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駅前で声を枯らす小学生たち|今、必要な場所へ届ける話

MOON side episode No.25

駅前には、
急ぐ大人と、
立ち止まってほしい小学生たちがいた。


そして、
その夕方いちばん遠くまで届いていたのは、
小さな子どもたちの声だった。

夕方の駅前は、
人の流れが途切れない。

改札へ急ぐ人。
片手でスマートフォンを操作しながら歩く人。
腕時計へ目を落とし、
信号が変わる前に
横断歩道を渡ろうとする人。

バスが停留所へ滑り込む音。
駅前ロータリーを回る車の音。
ホームへ到着した電車のブレーキ音。

冷たい風が、
ビルの隙間を抜けていく。

そんな雑踏の中で、
少しだけ場違いなくらい、
まっすぐな声が響いていた。

「ご協力をお願いします!」

駅前の一角に、
制服姿の子どもたちが並んでいた。

首元には黄色いネッカチーフ。
胸の前には、
両手で抱えた募金箱。
カブスカウト。

ボーイスカウトへ進む前の年代にあたる、
小学生を中心とした子どもたちだった。

一番端に立っていた男の子は、
行き交う大人の顔を見上げてから、
少し緊張したように口を開いた。

「ご協力……お願いします」

最初の声は、
車の音に
かき消されそうなくらい小さかった。

隣の男の子が、
募金箱を抱え直す。
肩を少し上げ、
大きく息を吸う。

「ご協力をお願いします!」

その声に、
もう一人が続く。
さらにその隣の子も続く。

ばらばらだった声が、
少しずつ重なっていった。

最初は控えめだった子どもたちも、
仲間の声を聞くたびに
背筋を伸ばしていく。

募金箱を持つ小さな指に、
少しだけ力が入る。

「ご協力をお願いします!」

やがてその声は、
駅前の雑踏を
押し返すような大きさになっていた。

通り過ぎる大人たちの反応は、
それぞれ違った。

声に気づかず歩いていく人。
一瞬だけ子どもたちへ目を向ける人。
軽く会釈をしながら、
そのまま改札へ急ぐ人。

歩みを緩め、
鞄の中から財布を探す人。

スーツ姿の男性が、
少し離れた場所で足を止めた。

腕時計を見る。
子どもたちを見る。
もう一度時計を見る。

それから息を吐き、微笑む。
財布から硬貨を取り出した。

募金箱の中へ、
硬貨が落ちる。

「チャリン」

駅前の騒がしさの中では、
あまりに小さな音だった。

それでも子どもたちは、
全員で男性の顔を見上げた。

「ありがとうございます!」

そろって頭を下げる。

男性も表情を緩め、
短く会釈を返してから、
再び駅へ向かって歩き出した。

子どもたちは、
世界を救おうとしてるわけではない。
困っている人がいるから、
今の自分たちに
できることをしていただけだった。

その考え方には、
複雑な理屈がなかった。

困っている人がいる。
自分たちにもできることがある。
だから声を出す。

それだけだった。

大人になると、
何かを支える方法を、
少し難しく考えすぎることがある。

現地へ行った方がいいのか。
何を送れば役に立つのか。
自分の行動は本当に正しいのか。

考えることが増えるほど、
最初の一歩が遠くなる。

けれど、
経験も知識もないまま現地へ向かうことが、
必ずしも支援になるとは限らない。

必要なものを知り、
必要な場所へ届けられるプロがいる。

そのための信頼できる機関や、
現地で動く専門家がいる。

遠くにいる人は、
支援をそこへ託すことができる。

そして、
静かに状況を見守ることもできる。

ニュースが大きく報じられている
間だけではなく。

カメラが別の出来事へ向いたあとも。
報道が落ち着いても、
現地の暮らしや
復旧まで終わるわけではない。

家を直す人がいる。
生活を立て直す人がいる。
日常を取り戻すまで、
長い時間を必要とする人がいる。

駅前では、
子どもたちの声がまだ続いていた。

何度も声を出したせいか、
少しかすれ始めている子もいた。

それでも、
電車から新しい人の波が流れてくるたび、
募金箱を抱え直し、
もう一度大きく息を吸う。

「ご協力をお願いします!」

風が吹き、
ネッカチーフの端が小さく揺れた。

子どもたちは、
困っている人がいるから
声を出していた。

大人に必要なのも、
同じくらい
シンプルなことなのかもしれない。

届く場所へ支援を託すこと。

報道が終わったあとも、
忘れずに見守ること。

夕方の駅前には、
急ぎ帰る大人たちの足音と、
立ち止まってほしい子どもたちの声が、
しばらく流れ続けていた。



🌙熊本で被害を受けた方々へ

今、私たちにできることは、
必要な支援が、必要な場所へ届くように託すこと。

日本赤十字社の災害義援金はこちらです。

※寄付をされる際は、公式サイトから、収支報告や活動実績を確認したうえで、ご自身が信頼できる寄付先を選ぶことが大切です。
ここでは、その選択肢のひとつとして日本赤十字社の公式ページを掲載しています。

報道が静かになったあとも、
見守り続けたいと思います。


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