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風まかせ文芸部│優しい手紙

あなたから手紙が届きました。
私と、あなたの名前だけが書かれた真っ白なハガキ。
目を凝らしても、光に透かしたりしてみても、何も浮かび上がってきません。
それでも何かがあるような気がして、机に置いてあります。

そういえばあなたは理系オタクでしたね。
もしかしたらと思って、火で炙ったりもしました。
あるいはって思って、UVライトで照らしたりもしました。
それでもハガキは少し色を変えたぐらいで、あなたの言葉は浮かび上がりません。

困りました。
とても、困りました。
でも、答えはないのです。
聞こうにも、あなたにはもう聞けません。
消印は随分懐かしいところからのようですが、今更になってなぜ届いたんでしょう。
もう、あれからずいぶん経ちました。

表をよく見返しました。
あなたの綺麗な字。
優しく丁寧な、あなたの性格そのもの。
ああ、優しかった。
丁寧だった、ですね。
ようやくすっかり忘れられそうだったのに、なんて恨み言が思わずこぼれました。
まだまだですね。

裏もよく見ました。
何もない白紙があります。
それでもじっと見ました。
しばらく見ていると、何かが浮かんできました。
ゆらゆらとしています。
きらきらともしています。
白い雪のようにも見えます。

目を奪われていたら、ふと、思い出しました。
すっかりと忘れていたのに思い出してしまいました。
クリスマスを一緒に過ごしましたね。
何も無い部屋に不釣り合いなツリーが光ってて、思わず笑っちゃいましたね。
ツリーをライトアップして、ケーキと少しのワインを二人で食べましたね。
美味しかった、ような気がします。
味のことまでは、さすがに思い出せません。
ただその光景だけは、今はっきりと思い出しました。

あぁ、また思い出してしまいました。
鳥取砂丘にも行きましたね。
旅行は砂漠に行くって言ってたから、海外かしらと思っていたら、鳥取に連れてこられました。
でも、砂丘は思った以上に大きくて、とても白くて、楽しかったです。
……カニも美味しかったですよ?
これは忘れてません。
最初で、最後の旅行でしたから。

少しだけ、懐かしく思ってしまいました。
あぁ、大切な手紙に涙をこぼしてしまいました。
涙もろいって、映画を観るたびに言われましたね。
もう枯れたと思っていましたが、あなたのせいですよ。
もう、早く拭かないといけませんね。
たぶん、次はないと思いますから。

おや。
おやおや。
気のせいではなく、本当に何かが浮かんできました。
もしかして、涙に反応するやつですか。
あなたらしいですね。
なんて書いてあるのかは、もう少し取っておきますね。
あなたのこと、思い出せて嬉しかった。
暖かくなりました。

そちらはどうですか?
元気にやっていますか?
手紙を返したくても、私には無理なようです。
……でも、いつかまた会って──楽しかったこと、嬉しかったこと、いっぱい話しましょうね。

ゆっくりでいいですからね。
待っています。

────
机には手紙が、残されている。
真っ白な手紙。

彼はその手紙を拾い上げた。

#風まかせ文芸部
#白紙

後記)
白紙を浮かべたら、つらつらと言葉が出てきました。
想いが届くような話にしようかと思って、最後に少しひっくり返したいなとも思って。
たまには、こういう書き方も面白いですね。

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