write more about these fascinating books.

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