結晶構造解析ソフトのインストール:EXPO2014
GUIによる操作習熟と自動解析への第一歩
結晶構造解析ソフトウェア「EXPO2014」は、粉末X線回折(PXRD)データからの構造決定を支援する高機能な統合パッケージです。GUIでの操作性と、MPIによる並列計算に対応した柔軟な実行環境が特徴で、教育用途から研究用途まで幅広く用いられています。
本記事では、Windows上のGUI版で操作に習熟しつつ、WSL2(Ubuntu)上に構築したLinux版で自動解析を行うという、実用的なハイブリッド環境の構築方法について解説します。使用するソフトウェアのバージョンは expo2-2.3.8です。
なぜWindowsとWSL2の併用が有効なのか?
Windows版 EXPO: GUIを活かした対話的な操作が可能。構造解析の流れを直感的に学ぶことができる。
WSL2(Ubuntu)版 EXPO: MPIによる並列実行や自動解析スクリプトとの連携が容易。Windows版のSuperflipやEDMAと組み合わせたパイプライン構築に適している。
両者を併用することで、「学習」と「実運用」の両立が可能となります。本稿ではインストールのみを説明し、使用方法や自動化の方法に関しては別途説明します。
Windows版 EXPO2014 のインストール
当研究グループの学生さんは、私と使用するバージョンを合わせるので、研究室Dropboxからダウンロードしてください。
下記URLより、Windows版インストーラ(expo2-x.x.x-win64.exe)をダウンロードします。2025年4月15日時点での最新版は2.3.8です。:
https://www.ba.ic.cnr.it/softwareic/expo/expo2014-download/ダウンロードした .exe ファイルをダブルクリックして、インストールを実行します。下記のようなウィンドウが現れます。数クリックで完了します。
インストール後、デスクトップの EXPO アイコンをダブルクリックすることで起動できます。


例題データを使った練習
インストール後、以下のパスにサンプルファイルが格納されています:
C:\Users\ユーザー名\share\expo\examples
EXPOを起動し、File > Load Examples から例題を読み込んで、構造解の一連のステップを体験できます。以下が公式のチュートリアルサイトです。
※注意:ファイルパスに日本語やスペースが含まれていると、EXPOが正常に動作しないことがあります。ユーザー名も含め、フォルダ名やファイル名には英数字のみを使用してください。
WSL2(Ubuntu)版 EXPO2014のインストール
1. 必要パッケージのインストール
まずは以下の依存パッケージをインストールします。ここでは Ubuntu 22.04 LTS を想定しています。
sudo apt update ; sudo apt upgrade
sudo apt install gfortran qt6-base-dev libcurl4-gnutls-dev libgtk-3-dev libgl1-mesa-dev libopenbabel-dev openmpi-bin
sudo apt install build-essential automake autoconf libopenmpi-dev cmake pkg-configパッケージの説明(ChatGPTによる解説)
gfortran:Fortranプログラムのコンパイラ
libcurl4-gnutls-dev:libcurlのGNUTLS対応開発用ライブラリ(HTTPS通信などに使用)
libgtk-3-dev:GTK+3(GUIツールキット)の開発用ライブラリ
libgl1-mesa-dev:OpenGL描画用の開発用ライブラリ(グラフィックス関連)
libopenbabel-dev:化学構造データ変換ライブラリの開発用パッケージ(Open Babel)
openmpi-bin:MPIプログラム実行用のOpenMPIバイナリ(mpirun など)
build-essential:C/C++開発に必要な基本的なビルドツール(gcc, makeなどを含む)
automake:GNUビルドシステム用のMakefile自動生成ツール
autoconf:configureスクリプト生成ツール(ソースの構成チェック)
libopenmpi-dev:MPIプログラム開発用のOpenMPIライブラリ(ヘッダ・リンク用)
2. ソースコードの展開と移動
EXPO2014のソースコード(expo2-2.3.8-Source.tar.gz)を取得し、展開します:
tar xvzf expo2-2.3.8-Source.tar.gz
cd expo2-2.3.8-Source3. CMakeによるビルドとインストール
cmake -B build -S . -DCMAKE_Fortran_COMPILER=mpifort
cmake --build build -j$(nproc)
sudo cmake --install build引数 `-j$(nproc)`で、システムの全コアを利用してビルドすることを指示しています。



4. EXPO2014 の起動確認
mpirun -np 4 expo_ompi
または
mpirun -np 4 expo # インストールログを確認してください並列数(-np)は適宜変更してください。データなどを何も与えずに起動すると、以下のような表示が出て一瞬で終わります。これで起動確認まで終わりです。
expo2.3 will go on without graphics.
Results will be written in the file
struct
At 12:31:15 expo2.3 ends ok
Thanks for using expo2.3
Bye
まとめ
EXPO2014はGUIとMPI対応の両面から強力な解析支援を提供します。
Windows版は学習用に適しており、WSL2上のLinux版は自動解析や他ツールとの連携に最適です。
ファイルパスに日本語やスペースが含まれると動作不良の原因となるため、英数字のみのフォルダ構成を心がけてください。
今後、SuperflipやEDMAを含むパイプラインの自動化手法についても紹介していく予定です。
