お笑いライブの最前が怖い。
最前とは1番前の列の席のことである。
私はこれまでお笑いライブで最前に入ったことがない。最前に入ったことがあるのは音楽ライブのみである。席など存在せず前方の柵に手を乗せながらライブを見る。ファンが数人しかおらず自然と最前になることも多かったが、どちらかと言えば積極的に最前に入っていた。
しかし、お笑いライブの最前はどうも怖い。座りたいと思わない。思えない。
ステージ上から客席に降り注ぐパワーが私には強すぎる。大きな声のツッコミが怖い。大きな動きが怖い。音楽ライブではもっと大きな音を聞き、ダイナミックなパフォーマンスを見ていたはずなのに不思議である。
もしかしたらお笑いはあまりにも人間臭いのかもしれない。そして私が人間を苦手すぎるのかもしれない。
ほとんどの人間は生命力に溢れていて、ふわふわ生きている私には眩しい。裏ではそれぞれ何かを抱え、もがき苦しんでいたとしても、ステージ上からはパキッとした輝きがぶつかってくる。私が1日に浴びていい輝きの量を簡単に超えてくるのだ。
お笑いライブで最前に入れる人を私はすごいと思う。あのエネルギーを浴びて呼吸困難にならないのか。お笑いを楽しめるのか。
私が初めて新宿Fu-というキャパ70席ほどの場所でお笑いを見た時、2列目の端に座った。多分、トップバッターの芸人さんだった。エネルギーが強すぎて心臓がギュッとなった。退席した方がいいかもしれないとすら思った。持病のパニック発作が顔を覗かせた。これが今を生きる人のエネルギーか、私に無いものすぎてしんどい。笑えるまでに少し時間がかかった。
あれ以来、できるだけ後ろの方に座っている。整理番号順で入場するため、チケットの受付開始から時間を開けて申し込んでいる。入場が開始されてしばらくしてから会場に行くこともある。
お笑いライブの空間が怖すぎて毛布に包まり目だけ出したいと思う時もあった。そこまでして見なくていいと言われるかもしれない。でも、私はそこまでして見たいのだ。生でしか、その場でしか感じられないものは山ほどある。
正直、最前だろうが2列目だろうが、端っこだろうが面白いのは変わらない。でも私が面白いと思えるのは、人間の強いエネルギーが少し薄まった後ろの方だ。
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