今日がもっと好きになった——生前葬を選んだ女性が教えてくれた後悔しない生き方
はじめに——あなたは今日、大切な人に「ありがとう」を伝えましたか?

唐突ですが、問いかけをさせてください。
あなたは今日、大切な人に「ありがとう」と言いましたか?
「そんなこと、わざわざ言わなくてもわかってる」
「また今度でいいか」
「もう少し落ち着いたら、ちゃんと伝えよう」
そう思いながら、今日も1日が終わろうとしていませんか?
正直に言うと、僕も長いあいだそうでした。
「ありがとう」は、言えるときに言えばいい。
会いたい人には、いつでも会いに行ける。
好きなことは、余裕ができてからやればいい。
そう信じていたんです。
でも、ある女性の話を知ったとき、胸の奥がチクっとしました。
チクっとしたあとに、ジワっと温かくなる感じがしました。
今日、その話をあなたにもしたいと思います。
「死」の話です。でも暗い話ではありません。むしろ、読み終わったあとに「今日って、なんかいい日だな」と感じてほしいと思って書いています。
これは、死を意識することで「今日」がもっと輝いて見えるようになった話です。
6年間、誰にも言わなかった

その女性は、毎日発信し続けていました。
20年近く、1日も休まず。ブログを書き、本を出し、ビジネスをやり続けた女性起業家です。
赤い髪が象徴的で、自分の生き方に正直な人。見ている人たちは「この人はいつも元気で前向きで、ブレない人だ」と思っていました。
でも。
6年前に、乳がんと診断されていました。
手術はしない。そういう選択をして、誰にも言わずに生き続けてきた。
毎日発信しながら、毎日闘いながら、誰にも言わずに6年間。
そして2026年の1月3日、彼女は初めてそのことを公表しました。
「実は、ずっと闘ってきました」と。
と同時に、もうひとつのことを発表しました。
「6月9日に、生前葬をします」
生前葬とは、本人が生きているうちに、大切な人たちを招いて行うお葬式のことです。
死後に誰かが「故人を送る」ために行う葬儀ではなく、生きている自分が「お世話になったみなさんに感謝を伝える」ために行う、特別な場。
彼女が選んだのは6月9日。「ロックの日」と呼ばれる日でした。
赤髪の彼女らしい、個性的で美しい場にしたい——そういう想いがあったそうです。
身体に制限があり、痛みがある中で、1日ずつカウントダウンしながら、その日に向けて準備を進めていました。
読んでいて、胸がぎゅっとしました。
「6年間、誰にも言えなかった」という重さと、「それでも毎日発信し続けた」という強さと、「最後に感謝を伝えたい」という純粋な気持ちが、一気に押し寄せてきた感じがして。
そして、彼女の生前葬の準備の中で、もうひとつの「奇跡」が起きていたことを知りました。
20年ぶりに、弟から連絡が来た

彼女には、弟がいます。
20年間、ほとんど連絡を取っていなかった実の弟。
家族なのに、顔も知らないくらい疎遠になっていた。そういう関係がある家族は、少なくないかもしれません。
その弟が、姉の生前葬の準備を手伝うために、動き始めました。
役割は「60人以上の知人からビデオメッセージを集めて、編集する」こと。
姉の友人、仕事仲間、読者、いろんな人たちに連絡を取り、「姉への感謝のメッセージを撮ってほしい」とお願いしていく作業です。
その過程で弟は、初めて姉のことを知りました。
「こんなビジネスをやってたんだ」
「こんな生き方をしてたんだ」
「こんなにたくさんの人に、影響を与えてたんだ」
20年間知らなかった姉の「生き様」に、弟は触れていきました。
断絶していた家族の時間が、もう一度動き始めた瞬間。
「死」という現実が、20年間止まっていた時計の針を、また動かした。
このエピソードを知ったとき、涙が出そうになりました。
「疎遠になってしまった大切な人」がいる方は、少なくないと思います。
「いつか連絡しようと思ってる」「でもなんとなく、きっかけがなくて」
そんな関係が、誰にでも1つや2つはあるんじゃないでしょうか。
生前葬の準備という形で、20年の時間が動いた。
これを読んで、「自分の大切な人」の顔を思い浮かべた人も、多いんじゃないかと思います。
「死ぬかもしれない」と思ったとき、人は変わる

