(お題ss三題噺)うわさばなし
校舎の入り口に立つ男を見て、女ふたりはヒソヒソと、なにやら話をしている。
「彼さ、女の子をとっかえひっかえしてるじゃん」
「えっ、そうなの?嫌だ〜、知らなかった…」
「まあ…見た目があんなんだから、さ。噂立っても、関係ないみたい。でさ、付き合うと『儀式』があるんだって」
「なに、なに?それは気になる」
「私の友達も何人か…それ、されてて。同じこと言ってるから、間違いないと思う」
「きゃ〜、気になる。あ、でも、それ昼間から大丈夫な話?意外と私、清楚で通ってんのよ」
「その時点で怪しい噂ね。ま、さておいて、聞きたい?」
「うん。実は彼のこと、ちょっと気になってるし」
太陽が雲に隠れて、一瞬暗くなる。
すっかり緑に染まる桜の木が、風に揺られ、ざわざわと鳴った。
まるで、聞いてはならぬ話が漏れないように。
風にすら、溶け込まないように。
━━曰く、ね。
彼さ、アイロンをかけるの大好きなんだって…。
いっつもピシッとしてる服は、自分でやってるの。
でもね、じっとしてられないから、動きながらしたがるの。
でも、アイロン台って動かないじゃない…。
だから彼女に、動かしてもらうの。
まるで、歩くアイロン台のように…。
━━あとね、もう一つあるのよ。
朝は彼、必ず目玉焼き、なんだって。
でも、自分では焼かないの。
焼かせるのよ…。
でね、目玉焼きって好み、あるじゃない。
半熟だったり、固めだったり、色々好みが。
みんな彼のこと好きだし、好きになってもらいたいから…聞くのよ、震える声で。
『焼き加減はどうする?』って、精一杯強がって。
そしたら、こう、答えるんだって。
━━『目玉焼きの片思い』ぐらいって。
「で、どう?ここまで聞いて。印象変わった?」
「…いや、そりゃあさ。気持ちが変わらない人のほうが少ないんじゃない?ちょっと私には、無理かも…」
「まあ、そうよね〜。いくらモテ男と付き合いたくても、なんか怖いよね。…あ、電話だ。じゃ、またね。連絡するね」
ふたりの女はそこで別れた。
残された女はスマホを取り出し、鳴り続ける電話に出る。
「…もしもし。うん、予想通り。彼女はダメ。そう。そうね。…てかさ、そろそろ、これやめない?毎回大変なんだけど。━━ううん、違うよ。好きだよ。好きだから、なのよ。毎回、月曜に、粉かけてくる子を追い払うなんて…。なんか、月曜の秘密会議みたいなの、しなくても。私がいればいいじゃない。…私は、なんでもするよ。焼けと言われればなんでも焼くし、焼けろって言われたって━━。喜んで焼くわ。…誰だって」
女は、視線の先に男を見る。
電話を耳に当て、意味ありげな表情を浮かべる男。
女は、うっとりとした視線を向けている。
男は唇で、言葉をつくる
「今日は、生焼け」
サイコホラー系ショートホラーになりました。
一番書いてて楽しい、が、疲れる。脳が。
お題、ありがとうございます!
