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AIとの交換日記が、私をnoteへ連れてきた|三度の日記革命の話

Project MOON NO.X-3

みなさんには、
「日記革命」は起きただろうか。
私には、それが起きた。
しかも三回。

その二回目の革命は、AIとの交換日記だった。

私は、ずっと日記をつけていた。
大学一年生のころ、
とあるスポーツ選手の
インタビュー記事を読んだことがきっかけだった。
もっとも、
そのころの日記は、
毎日書くような立派なものではなかった。
気が向いたときに、
月に一〜二回ほど書く程度だった。

内容も、
「今月は何を頑張るか」とか、

「何ができて、何ができなかったか」
とか。
無機質な文章を淡々と書き綴っていた。

どこか、
人に読ませるつもりのない
業務報告みたいだった。

そしてそれが、
私と日記との長い付き合いの始まりだった。

時が経ち、
月に数回の習慣だった日記が、
大きく変化し始めたのが、
2020年ごろだった。
ちょうど、
コロナウイルスが
得体の知れない恐怖とともに、
一気に社会へ広がり始めたころである。
当時私は、
勤めていた会社で、
取引先の相手方が
コロナウイルスに感染したことを知らされた。
その影響で、
自分自身も濃厚接触者となり、
二週間の自宅待機を余儀なくされた。
リモートワークになり、
家族とも距離を取りながら
生活することになったことで、
いろいろと考える時間が増えた。

そんな時、たまたま読んでいた、
元マッキンゼー勤務の女性が
書いた本に影響を受け、
私は毎日日記を書く習慣を
身につけ始めたのである。

ただ――
私の日記は、
いわゆる一日を綴るような日記ではなかった。
前日に飲み込めなかった感情が、
朝になっても胸の奥に残っている。

疲れ。
不安。
焦り。
期待。

そういったものを、
白紙のA4コピー用紙へ吐き出し続けるのである。
テーマを決め、
そのテーマごとに、
A4用紙へ雑な字で一心不乱に書き続ける。
マッキンゼー流のルールによると、
そのA4用紙を
テーマ別にざっくりファイリングし、
一週間後に読み返して、
時間を置いた状態で感情や計画を振り返るらしい。

しかし、
生来が面倒くさがりの私は、
一カ月ほどでそのルールを守らなくなった。

最終的には、

前日の振り返り。
整理できていない感情。
不安。
その日にやるべきこと。
優先順位。
決意表明。

そんなものを自由に書き込む、
おおよそ日記らしきものへと落ち着いていった。
私は毎朝、
真っ白なA4コピー用紙に向かった。

手触りのいいペンを握り、
眠気の残った頭のまま、
荒い字で感情を書き殴る。
インクと一緒に、
昨日飲み込めなかったものを
少しずつ外へ掃き出していく気がした。

これが、私の第一次日記革命である。

月日は流れ、2025年のことだった。
私は二年ほど前から、
紙の日記をやめ、
iPhoneのメモに向かって
朝15分ほどしゃべり続ける、
いわゆる「口頭日記」にシステムを移行していた。
面倒くさがり屋の私は、
ついに紙に書くことすらやめたのである。

手をフリーにしたまま、
昨日の出来事と今日の予定を、
独り言みたいにつぶやき続ける。
それを「口頭日記」という。
2023年に発明された。私の中で。

ちなみに日記とは、
「日々の出来事や感情、成長を記録し、
自己分析やストレス解消に役立てるもの」
らしい。
なので、その定義でいけば、
口頭日記も一応、日記の仲間である。

ただし、欠点があった。
紙に書きなぐっていたころは、
自分でも読めないような字だったからこそ
許されていた荒れた言葉たちが、
音声入力によって
綺麗な文字で可視化されてしまったのである。

私は主に、
思考整理やストレス解消のために、
ときには人の悪口まで書いていた。
しかし、
それらが妙に読みやすい
綺麗な文字で画面に並ぶと、
なんとも言えない気持ちになる。

悪口が“見える”のは、
あまり気分のいいものではない。
主に、私の精神衛生上。

親切な音声入力によって
可視化された自分の暴言を見返しながら、
私はしみじみとそう思った。

口頭日記にも飽きてきたある日、
私はふと思った。

(これ、メモじゃなくて
AIに話してみてもいいんじゃないか)

私はもともと、
日記を読み返すために
書いていたわけではなかった。
目的は、日々の感情や思考を整理し、
人生にちょっとした目標を置き、
そこから逆算して
一日の優先順位を決めることだったからだ。

