霊能力者チカさんの話・番外編 【おとうちゃんと河童】
〜おとうちゃんと河童の話〜
今日は、チカさんのご主人──
みんなから「おとうちゃん」と呼ばれていた、あの優しい方のお話です。
チカさんは、4人のお子さんを連れて今のご主人と再婚されました。
ご主人にとっては初めての結婚。ですが、再婚後に2人の子どもが生まれてしまったら、先にいた4人が寂しい思いをするのではないか。どんなに気をつけていても、無意識に“贔屓”してしまうかもしれない……。
そう考えて、あえて子どもは作らなかったそうです。
4人の子どもたちを、自分の子どものように愛し、育ててきたおとうちゃん。
みんなからは「おとうちゃん」と呼ばれ、本当の父親のように慕われていました。
子どもだった私から見ても、
おとうちゃんがどれだけチカさんのことを大切に思っているか──
だまっていても、空気から伝わってくるほどのおふたりでした。
おとうちゃんは毎朝市場へ出かけて、食堂で使う食材を仕入れていました。
市場の帽子を被った姿がトレードマーク。
そして、いつも明るく元気いっぱいに声をかけてくれるんです。
「のかぜちゃん、おはよ〜! おばちゃん、部屋にいるよ! 呼んでこようか?」
そんなふうに、ニコニコとした笑顔で。
近所の人たちからも、「食堂のおとうちゃん」と親しまれていました。
ちなみにチカさんは「食堂のおかあちゃん」。
2人そろって地域に愛される存在だったのです。
小学校で瓶や古紙の回収があると、
おとうちゃんは軽トラックを出してくれて、私たちを乗せて回ってくれました。
実家の隣に流れる沢の川を見下ろしながら帰宅したとき──
おとうちゃんが、ふとつぶやいたのです。
「昔は、この辺にもな……河童がいたんだよ」
え?
かっぱ……?
カッパ?!
私はあまりの驚きに、声が出ませんでした。
「うっそだぁ〜!」
そう言いかけたその瞬間、
いつも冗談ばかりのおとうちゃんが、珍しく真剣な表情をしていたのです。
──あ、本当なんだ……。
私の中で、急に現実味が増しました。
おとうちゃんいわく、
河童の身長はだいたい50〜60cmほど。細身で、肌は濃い緑、あるいはカーキ色。
頭の皿ははっきり見えなかったけれど、手と足には水かきがあったそうです。
いたずらはせず、大人しくて、
沢のほとりにいて、そのうち水に飛び込んで姿を消したと。
おとうちゃんが子どもの頃、数回見かけたそうです──
今から約80年も前の話です。

そういえば、東京からこちらに越してきた頃の我が家は、夜になるとホタルが部屋の中に入り込んできて、
幻想的な光を眺めながら眠っていたのを思い出します。
「火垂るの墓」で清太が蚊帳の中にホタルを放ったシーンを観ると、いつもあの頃を思い出します。

隣の森からは、夜な夜なフクロウの「ホーホー……」という声や、四季折々の虫の声。
初めの頃はそれが怖くて、なかなか眠れなかったっけ。
今だったらフクロウの鳴き声はトトロのオカリナかも、なんて想像するだけでワクワクしそう
でも……
フクロウならいいけど、河童はちょっと怖い。
当時の私は、「今はもういなくてよかった」と、少しホッとしたのを覚えています。
帰宅してから、私は両親に「おとうちゃんから河童の話を聞いたよ」と話してみました。
すると2人とも、笑いながらこう言ったのです。
「このあたりなら、いてもおかしくないかもね」
「昔はもっと水がきれいだったからねえ」
思えば、私の両親は、どんな話もすぐに否定せず、いつも
「そうかもね」と、ちゃんと耳を傾けてくれました。
それが、今の私の感受性や好奇心を育ててくれたのかもしれません。
あなたは──
河童って、信じますか?
