第3回:DXが難しい本当の理由― 「正解がない」営みを扱えているか
第2回のおさらい
『なぜ優秀な人材が集まってもDXは失敗するのか― 能力ではなく「構造」が止めている』と題して、DXが失敗するのは個人の能力不足ではなく、能力が機能しない構造にあるのでは、と述べました。
DXはなぜこんなにも難しいのか
DXが進まない理由として、よく「人材不足」や「ITスキル不足」が挙げられます。しかし、それは本質ではありません。
DXが本当に難しい理由は、もっとシンプルです。
正解が存在しないからです。
DXは、既に答えが分かっているものを効率よく実行する活動ではありません。前例もなく、将来も読めない中で、仮説を立て、試し、学び続ける営みです。
この前提を誤解したままでは、どれだけ教育をしても、どれだけ制度を整えても、うまく機能しません。
DXは「研究活動」に近い
DXは本質的に、研究に近い活動です。
・何が正しいか分からない
・やってみないと分からない
・失敗の中に学びがある
研究では、最初から正解を求めません。仮説を立て、実験し、結果から修正し、また試します。まさに理系の研究で良く行っている営みです。
しかし多くの組織では、DXに対して「確実な成果」や「短期的なROI」を求めます。
ここに大きな矛盾があります。
不確実な活動に、確実性を求める。
この構造が、DXを難しくしているのです。
不確実性を扱えない組織
DXが難しいのは、技術が難しいからではありません。
不確実性を扱う力が不足しているからです。
・失敗が許容されない
・実験の予算が確保されない
・評価制度が挑戦を後押ししない
・仮説検証のプロセスが設計されていない
この状態では、DXは成立しません。
なぜならDXとは、「未知に挑戦する構造」を作ることだからです。
スキル教育だけでは足りません。
ツール導入だけでも足りません。
必要なのは、不確実性を前提にした意思決定の仕組みです。
教育が機能しない理由
多くのDX研修は、ツールの使い方やデータ分析手法を教えます。それ自体は重要です。
しかし、もし組織が「正解を求める文化」のままであれば、そのスキルは活かされません。
学んだ人材が実験を提案しても、
「確実性はあるのか?」
「失敗したらどうするのか?」
と止められてしまう。
これでは、教育は形骸化します。
DX人材育成とは、本来、
不確実性を扱える思考と構造をつくること
であるはずです。
正解がないことを前提にする
DXが難しい本当の理由は、
「正解がない」という前提を、私たちが本気で受け入れていないことにあります。
正解がない世界では、
仮説 → 実験 → 検証 → 学習
この循環を回すしかありません。
それは地道で、時間がかかり、失敗も伴います。
しかし、それこそがDXの本質です。
DXを成功させるために必要な視点
DXを成功させるために必要なのは、
・優秀な個人
ではなく
・学習できる組織構造
です。
不確実性を排除しようとするのではなく、
不確実性を扱える設計にする。
この視点に立たない限り、
教育も、組織改革も、部分最適に終わります。
DXはIT導入ではありません。
研究に近い、学習の営みです。
この前提に立てているかどうか。
そこが、すべての出発点だと感じています。
第4回に向けて
第3回ではDXが進まない理由として、正解がない、不確実なことへの取り組み方になっていないのでは、ということを整理してきました。
第4回は一歩踏み込んで『解けない問題は分解されていない』という点について掘り下げてみたいと思います。
構造化できない問題は永遠に議論で終わる。DX人材に最初に必要なのは“解決力”ではなく“分解力”である。その思考法を教育にどう組み込むか。
