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シニアライフを楽しもう!(51)=裁判を傍聴してみよう=

 皆様、こんにちは。
 私は、間もなく70歳になるチ~タラといいます。
 お金に関するアドバイスや提案等を行うファイナンシャル・プランナー(FP)をしています。
 本稿では、60歳以上の方々を「シニア」と呼ばせていただきますが、私は、自分自身がシニアであることもあり、シニア向けのライフプランニングなどを生きがいにしていこうかなと考えています。
 今回は、「裁判を傍聴してみよう」をテーマとし、裁判の公開原則や裁判の傍聴手続などについてお話しします。
 
 世間の耳目を集める裁判があると、裁判所の前に長蛇の列ができることがありますが、皆様、裁判はそもそも公開が原則なのをご存じですか?
 
裁判の公開に関する憲法の規定
 日本国憲法(以下、「憲法」といいます)は、裁判の公開について次のとおり定めています。
〇 37条1項:すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
〇 82条1項:裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ(う)。
〇 82条2項:裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞(おそれ)があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふ(う)ことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐ(い)る事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
 
憲法82条の規定
 まず、憲法82条の「公開」の意味についてご説明します。
 後にご紹介する法廷メモ訴訟において、最高裁判所は、「裁判の対審及び判決が公開で行われるべきことを定める憲法82条1項の規定」の趣旨は、「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとするところにある」ことを明らかにしています(最高裁判所大法廷判決平成元年3月8日民集43巻2号89頁)。
 
 次に、憲法82条2項本文の「公の秩序又は善良の風俗」とは何かについてご説明します。
 「公の秩序」とは、国家社会の秩序や一般的利益を指し、「善良の風俗」とは、社会の一般的道徳観念を指しますが、両者は厳密に区別されず、全体として「社会的な妥当性」を意味するそうです。
 そして、裁判所が裁判の対審(注185)を非公開とするためには、裁判官の全員一致の決定により、裁判を公開することが「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」と判断しなければなりません。
 ただし、①政治犯罪、②出版に関する犯罪、③憲法第3章で保障する国民の権利が問題となる事件の対審は、常に公開しなければなりません。
 ということは、裁判のうち対審に当たらない部分、すなわち判決については、常に公開しなければならないのです(法廷で裁判官が判決文全文を読み上げます)。
(注185)対審とは、訴訟の当事者(原告と被告、検察官と被告人・弁護人)が法廷に出頭し、裁判官の面前でそれぞれの主張を述べ、証拠を提示して審理を進める手続です。民事訴訟では口頭弁論、刑事訴訟では公判期日の手続を指します。
 
裁判を公開する必要性
 裁判を公開することについては、次のような必要性があるとされています。
〇 裁判の公正を確保するため
 国民が裁判を監視し批判することにより、裁判官が恣意(しい)的な(注186)裁判をしたり、権限を濫用することを防ぎます。
(注186)論理的な必然性を欠き、気ままで自分勝手なさまを言います。
〇 訴訟関係者を監視するため
 裁判官だけでなく、検察官、弁護士、訴訟当事者も国民が監視します。また、証人の偽証や鑑定人の不正を防ぐという理由もあります。
〇 国民の権利を保障し、裁判に対する信頼を確保するため
 上記のとおり、刑事裁判については、被告人が公平な公開裁判を受ける権利が憲法で保障されています。
〇 事実を発見するため
 裁判が公開されることには、事件に関する事実を知っている人が証人として出廷する機会を与えるという趣旨も込められているようです。
 
裁判の傍聴の自由
 法廷における傍聴人の行為(報道機関の取材活動を含みます)については、法廷秩序の維持や訴訟当事者等の名誉保護の観点から、一定の制限が許されています。
 すなわち、現行の刑事訴訟規則215条は「公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない」と定めており、また、民事訴訟規則77条にも同旨の規定があります。
 
 ただし、前述の最高裁判所平成元年3月8日判決(法廷メモ訴訟判決)は、法廷内で傍聴人がメモを取る行為を裁判長が禁止したことについて、概略次のように判示し、禁止は不当としました。
〇 憲法82条により、裁判の公開が制度として保障されていることに伴い、各人は、裁判を傍聴することができるが、それは、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものでないし、傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているもので(も)ない。
〇 (もっとも、)傍聴人(が)メモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは、通常あり得ないのであって、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきであ(る)。
 
