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たっちーさんはコメントの天才だった|ある日、風の向こうへ走っていった人の話

Parodyect MOON No.02

コメントの天才がいた。


noteの記事を読み終わっても、
コメントで
もう一度始まることがある。

記事を書く人は多い。
コメントを書く人も多い。
ただ、
ごく稀に、
コメントそのものが
一つの作品になっている人がいる。



たっちーさんは、そんな人だった。

記事を最後まで読み、
静かにコメント欄を開く。
数行の文章を残し、
また次の記事へ歩いていく。

それだけなのに、
コメント欄の空気が少し変わる。

感想を書くだけでは終わらない。
書かれている言葉の少し奥を見つけ、
「私はこう読みました」
と静かに返す。

そこには否定もなければ、
知識で勝とうとする言葉もない。
作者が気づいていなかった輪郭を、
そっと机の上へ置いて帰るような
コメントだった。

読んだあと、
記事が少しだけ深くなる。
そんな不思議な読者だった。

だからコメント欄を開くたび、
「今回は何を拾ってくれるのだろう。」
そんな小さな楽しみがあった。



人は、
いなくなった時に初めて、
その存在の大きさを知る。

少し前、
「無理をしすぎず、
自分のペースで続けていきましょう。」
そんなやり取りをした。
またそのうち、
いつものように
コメント欄で会うのだろうと思っていた。

ところが、
ある日アカウントは消えていた。

プロフィールも、
記事も、
コメントも。

画面には、
静かな余白だけが残っていた。
理由は分からない。
何か事情が
あったのかもしれない。

身バレ
操作ミス
あるいは、
コメント欄に現れる
妖精だったのかもしれない。

観測できたのは、
「いなくなった」
という事実だけだった。



たっちーさんのnoteは、
施工管理の日々を記録した場所だった。

現場の風景。
人情味あふれる職人たち。
仕事帰りに立ち寄る飲食店。
そして、
スーパーカブで走る山道。

どの記事にも、
経験に裏打ちされた知性と、
温かさが静かに流れていた。

施工管理は、
完成した建物の
引き渡し日を設定する。

だから少しだけ思う。
施工管理なんだから、
最後はちゃんと
お客様に安心と笑顔を
引き渡して帰ってください、と。

解体屋でもないのに、
アカウントまで跡形もなく
解体しなくてもいいでしょう、と。

もちろん、
人にはそれぞれ事情がある。
観測者に分かるのは、
目の前で起きた景色だけだ。



コメントは記事の下に残る。
でも、
本当に残る場所は、
そこではない。
良いコメントは、
人の心の中に残る。

だから、
もしまたどこかで縁があれば。

ゆるキャラでもいい。
名前が変わっていてもいい。
また静かに、
作品を読んでくれたら嬉しい。

コメント欄には、
そんな読者が確かにいた。
そしてその読者は、
記事を書くことも一流だった。

最後に観測した記事は、
たしか
スーパーカブの話だった。

あの人はきっと、
スーパーカブに乗って、
風の向こうへ走っていったのだろう。🌙



🌙初めてMOONへ来られた方へ

▶︎「MOON|違和感の記録」の観測ガイドです。

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