第6話「恋に気づいた夜」
翌朝。
○○が登校すると、すでに藤吉の姿があった。
○○『おはよう。』
藤吉「おはよう…」
○○『あ、そうだ。きのう多目的室にこれ忘れて帰ったでしょ。』
藤吉「??」
○○は例の小説をスクールバッグから取り出した。
藤吉「忘れて帰ってたんだ。家に着いてどこやったんだろうって思ってた。」
○○『多目的室の机の上に置いてあった。で、松田に聞いたら藤吉がこれ読んでるの見たって言うから。』
そう言いながら藤吉に小説を渡す。
藤吉「ありがと。」
○○『どういたしまして。』
放課後。この日も多目的室に実行委員が集まっていた。何組かの集まりに分かれて談笑していたが藤吉はどこに加わる訳でもなく○○から返された小説を読んでいた。が…
藤吉「(…なんで思い出すんだろう)」
彼女が思い出すのは○○の資料探しを手伝っていた日のことだった。
―――
○○『危ない!』
藤吉「きゃあ!」
○○『どわっ!!』
“ドターン!!”
―――
この時、○○が下敷きになったおかげで藤吉はケガをせずに済んだ。しかしそれ以来、ことある毎にこの一件を思い出してはなんとも言えない感情にモヤっとすることがある。
○○『悪い!遅くなった!!』
田村「遅いぞー。」
中嶋「はやく練習始めましょう!!」
○○『準備するからちょっと待って…』
いそいそと準備をする○○。そこへ…
山﨑「私も手伝うよ。」
○○『ありがとう、助かる。』
森田「あの2人、小学校から一緒なんだっけ?」
大園「らしいね。」
田村「相良くんは前に腐れ縁って言ってたけど…」
松田「天ちゃんはそうは思ってなさげだよね。」
○○『なんか言った??』
武元「何でもないよ?」
藤吉「……」
その日の練習終わり、○○は山﨑と2人で後片付けをしていた。
○○『悪いな、準備も後片付けも手伝わせちゃって。』
山﨑「いいのいいの、私がやりたくてやってんだから。」
○○『そっか。それにしても、山﨑とも長い付き合いになるよな…』
山﨑「どうしたの急にw」
○○『ふと気がついたらオレの行く先々に山﨑がいるんだもの。最初のうちはいちいち驚いてたけどもう慣れたわ。』
山﨑「まあ、腐れ縁ですから?w」
○○『www』
山﨑「それはそうと、今度のライブ…絶対成功させようね。」
○○『当たり前でしょ、そのためにオレたちはこうやって準備してんだから。』
山﨑「それもそっかw」
外で盗み聞きしている人物がいるとも知らず、談笑しながら後片付けを進める2人。
藤吉「……」
―――
その日の夜、藤吉は珍しく自分から大沼に連絡を取った。
大沼「珍しいね、夏鈴から連絡してくるの。」
藤吉「別にいいじゃん。」
大沼「それで、連絡してくるってことは何か相談事?」
藤吉「まあ、そんなところかな。」
大沼「そっか。で、相談事って何?」
藤吉「実は…カクカクシカジカシカクイム-ヴ……」
大沼「へぇ〜…夏鈴にも春が来たってわけか。」
藤吉「別にそんなんじゃ…」
大沼「本当にそう??」
藤吉「……わかんない。」
大沼「わかんない?どういうこと??」
藤吉「相良くんが他の子と話してるの見るとモヤッとはするんだけど……それが何なのかが分からない。」
大沼「なるほど…じゃあさ、私がいくつか質問するからそれに答えてみて。」
藤吉「……わかった。」
大沼「じゃあ1問目。気がついたら相良くんのことを考えてる時がある。」
藤吉「……うん。」
大沼「あるんだ。」
藤吉「ふとした時に“今何してんだろう。”とか考えたりはするかな。」
大沼「あるってことで、2つ目。彼とほかの女の子……例えば実行委員以外の女の子と話してるのを見たとしてどう思う?」
藤吉「……あの女誰?ってなる。」
大沼「なるほど……じゃあ3つ目、もし仮に彼の隣にいるのが自分だったら?」
藤吉「……嬉しいかも。」
大沼「それもう恋じゃん。」
藤吉「そうかな…」
大沼「ここまで証拠揃っててまだ煮え切らない人初めて見たよ。」
藤吉「でもさ、それだけじゃまだ分からなくない?」
大沼「まだなんか言う!?」
藤吉「それだけじゃ言い切れなくない?」
大沼「言い切れない…とは?」
藤吉「私はそうかもしれないけど、向こうはどう思ってんだろう…」
藤吉の珍しく煮え切らない態度にしびれを切らした大沼、次の瞬間…
大沼「恋はどちらかがそう思った時点で恋なの!」
藤吉「そう…なのかな。」
大沼「そう。」
そのあともやりとりをして通話を切った藤吉。
藤吉「恋…か。」
彼女の中で、なにか新たな気持ちが芽生え始めていた。
To be Continued…