ここで少し立ち止まって、考えてほしいことがあります。
なぜ、死を意識することで人は変わるのでしょうか。
この問いには、実はとても深い答えがあります。
優先順位が、ガラッと変わる
「いつか終わる」という期限が見えたとき、人の優先順位は劇的に変わります。
誰かの悪口を言う時間が、もったいなく感じる。
グチを言い続ける会話が、空虚に感じる。
「どうでもいいこと」に使っていた時間が、急に惜しくなる。
代わりに何が大切になるか。
会いたい人に会うこと。
伝えたい言葉を伝えること。
やりたいことを、今やること。
命に期限が見えた瞬間、「本当に大切なこと」と「そうじゃないこと」の境界線が、くっきりと見えてくるんです。
彼女も、その感覚を語っていました。
誰のために、何のために、自分はこの命を燃やし尽くすのか。
そういう「使命」が、死を意識することで浮き彫りになっていく、と。
「当たり前」が、奇跡に見えてくる
もうひとつ、死を意識することで変わることがあります。
「当たり前」が、当たり前じゃなくなる。
今日も身体が動くこと。
呼吸ができること。
食事ができること。
来月の予定を立てられること。
これ全部、実は保証なんてどこにもない「奇跡」なんです。
「3ヶ月後に旅行しよう」と予定を入れる。でもその予定を、当たり前に実行できる保証は、誰にもない。
健康であること、生きていること、そういう「当たり前」は、失われる可能性を秘めた奇跡の連続です。
死を意識することで、その奇跡に気づく。
今日という日の価値が、まったく違って見えてくる。
2,000年以上前から続く「知恵」
実は、「死を意識することが充実した人生につながる」という考え方は、とても古いものです。
「メメント・モリ」という言葉を聞いたことがありますか?
ラテン語で「死を忘れるな」という意味です。
古代ローマの時代、戦争に勝った将軍が凱旋パレードをするとき、馬車の後ろに使用人を乗せていました。その使用人の役割は、一つだけ。
将軍の耳元で、こう囁き続けること。
「あなたも、いつか死ぬ」
なぜそんなことをしたのか。
勝利の興奮で気が大きくなりすぎないように。傲慢にならないように。そして「今この瞬間」に感謝して、大切に生きるように——そういう意味がありました。
古代ギリシャ・ローマの哲学者たちも、同じことを説いています。
セネカという哲学者は言いました。
「死を毎日思え。そうすれば今日という日を無駄にしない」
2,000年以上前から、人は「死を意識することが、生を豊かにする」と知っていました。
心理学の研究でも、「死を意識することで、人は文化的な価値観に沿った行動をとりやすくなり、向社会的な行動(感謝・助けること)が増える傾向がある」という研究が世界30カ国以上、500件以上の論文で報告されています(※ただし再現性に課題もあり、「確実に変わる」とは言い切れません。「変わりやすくなる」という傾向として受け取ってください)。
死を考えることは、暗いことじゃない。
死を意識することで、今日という日の輝きがわかる。それが、2,000年以上続く人間の知恵なんです。
死ぬ直前に、みんな同じことを後悔していた

ここで、一人の女性の記録を紹介したいと思います。
オーストラリア出身のブロニー・ウェアという女性がいます。
彼女は、緩和ケアの介護士として8年以上働きました。人生の最後の数週間〜3ヶ月を過ごす方たちの、そばにいた人です。
看取りを続ける中で、彼女は気づきました。
「死ぬ直前の人たちが後悔することは、ほぼ同じだ」
2009年にブログに書いたその記録は、世界中で読まれました。2012年時点で読者は800万人を超え、書籍化された後は27の言語に翻訳されています。
その記録のタイトルは、「死ぬ瞬間の5つの後悔」。
5つの後悔とは、こうです。
第1位:自分に正直な人生を生きればよかった
これが、最も多かった後悔です。
「他の人が期待している通りの人生を生きてしまった」という後悔。
周りの目を気にして、本当はやりたかったことを諦めた。
「あの人に何を言われるか」「変に思われないか」と気にしながら、自分じゃない誰かとして生きてきた。
そして最後に、「ああ、もっと自分らしく生きればよかった」と気づく。
第2位:働きすぎなければよかった
「仕事ばかりで、家族との時間を大切にできなかった」という後悔。
子どもたちの成長を見逃した。パートナーとの時間を後回しにした。「もう少し落ち着いたら」と言い続けて、気づいたらその時間は消えていた。
第3位:思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
「伝えたかった言葉を、言えないまま終わった」という後悔。
「ありがとう」と言えなかった。
「大切に思っている」と伝えられなかった。
「会いたかった」と言えないうちに、別れてしまった。
第4位:友人と連絡を取り続ければよかった
「忙しさを理由に、大切な友人との関係を手放してしまった」という後悔。
「いつか連絡しよう」「またいつか会おう」と思いながら、気づいたら何年も経っていた。そして気づいたら、連絡できない状況になっていた。
第5位:自分をもっと幸せにしてあげればよかった
「幸せになることを、自分に許してあげられなかった」という後悔。
「自分なんかが幸せになっていいのか」「もっと頑張ってから」「周りの人が先」と思い続けて、自分を後回しにした。
この5つを見て、どう感じましたか?
胸が痛くなった方も多いんじゃないかと思います。
なぜなら、これは「死ぬ直前の人の話」ではなく、今の自分の話でもあるからです。
「ありがとう」はまだ言えてない。
「また今度」と思いながら、会えていない人がいる。
自分らしく生きることを、後回しにしている。
その積み重ねが、5つの後悔になっていくんです。
「まだ先のことだから」——でも、それはいつまで続くのでしょうか。
2018年に行われた別の研究でも、「人生で最も後悔することは、夢を追わなかったことや、自分の可能性を活かせなかったことなど、理想に関連したものが最多だった」という、ブロニー・ウェアと似た結論が出ています。
死を間近にした人たちが同じ後悔をする。これは偶然ではなく、人間に共通した真実なんだと思います。
「死を考えるなんて、怖い」——そう感じる人へ

