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(さかさま図書館)星と空のあいだ

そこは地球の半分くらい上。
宇宙とも違って、空でもない。
月と地球の真ん中で、ふわふわと漂っている夢の雲たち。

雲の中には、隠れるように大きな大きなお城が建っていた。
もしかしたら、浮かんでいるのかもしれない。
まるで、さかさま。

誰が住んでいるのかは分からないけれど、なにかがいるのは感じる。
ちょっぴりだけ怖いけれど、すぐに慣れてしまう。
それでも、優しくて居心地いいのに、なぜかここにい続けたらいけない気がする。
そんな不思議な場所。

時折、地球からふわふわと浮かび上がってくるものがいる。
どうしてここに来たのか分からないけれど、そこでしばらくのんびりと過ごしていく。
だけど、たまに寂しくなって空に向かって、大切な名前を呼んでみたりする。
誰からも返事はないけれど、窓の外に見える古い街灯がチカチカと点滅していた。
まるで聞こえているよって、言っているように。

その光を見ていると、少しからだが軽くなった気がする。
そうして少しずつ忘れていく。
大切なものを、少しずつ。
忘れものは雲に預けられて、これ以上城が浮かんでいかないように、大切に保管されている。
いつか返せる時がくるまで。
また、帰っていけるように。

月から光がゆっくりと伸びてくる。
城の麓まで辿り着くと、ベンチの前で止まった。
それは星のバスだった。
月と地球を流れ星の線路で繋いで、夜のあいだだけ、走っている。
五日に一度だけ、雲のお城の前にも止まる。
いつもは誰も降りない、寂しいバス停。
朝の終点を迎えると消えてしまうベンチの前に、一匹の小さな黒ウサギが立っていた。

「……モプ」
そのウサギは小さく呟くと、雲に向かって走り出した。
全速力で、黒い弾丸のように駆けてゆく。

そうして白い雲の中で、とびきり大きな雲の前まで辿り着く。
黒ウサギは小さな背中を一生懸命伸ばして、手に持つアクセサリーをかざした。
月明かりに反射して、キラリと光る。

「預けたの、返して」
黒ウサギはそれだけ言うと、目をつむった。
アクセサリーは街灯と同じようにチカチカと点滅を始める。

まるで、失ってしまったものを取り戻すように──。


後記)
びっくりしました。書いていた文章と、お題がこんなに近いなんて。
すてきなお題をありがとうございました!
さかさま図書館も、もう少ししたら言えることも増えそうです。

#創作 #短編小説 #ファンタジー #幻想的 #寓話 #喪失と再生 #さかさま図書館

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