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第23話|星屑ラジオの、届かなかった声

今日も、おつかれさま。

もう、
届かないって
わかっているのに。


それでも
言いたいことって、
ありませんか。


今さら。
遅すぎる。
意味なんてない。


そう思って、
飲みこんだ言葉。


伝えそびれた
「ありがとう」


言えなかった
「ごめんね」


本当は
気づいてほしかった
「さみしい」


声にできなかった想いは、
どこへ行くんだろう。


消えるのかな。


それとも――

心のどこかで、
ずっと
小さく
鳴り続けるのかな。


そんな夜。


眠れないまま、
窓を少しだけ
開けた。


すると。


ザー……


古いラジオみたいな
ノイズ。


「……え?」


窓の外。


星空の下、
坂の向こう。


小さな 光。


アンテナ。
古い看板。
回る星屑。


「星屑ラジオ」


“届かなかった声、
 お預かりします”



気づけば、
パジャマのまま
外へ。


坂道をのぼる。


ザー……


ちり、ちり……


まるで。


心の奥の
言えなかった声が
電波になるみたい。


扉を開けると。


カラン。


そこには、
無数のレコード。
真空管。
手紙。


そして。


星色のベストを着た
白髪の DJ。


年齢不詳。
静かな声。


「こんばんは」


「今夜は、
どんな“届かなかった声”を?」



女性は、
少し笑って。


「……もう
届かないんです」


DJは、
つまみを
やさしく回しました。


「ええ」


「でも――」


「届かなかったことと、
存在しなかったことは
違います」


その言葉に、
胸が
少しだけ
痛い。


マイクの前。


女性は、
小さく息を吸う。


「……お母さん」


「ちゃんと
ありがとうって
言えてなくて、ごめんね」


ノイズ。


でも、
途中で
止めなくていい。


「ほんとは
もっと
話したかった」


「ほんとは
さみしかった」


涙で
声が揺れる。


それでも。


DJは、
何も遮らない。


やがて。


カチ。


送信ランプ。


夜空へ。



返事は、
ない。


奇跡も、
起きない。


でも。


放送が終わったあと。


心のどこかで、
ずっと
絡まっていたものが。


少しだけ
ほどけた。


「声はね」


DJが
言いました。


「届く場所を
間違えることは
あっても」


「存在そのものが
消えるわけじゃ
ないんです」


もしかしたら。


届かなかったんじゃなく。


違うかたちで、
夜空のどこかに
残っていたのかもしれない。



もし今日、
もう届かない言葉が
あるなら。


大丈夫。


遅すぎても。
返事がなくても。


その想いは、
なかったことには
ならない。


声にできなかった夜も。
伝えそびれた日々も。


ちゃんと
あなたが
生きた証。


だから。
届かなかった声にも、
存在した意味がある。


大丈夫。


星は、
朝になれば
見えなくなるけど。


消えたわけじゃない。


明日が、少しだけやさしくなりますように。


あなたは今日、

“届かなかった声”にも

存在していいって言ってあげられましたか?

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