植物と馬が導く、不思議な少年のひと夏「ボタニスト 植物を愛する少年」

いくつもの砂丘の稜線が
遥か彼方まで臨まれる大地、
川のせせらぎ、
風にそよぐ樹々の葉、
病を癒す炎。
長篇デビュー作となる監督ジン・イーは
この舞台となっている新疆ウイグル自治区を、
四元素によって
シンプルに把握してみせます。
主人公のアルシン少年は、
植物を愛するカザフ族の少年。
日々更新されるノートには、
押し花のかたちで標本が収集されていたり、
樹木の絵を描かれていたりする。
そのくり返す枝葉の分かれに、アルシンは家系図を連想します。
兄は祖母の息子になるので、叔父と呼ばなければならない・
私たちから見ればそれは独特な、親族構造に見えます。
馬がしゃべる。それが、この映画の世界だ。

しかし何より目をみはらされる、
というか唖然茫然としたのは、
川の浅瀬で蹄を冷やしていた馬が、
突然しゃべり出したとき!
「やあ 少年、さっき君の叔父さんに会ったぞ」
「ゲルで茶を飲んでる」。
円楽(当時)が司会だった頃の「笑点」だったら、
楽太郎はこうツッコむでしょう。
「馬がしゃべるな!」。
その馬はのちほど登場して、またしゃべるのです。
想いを寄せる漢族の少女メイユーが
上海に行くと知って沈んでいる、
アルシン少年の前に。
「俺なら一瞬で上海に行ける」
「信じないなら目を閉じて、3カウントで開けろ。3、2、1!」
忽然と姿を消している。
ヒロインのメイユーを演じる
レン・ズーハンがすばらしい。
物語に流れている時間よりも、撮影の期間が長かった。
だからなのでしょう、
映画の中でみるみる、少女から大人になっていく。
まばゆいほどの愛らしさです。
