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食べてみたい江戸の味/香りのよい煎茶をかけた鰻の茶漬け

江戸の本を読んでいると、「これは食べてみたいな~」と思うグルメに出会うことがあります。

今回は、江戸っ子の大好物、鰻。
しかも当時の人の鰻の食べ方は、蒲焼きにしてご飯に乗せるだけではなかったよう。

「筋を長焼きにして、煮端茶(にばちゃ)でさっと茶づりたい」

山東京伝「人間一生胸算用」

「茶づりたい」!!
なんというシズル感あふれる言葉でしょう。
「茶づる」とは、お茶をかけてすする、お茶漬けにして食べることを短縮した言い方。
言葉を省略するのは、何も現代の若者だけではないのです。江戸っ子だってがんがんにやってます。
茶をすする音がいかにもおいしそうに響いてくる。満点!満点のシズル語です。

この言葉が出てくるのは、山東京伝の黄表紙「人間一生胸算用」。
不思議な力で小さくなって、隣に住む生真面目な若旦那の体内へ入っていった作者・京伝。
体内では、堅物の旦那らしく、倹約家の「心」が、すぐに贅沢をしようとそそのかす「気」や「手」「足」「口」「鼻」などを制していたのですが、これでは楽しみがなさすぎると「気」たちがクーデターを起こしてしまうというストーリーです。

山東京伝「人間一生胸算用」より

上記のシーンは、まだクーデターを起こす前。
蒲焼き屋(左端に「大蒲焼」の看板あり)の前を通った一行ですが、「気」たちが「心」にせっかくだから鰻を食べましょうよ、とねだっているところ。
鼻は「この匂いを嗅いで堪えられるものか」といい、「気」は「どれだけ高くたって二朱か三朱(一万円~一万五千円くらい)でしょう、行きましょう行きましょう」という。
そして、「口」が言うのが、冒頭の言葉。

「筋を長焼きにして、煮端茶でさっと茶づりたい」

筋を長焼きにするとは、鰻を割(さ)いて丸のまま大串で焼くこと、そして煮端茶とは味も香りもよい頃合いの煎じ立てのお茶のことだそう(棚橋正博「江戸戯作草紙」より)。

ああ、ごくり、とのどがなってしまいます。
想像するだけでおいしそうな、鰻のお茶づけ。
香りまで嗅いで食べられないなんて耐えられない。
そりゃ、クーデターも起こしたくなるよなあと、いっそ「口」たちに同情したくなるような一場面でした。

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ぜひのぞいていってみてください。

「続 黄表紙のぞき」

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