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(お題ss)そんな世界線

 あざとい、ならぬ"あざtoy"が、若者たちに流行っている。
アリカは耳元のイヤリングに触れ、電源をオンにした。
『ゆっくりと意味ありげに歩いて、三歩手前で止まる』
イヤリングからは、アリカにしか聞こえない指示が流れた。

今は2200年──街には老人が溢れ、若者は希少種になった。
そんな若者たちは荒む一方だった。
政府は犯罪抑制の切り札として、新教育要綱【没個性主義】を打ち出した。
すべてが"普通"になる教育。
異常を異常とすら思わない世代が出来上がった。

 そんな世の中を気に食わない大人と若者が創り出した、まさに新文化の結晶のおもちゃ。
これを使うと、視線のくべ方から、指先の震え方まで、そのシチュエーションに合わせた最適解をAIが教えてくれる。
リアルタイムで通知された行動に従うことで、誰でも"あざとさ"のプロになることが出来る。
 没個性の価値観にはない"あざとさ"は、新世代没個性集団。
ありとあらゆる枠外のことはすべて無関心。
またの名をB世代とも呼ばれ始めていた。

 当然、男性向けのアイテムも後追いで開発された。
──"たくまsee"だ。
 これは逞しさを演出するAIアシスト機能がついていて、あざtoyとほぼ同じミーニングだ。
日頃のトレーニングのもちろん、生活の中でも"理想の筋刺激ポーズ"を教えてくれる。
まさに、男の中の男を作り上げるアイテムだ。

 世の中は次の段階に進もうとしている、ちょうど谷間の世代。
それでも、青い春は今日も進んでいく。

 アリカもユートも没個性主義に辟易し、アングラで見つけた新文化の結晶に惹かれ、すぐに購入を決意した。
ふたりはクラスメイト。

 「ね…ユート。最近さ、勉強頑張ってるよね」
何気ない会話の中に、上目遣い+髪をかき上げる仕草。
没個性の中では異質だが、セクシャリティは確かに刺激的。
 「おお、アリカ。そうなんだよ、最近勉強の仕方を変えてよ。腕立て伏せしながらノートを取ったら、乳酸溜まるだろ?プロテイン飲んだら左脳も刺激されて、なんでも覚えられるんだよ」
勉強の話のはずが、ユートは腕まくりをして力を込めている。
これまた没個性にはないオリジナリティは、見る人が見たら魅力的。

 しかし、アリカのイヤリング型AIは、ブルッと震えて再起動。
いつもの声は届かず、あざとくなれない。
ユートの時計型AIも、いつの間にか筋刺激を止めた──かと思えば、いきなり強刺激になる。
ユートは小さく悲鳴を上げた。
「……マッスル──」
 機械がバグったようだが、周りはシラッとした目をくべている。
教育ルール、怪しい奴には近づくな。

 ふたりは確かに惹かれている。
それは間違いない。
けれど会話だけでなく、なにもかも噛み合わない。
もっと知りたい、分かりあいたいのに…その想いは機械には伝わらない。
どこまでも平行線のまま。

 何故なら──
あざtoyは、使う人に興味がない人にアプローチをすることが得意。
一方、たくまseeは、使う人に魅力を感じない人にアピールすることが得意。
つまり両想いなのに、片想い。
どこまでいっても、どこまでいっても…。

 アリカとユートは同時に呟いた。
「「これなら、没個性の方がマシだったかな」」

 相性は良いのに、結ばれない。
それも教育のたまもの。
教育ルール、すべての恋愛は政府主催の見合いで決まる。
 ふたりの相手は既に決まっている。
それはのちのちの見合いの場で知ることになるが、黒歴史は消えない。

そんな出会いの思い出もあるそうな。
アリカとユートは、間に座る子どもに語りかける。
とっくに廃れた没個性教育のことや、青春のことを。

こっちは没作。なにせ片想いにならなかった。
ま、そういうこともあるでしょう。
記事引用だけさせてください。

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