【韓国生活追想(117)】領空侵犯
昨日、家探しの旅から戻った。飛行機に乗った。旅行が大好きだし、本当に何度乗っても飛行機の移動はいまだにわくわくする。領空侵犯にさえ会わなければ。
飛行機に乗り込み、着席すると、あるタイミングで隣の席とのアームレストの使用権を巡る攻防が繰り広げられる。正直いうと、アームレストは私にとってそんなに必要ではない。というよりアームレストは他人との間の国境であって、本当にアームをレストさせるところだとは思っていない。これは全く私個人の考え方なので、隣の方が同意しなくったって一向にかまわない。つまり、隣の方が私との境のアームレストを使ったってそんなに問題ないと思う。
が、領空侵犯をしてくるとなると話は別だ。
昨日はそれが発生した。夜遅くの便で、飛行機の中は、乗客みんなの眠気が蔓延したような空気だった。お隣の方もどんより疲れている様子で、乗り込むや否や、しっかりとアームレストを陣取ってきた。ここまでは良かった。眠さのせいか、アームレストから肘をはみ出してきて、私の膝上の上空まで及んできた。約5cm~10cm程度の領空侵犯だ。
これは許せない。さりげなく且つ確実に警告を与えなければならない。私は前の座席の後部に差し込まれた冊子を取り出し、膝の上で広げた。はみ出した肘にちゃんと刺さるように。それでも微動だにしないので激しくページをめくり続けた。やっと肘を引っ込めて、アームレスト上に収まるようにしてくれた。
最悪な滑り出しだと思った。
だから隣人がふとした瞬間にアームレストから肘を外したとき、すぐに奪いに行くことにした。そして私がアームレストの使用権を握った。と思った。
いまやアームレストの上には私の肘がのっている。それにも構わずその空いた隙間に、私と肘をくっつけるようにして自分の肘をのせてきた。「韓国人!」と思った。一言も発さないからそれまでは一体全体何人だろうかと思っていたけれど、これはきっと韓国人だ。日本人の私からしたら距離感がバグり散らかしていて、見知らぬ人との接触状態も厭わない。
私もアームレストを譲るわけにはいかない。ただ知らないおじさんと肘をくっつけ続けている嫌悪感ったらない。やっぱりとうとう負けてしまった。
隣人は、その後も私の膝上の上空に侵入してきた。次は頭で侵入してきた。私の膝と接触はしないものの、私のほうに倒れ込むようにしてきた。きっとわざとじゃない。深く眠り過ぎて姿勢のコントロールを失っちゃったんだろう。が、気持ち悪い。私は座り直すようにしてわざとぶつかって起こして、「Don't touch me, please」とお願いした。韓国語でやり合えば負けるに決まっているから、これも戦略だった。
何よりも腹が立つのが、この一連の攻防の間、ただの一度も謝られなかったことだ。毎度しれっとしていた。「韓国人!」と思った。
そんなこんなで仁川空港に到着した。それぞれが機内モードを解除して数時間のオフライン状態をキャッチアップすべく携帯を熱心に眺めていた。ふと隣の人の携帯に目をやると株を見ていて、そこにはハングルが並んでいた。答え合わせができた。1週間ぶりの韓国。
「やっぱりそうよね」と思った。
