青ブラ文学部 夜の独り言
「闇があるから光がある、ねぇ」
男はタバコに火を点ける。
誰にも向いていない言葉は、紫煙のくゆりと共に冬の闇へと流れていった。
ひと息、またひと息と深く。
男は味わうようにタバコを吹かしている。
地べたに座り込み、窓の隙間から覗く月を眺めながら。
赤く光るタバコは短くなっていく。
やがて指の先までたどり着いて、ゆっくりと地面へと落ちた。
男は静かに笑った。
堪えきれない吐息に混じって、煙もかすかに漏れる。
もう吐くものはなくなった。
男は最後に右手のひらを見つめる。
その手は濡れていた。
男は吐き捨てるように小さく何かを呟いた。
膝に手をかけて、震えている体を起こす。
「逆があったって、誰も笑わないよな……」
震える手は、いつもの癖で胸のポケットをまさぐる。
奥底で、いつかのレシートが皺くちゃになっていた。
広げると、珈琲の匂いが残っている。
左手で月に透かすと、あいつの影が重なった。
拳が固まる。
丸まって皺くちゃになったレシートを地面に投げ捨てた。
視線の先に白い雪がちらついた。
レシートを踏みつけてから、足を前へ向ける。
カツン、カツン──
男の背中は遠くなっていく。
やがて煙と雪に紛れて、見えなくなった。
暗闇に紛れた足跡。
街灯が今更灯る。
赤い溝を優しく照らした。
どこまでも続く足跡も、やがて白く染まっていった。
後記)
久しぶりにタイミングがあって、すらすらと。
お題が文体にぴったり!
