《赤いウインナーのすき焼き》※赤いウインナーは懐かしいのだろうか?
その頃の食卓は加工者で賑わっていた。
ちくわ
かまぼこ
魚肉ソーセージ
子どもが好きな三大加工物。
その頃はまだマヨネーズもケチャップもそんなにポピュラーじゃなかった。
じゃあ何をかけてたのかと問われたら
醤油がソース。
悪かったな!!
と誰も何も言ってないのに悪態をついて顔を伏せたくなる。
大体揚げると言う料理自体もそんなにポピュラーじゃなかった。
。。。だんだん淋しくなってきた。。。
揚げ物を食べたことないのか?と聞かれたら、【ある】と答える。
肉屋のコロッケが唯一の揚物だ。父親にはトンカツがつく。
コロッケと千切りキャベツとわかめの味噌汁。黄色いたくあん。
昭和の定番ご家庭料理。
私は食の細い子供だった。
ご飯のお供に「桃屋のイカの塩辛」が必要だった。
今も尚瓶詰めコーナーにイカの塩辛はある。かなり高額だ。当時も高かったんだろうか?
イカの塩辛でご飯は食べる。
もしかしてよく考えたら、子どもの頃、そんなにうまいものなどなかったのかも知れない。
アサリの味噌汁の底に大量の砂が沈んでいた。
アサリの味噌汁と言えば砂の思い出しかない。
赤いウインナーは確かにご馳走だった。
だから特別な味がした。
油にまみれたその料理は、わけもなく外国の味がした。
しかし世間がいうほど赤いウインナーは郷愁を誘うものではない。
私にとってはイカの塩辛の方が懐かしい。
昔は、合成着色料の規制が甘く、真っ赤なものはたくさん存在した。
茹でダコ=真っ赤
酢ダコ=真っ赤
鯨のベーコン=縁が真っ赤
畜肉ハム=縁が真っ赤
赤いウインナー=真っ赤
もはや赤を食べていたと言ってもおかしくない。
ウインナーと言えば赤
ソーセージと言えば魚肉
私の子供時代はまだ魚肉ソーセージが主流だった。
私の母親は肉が食べられない。兄も肉が食べられない。
これは体質というより、母親の好みが単純に兄に移っただけだと思う。母親が嫌いなものを子どもが嫌いになるのは分かる。
しかし母親は、そんな体質が似た兄をとても可愛がっていた。私は肉好きに育った。父親似と言うことにされた。
ある日の食卓はすき焼きだった。
肉が食べられない兄の為に、赤いウインナーが肉のかわりに提供された。
この赤いウインナーは、兄のためだけに用意されたすき焼きの具である。
子どもにとってこんな残酷なことがあるだろうか。
あなたは肉が食べられるからいいじゃない。
お兄ちゃんは肉が食べられないから可哀想でしょ。
だから肉の代わりに赤いウインナー。
あなたはこのウインナーを食べたらダメ。
肉を食べなさい。
私はそれでもかすめ取って兄の赤いウインナーを食べた。
甘辛いすき焼きの味と全く合わない赤いウインナー。
それでも美味しいと思った。
肉より美味しいと思った。
兄の為に
兄の為だけに
兄の為のスペースを作り
赤いウインナーは煮込まれた
肉を思う存分食べられる権利が私にだけ与えられているのではない。
肉は父親の為に用意されたものだ。
私は家で作るすき焼きなんかもう食べたくないと思った。
