心スパ実験室4・外伝|念のため、生きてみた、わたしの物語。
—“専業主婦”から抜け出した日の記憶—
世間がミレニアム2000年に浮かれている頃。
私は、出産も子育てもひと段落し、
なんとなく“専業主婦”におさまりかけていた。
仕事を辞め7年が経とうとしてた頃だった。
それが悪いとも思っていなかったけれど、
どこかで、何かが沈んでいく気配があった。
そんな頃、偶然出会ったのが、
LGBTQの女性たちが集う「レディースバー」だった。
年代も職種もバラバラな女性たちのいろんな人生、
いろんな価値観に触れて——
誰かの生き方を笑わずに、丸ごと認め合うあの空間で、
私は、自分の“輪郭”を少しずつ取り戻し始めていた。
ある日ふと、心の奥から問いが湧いた。
「そうだ……私は看護師だった。」
「なぜ今、私は働いていないんだろ?」
「え、このまま専業主婦として終わっていくの?」
「それって……私がやりたいことだったんだっけ?」
その問いに対して、
自分の心がはっきりと「NO」と言ったのを、私は忘れない。
そこから私は、
週に数回、1日1〜3時間だけのパート勤務を始めた。
ほんの小さな始まりだったけれど、
あの時たしかに、胸の奥に火が灯った。
そして、仕事を再開して1年ほど経った頃、
そのレディースバーで、こんな出来事があった。
誰かがふと、
「なんで生きてるんやろ? なんのために生きるんやろ?」
そんな話を口にした。
私は酔っていたけど、心はやたらに冴えていた。
「何のために生きるかって?……そんなん、“念のため”に決まってるやん!」
「なんか目的や目標がある時は、そんなこと考えへんやんか?!」
「もし、いま“なんのため?”って思ってるんやったら、とりあえず“念のため”でええねん!」
そう言ったら、
店のママや、飲み仲間がドッと笑ってくれた。
でも、その問いを投げかけた本人は、
「念のため?……そんなんで、ええんか……」と、
まだ受け止めきれない顔をしていたのを覚えてる。
あれからもう、25年近くになる。
今でもそのバーに行くと、
ママは言う。
「“何のため? 念のため!”……このネタ、最高やで!」
(いや、ネタではないんやけど笑)
そんな夜が、
私の中に、ひとつの確信をくれ、
そこからしばらくは、自分の人生が少し歩きやすくなった。
けれどその火も、
およそ10年後には、静かに燃え尽きてしまった。
今度は“看護師”として、
私は、燃え尽き症候群にぶつかった。
*
それでも——
私はまた灯火を見つけにいく。
火は一度きりじゃない。
繰り返し消え、そしてまた灯る。
そのたびに人生の問いは深まり、
クライシスは厚みを増し、
「ほんとうに自分で選びたいことは何か?」と
私を試しにくる。
これは、そんな私なりの“灯火の見つけ方”の記録。
ただ「生き残るため」の言い訳に使うために、
心スパ実験室④「夕焼けが怖くなった日」記事を書いたわけじゃない。
灯火を見つけるために必要だった時間を、
ちゃんと見つめ直すための記事として、
あなたの心に届けられていれば幸いである。
火は、必ずしも見えてるとは限らない。
でも、見えないからといって、消えているとも限らない。
ただそれだけのことを、知っているだけで人は案外、歩ける。
#創作大賞2025 #エッセイ部門
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