 ということで、我々は、いつでも裁判を(無料で)傍聴できるのが原則で、訴訟運営を妨げるようなものでない限り、法廷内でメモも取れるということですね~。
 
裁判を傍聴してみよう
 実際に裁判を傍聴してみましょう。
〇 所持品検査(東京地方裁判所の場合)
 傍聴を希望する方は、裁判所の構内に入る際に所持品検査を受けなければなりません。
 東京地方裁判所の所持品検査に関する指示は、次のとおりです。ちなみに、他の裁判所においても同様の指示がされることがあります。
https://www.courts.go.jp/tokyo/about/osirase/kanri/index.html 
・ 東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎においては、来庁者の皆様の安全確保のため、入庁時に金属探知機等を使用した所持品検査を実施しています。
・ 入庁の際には、所持品検査を受けていただく必要がありますので、時間には余裕をもってお越しください。
・ 特に、多くの方々が来庁される時間帯(午前9時30分から午前10時30分まで及び午後零時30分から午後1時30分まで)は入庁に時間を要することが予想されます。
・ 所持品検査に御協力いただけない場合は入庁することはできません。
・ また、危険物等(ナイフ、包丁、カッター、はさみ及びカミソリ等)を所持したままでの入庁も認められません。
・ 危険物等は裁判所にお持ちにならないように御協力ください。
 
〇 傍聴の手順(東京地方裁判所の場合)
https://www.courts.go.jp/tokyo/kengaku/kozin_boutyou/index.html 
・ 少人数又は個人で傍聴される場合には、東京地裁の1階ロビーの守衛ボックスに備えつけてある「開廷表」で、その日に審理される事件の時間や法廷番号等を確認して、法廷にお入りください。
・ 法廷が開かれている時間は、だいたい午前が10時ごろから12時くらいまで、午後が1時過ぎから4時過ぎくらいまでです。
・ 東京地裁では、土・日・休日と、年末年始などの特別な時期を除き、通常は毎日何らかの開廷予定があります。
・ また、一部の著名な事件については、傍聴するために傍聴券が必要な場合がありますので注意してください。どの事件が対象となるか、配布方法等については、「傍聴券交付情報」のページをご覧ください。
・ 傍聴券の交付されない一般的な事件については、傍聴席に空きがあるかぎり、傍聴していただけます(立ち見はできません)。
 
〇 傍聴時の注意事項(東京地方裁判所の場合)
・ 裁判所敷地内(法廷内だけでなく、庁舎内廊下・庁舎外の前庭などを含む)では、写真撮影、録音等はできません(メモは自由です)。
・ 法廷内及び法廷前の廊下では、私語を慎み、静かにしてください。
・ 携帯電話の電源は、法廷に入る前に切ってください。
・ 裁判の審理中に入室・退室をされる場合には、審理の妨げとなることが無いよう、静かにお願いします。
・ その他、各法廷の入り口にある「傍聴についての注意」をご覧ください。
 
 わざわざ「メモは自由です」と明記しているのは、前述の最高裁判所平成元年3月8日判決を踏まえたものなのでしょうね…。
 
編集者による裁判傍聴体験記
 株式会社日本評論社のWeb日本評論編集部の方が、東京地方裁判所で刑事裁判の傍聴をした際の法廷の様子は、次のイラストのとおりだったそうです。
https://www.web-nippyo.jp/15541/ 
 この刑事裁判では裁判員裁判(注187)が行われたため、裁判員も法廷に入りました。記者と一般の傍聴人は、手前の傍聴席に座ったそうです。
 裁判長・陪席裁判官(左右2名)・裁判所書記官・検察官・弁護士・傍聴人の着席が終わると、報道のテレビ撮影が(短時間)行われました。
              刑事裁判の様子

 Web日本評論ホームページ https://www.web-nippyo.jp/15541/ から引用
 その後、被告人が手錠と腰縄をつけられた状態で、2人の刑務官に付き添われて入廷し、裁判長の指示で手錠と腰縄を外されて着席しました。
最後に裁判員が入廷し、全員で起立・礼をしたそうです。
(注187)国民の中から選ばれた裁判員が、裁判官と共に刑事裁判に参加し、被告人の有罪・無罪や刑罰を決める制度です。2009年に始まりました。
 
 東京弁護士会によると、裁判を傍聴した市民からは、「初めての裁判傍聴でしたが、想像していた以上に裁判の傍聴が気軽に出来るシステムだった事に驚きました。」などの声が、寄せられているそうです。
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/kouhou/info/post_23.html 
 でも、裁判傍聴を重ねると、さらに多くの驚きが得られるみたいですよ~。
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034454543 
 
 以上、裁判の公開原則や裁判の傍聴手続などについてお話ししました。
 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ご意見・ご感想がありましたら、コメントを付けていただければありがたいです。
 次回も、皆様から寄せられたご意見や近頃の巷(ちまた)の話題等を踏まえ、シニアライフを楽しむためのヒントなどについてお話しします。

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