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「なんか、怖い話だな」
その感覚は、まったく自然です。
「死」という言葉を聞くだけで、なんとなく避けたくなる。「縁起でもない」「もっと明るい話をしてほしい」と感じる気持ち、わかります。
でも、少しだけ聞いてください。
怖いのは、当たり前
死を考えることが怖いのは、あなたが弱いからではありません。
それだけ生きることを大切にしているから。失いたくないものがあるから。死への恐怖は、実は「生きたい」という気持ちの裏返しです。
考えすぎには気をつけて
ひとつ正直に言います。
「死を意識する」ことが、行き過ぎると逆効果になることもあります。
「どうせ死ぬのに何も意味がない」という虚無感に向かってしまう。「今日やることが全部、最後かもしれない」と考えすぎて、疲れ果ててしまう。
それは、違います。
この記事が伝えたいのは、「死が怖い」ことではなく、「今日という日が、どれだけ豊かか」ということに気づいてほしいということです。
死を意識するのは、暗くなるためじゃない。
今日をもっと好きになるため。
態度は選べる
彼女の話に戻りましょう。
乳がんと6年間闘ってきた彼女は、こんなことを言っていました。
苦しみや文句を言って過ごす1日も、笑いながら感謝して過ごす1日も、等しく「残り時間が減っていく1日」です。
どちらを選ぶかは、自分が決めることができる。
これは、きれいごとじゃないと思います。
身体に痛みがあり、制限がある中で、それを言える彼女の言葉だから、重いんです。
今日からできる、たった3つのこと

さて、ここまで読んでくれたあなたに、一つお願いがあります。
この記事を読んだ感動を、今日の行動に変えてほしいんです。
「いい話だったな」で終わらせないでほしい。なぜなら、「また今度」「いつか」は、永遠に来ないかもしれないから。
今日、3つだけやってみてください。
1つ目:感謝を、今日伝える
今日中に、感謝を伝えたい人に一言送ってください。
「いつもありがとう」
「最近どうしてる?」
「お世話になってます」
それだけでいい。
LINEでも、メールでも、電話でも、なんでもいいです。
「そんな突然送ったら変かな」と思うかもしれません。でも、受け取った人は絶対に嬉しいです。「急にどうした?」って返ってきたとしても、それは素敵な会話の始まりです。
「ありがとう」は、伝えられるうちに伝える。
明日もまた会えるとは限らないから。
2つ目:「また今度」を1つだけ「今月」に変える
「また今度会おう」と思っている人が、頭の中にいませんか?
その人と、今月中に会う日程を決めてください。
「いつか」じゃなく、「今月」に。
日程さえ決まれば、あとは実現するだけです。日程を決めるのが一番難しい——でも今日だけ、その一歩を踏み出してみてください。
同じように、「いつかやろう」と思っていることがあれば、今週中に小さく始めてみてください。
完璧な準備が整ってから始めようとすると、永遠に始まりません。ちょっとだけ、今日始める。それだけでいいんです。
3つ目:今日という1日の「態度」を選ぶ
今日1日、意識してみてほしいことがあります。
文句を言いそうになったとき、一瞬だけ立ち止まる。
「今日もこんなことかよ」と思ったとき、「でも今日も生きてる」という事実に気づいてみる。
感謝できることを、1つだけ口にしてみる。
これは、ポジティブ思考を強制することじゃありません。
どんな状況でも、「どう過ごすか」は少しだけ自分で選べる。その選択の積み重ねが、人生の色を変えていく——そういうことです。
今日のチェックリスト
感謝を伝えたい人の名前を、今すぐ1人だけ思い浮かべる
その人に今日中に、一言送ってみる(LINE・電話・メール、何でもOK)
「また今度会おう」と思っている人と、今月中に会う日程を決める
先延ばしにしていたことを1つ、今週中に小さく始める
今日1日、感謝の言葉を1つだけ意識して口にする
全部やらなくてもいいです。1つだけでいい。
今日の自分に「よくできた」と言ってあげられる、1つを選んでみてください。
おわりに——「いつか」はこないかもしれない。でも「今日」は今ここにある。
人生の残り時間は、例外なく減っています。
来年の今日、現在と同じ状況で存在しているかどうか、誰にもわかりません。
病気かもしれない。事故があるかもしれない。人生って、そういうものです。
生前葬を選んだあの女性は、こんな問いを突きつけてくれていると思います。
「今日という1日を、誰と、どこで、どのように生きますか?」
「いつか」は来ないかもしれない。でも「今日」は、今ここにあります。
あなたの「また今度」が、「今日」に変わったとき——きっと何かが、少し変わります。
「ありがとう」を伝えた瞬間。
「会いたかったよ」と言えた瞬間。
「やってみよう」と踏み出した瞬間。
その小さな瞬間の積み重ねが、後悔のない人生をつくっていくんだと、僕は思います。
大切な人を大切にすること。自分の命を、使い切ること。
難しいことじゃない。今日から始められる、小さな選択です。
あなたの「いつか」を、「今日」に変えてみませんか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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