たっちーさんはコメントの天才だった|ある日、風の向こうへ走っていった人の話
Parodyect MOON No.02
コメントの天才がいた。
noteの記事を読み終わっても、
コメントで
もう一度始まることがある。
記事を書く人は多い。
コメントを書く人も多い。
ただ、
ごく稀に、
コメントそのものが
一つの作品になっている人がいる。
◇
たっちーさんは、そんな人だった。
記事を最後まで読み、
静かにコメント欄を開く。
数行の文章を残し、
また次の記事へ歩いていく。
それだけなのに、
コメント欄の空気が少し変わる。
感想を書くだけでは終わらない。
書かれている言葉の少し奥を見つけ、
「私はこう読みました」
と静かに返す。
そこには否定もなければ、
知識で勝とうとする言葉もない。
作者が気づいていなかった輪郭を、
そっと机の上へ置いて帰るような
コメントだった。
読んだあと、
記事が少しだけ深くなる。
そんな不思議な読者だった。
だからコメント欄を開くたび、
「今回は何を拾ってくれるのだろう。」
そんな小さな楽しみがあった。
◇
人は、
いなくなった時に初めて、
その存在の大きさを知る。
少し前、
「無理をしすぎず、
自分のペースで続けていきましょう。」
そんなやり取りをした。
またそのうち、
いつものように
コメント欄で会うのだろうと思っていた。
ところが、
ある日アカウントは消えていた。
プロフィールも、
記事も、
コメントも。
画面には、
静かな余白だけが残っていた。
理由は分からない。
何か事情が
あったのかもしれない。
身バレ
操作ミス
あるいは、
コメント欄に現れる
妖精だったのかもしれない。
観測できたのは、
「いなくなった」
という事実だけだった。
◇
たっちーさんのnoteは、
施工管理の日々を記録した場所だった。
現場の風景。
人情味あふれる職人たち。
仕事帰りに立ち寄る飲食店。
そして、
スーパーカブで走る山道。
どの記事にも、
経験に裏打ちされた知性と、
温かさが静かに流れていた。
施工管理は、
完成した建物の
引き渡し日を設定する。
だから少しだけ思う。
施工管理なんだから、
最後はちゃんと
お客様に安心と笑顔を
引き渡して帰ってください、と。
解体屋でもないのに、
アカウントまで跡形もなく
解体しなくてもいいでしょう、と。
もちろん、
人にはそれぞれ事情がある。
観測者に分かるのは、
目の前で起きた景色だけだ。
◇
コメントは記事の下に残る。
でも、
本当に残る場所は、
そこではない。
良いコメントは、
人の心の中に残る。
だから、
もしまたどこかで縁があれば。
ゆるキャラでもいい。
名前が変わっていてもいい。
また静かに、
作品を読んでくれたら嬉しい。
コメント欄には、
そんな読者が確かにいた。
そしてその読者は、
記事を書くことも一流だった。
最後に観測した記事は、
たしか
スーパーカブの話だった。
あの人はきっと、
スーパーカブに乗って、
風の向こうへ走っていったのだろう。🌙
了
🌙初めてMOONへ来られた方へ
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