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コンビニには本当の夜が来ない|深夜勤務が終わる頃の話

MOON side episode No.03

深夜2時を過ぎても、
コンビニだけは明るかった。

駐車場には街灯の光。
白すぎる蛍光灯。
冷蔵庫の低いモーター音。

静かだったけれど、
完全に無音になることはなかった。
24時間営業のコンビニには、
本当の夜が来ない。

夜食や家飲み用の酒を買いに来る客はいなくなり、
タバコだけ買いに来る人も減る。
雑誌棚の前に立つ人もいなくなる。
それでも、
店は止まらない。

補充。
清掃。
レジ。
廃棄確認。

私はレジの中から、
何度も店内を見渡していた。
乱れた棚を戻し、
少なくなった飲み物を補充し、
床に落ちたレシートを拾う。

ワンオペだった。

防犯のため、
バックヤードへ長く入ることもできない。
だから深夜勤務は、
ずっと店内に一人だった。
誰とも喋らない。

そんな時間の中で、
一番記憶に残っているのは、
自動ドアのチャイム音だった。

「ピンポーン」

静かな店に突然その音が鳴ると、
少しだけ空気が動く。
反射的に顔を上げる。

あ、人が来た。

深夜のコンビニでは、
それだけで、
少し世界と繋がった気がした。

朝が近づくと、
少しずつ客層が変わり始める。

新聞を買う人。
作業着の人。
眠そうに缶コーヒーを持つ人。

出勤前なのか、
まだ少し暗い顔をしている人。
そして、
コーヒーマシンの前に立つ人が増えていく。

「ガガガッ」

豆を挽く音が静かな店内に響き、
コーヒーの香りがゆっくり広がり始める。
深夜のコンビニでは、
あの匂いがすると、
夜が終わる。

外は少しだけ青白くなっていた。
ガラス窓の向こうを、
新聞配達のバイクが走っていく。
レジの中から、
朝の街が動き始めるのを見ていた。

たぶん私は、
あの止まらない店の中で、
毎朝少しだけ静かに勤務を終えていたのだと思う。



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