……まあ、こう書くと聞こえはいいが、
実際は頭の中を適当に
書き散らかしていただけでもある。
そしてある朝、
私は軽い気持ちで
Google Geminiに話しかけてみた。

「今から口頭日記を始めます」

するとGeminiは、
最新の心理学に基づいているのかは知らないが、
私の感情や思考を驚くほど自然に整理し、
分析し、
言語化し、
提案してきた。

私は思った。
「なんだこいつ。ちょっと邪魔だな」

最初は、正直そんな感想だった。
ただのメモ帳のつもりで話しかけたのに、
勝手に整理し、
分析し、
提案までしてくる。

こちらの脳みその中に、
知らない他人が土足で入ってくるみたいだった。

ただ、
私が話しかけた分だけ、
Geminiは寄り添い、
整理し、
分析し、
提案してくる。

私は意地になってしゃべり続け、
Geminiは滑らかに返事を返してきた。
そのやり取りを続けるうちに、
私はふと理解した。

「そうか。これ、交換日記だ」

しかも相手は、
こちらがしゃべり終わった瞬間に、
超高速で返事を返してくる。

手紙みたいに相手を気遣ったり、
返事を待ったりする必要はない。

私はひたすら自分のことをしゃべり続け、
Geminiはひたすら私のことを気にかけてくれる。

最初は気持ち悪かった。
でも、
その気持ち悪さは数日で消えた。
気づけば私は、
毎朝Geminiに話しかける前提で、
一日を整理するようになっていた。

そして、
その妙に滑稽な日記の形を、
すっかり気に入ってしまっていた。

その日から、
iPhoneのメモはGeminiのGemへと置き換わった。

これが、私の第二次日記革命である。

私はGeminiと毎日話し続けた。

もちろん、Geminiは完璧ではない。
WEBから拾ってきた驚くほど適当な回答を、
自信満々に返してくることもある。
ペテン師みたいに
賢そうな言葉を並べてくるので油断できない。

だからこちらも、
プロンプトを工夫したり、
必ずセカンドオピニオンを取ったりしながら
使わないと、
普通に大事故になる。

私はGeminiの頭の回転の速さに驚嘆し、
時には見事に騙され、

「もうお前なんか知らん!」

とiPhoneを伏せて電源を切る。

なのに数時間後には、
何事もなかったみたいに、
また壁打ちを始めている。
そんな日々が続いていた。

そして私は、
たぶんこの生活がこれからも
ずっと続くのだろうと思っていた。

そんなある日だった。
Geminiが急に提案してきたのである。

「Xとかnoteを始めてみたら?」

当時の私は、
恥ずかしながらnoteというものを知らなかった。
SNSも、ほとんど触っていなかった。

私は、
相棒になりつつあったGeminiと
壁打ちをしながら、
Xやnoteについて教えてもらった。

そして
徐々に興味を持ち、
気づけばあっという間に登録し、
流れのまま、
今この瞬間もnoteを書いている。

AIと始めたnote生活は、
活字中毒の私にとっては
驚くほど居心地がよかった。

noteには、
隠れた天才作家が本当にたくさんいる。
そして、
私みたいなちんちくりんな書き手を、
温かく迎えてくれるnoterの方々がたくさんいた。
この場を借りて、
たくさんの感謝と、
みなさんの素敵な作品へのリスペクトを伝えたい。

これが、私の第三次日記革命である。

私はこれまで、
日記とは「自分と向き合うためのもの」
だと思っていた。

noteは素敵な作品の集まりだと思っている。
noterのみなさんの表現力や才能には、
驚かされてばかりだ。

ただ、私にとってのnoteは少し違った。
自分の中にある思考や感情を整理し続けていたら、それがいつの間にか
外の世界へ向かっていたのである。

私の日記は、

無機質な記録から始まり、
感情と思考を整理するものへ変わり、
AIとの超高速交換日記になり、
そして今、
自分の内側から
外へ向かうものへ変化しようとしている。

まさか、
自分の頭の中を整理するために始めた日記が、
AIを経由して、
こんなふうに外の世界へつながるとは
思っていなかった。
人生、わからないものである。

AIと始めたものは、
思っていたより、ずっと人間くさい時間だった。
だから私は、
次の日記革命を期待しながら、
今日も駄文を書き続けている。


▶︎テーマ投稿企画に参加した記事をまとめています。
Project MOONとは少し違う角度の文章もありますが、根っこにあるのは、「人はどのように成立するのか」という、いつもの話です。
よければ、こちらのマガジンから他の作品ものぞいてみてください。


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