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日本で預金封鎖が起きたら、海外資産や金は本当に役に立つのか

米国上場の金ETFであるGLDMについて調べていました。

最初の疑問は、単純なものでした。

「GLDMを買うことは、現物の金を持つことと同じなのか」

GLDMは、費用控除前の金現物価格への連動を目指すETFです。金先物を売買する商品ではなく、金地金を裏付けとしています。

経費率が低く、証券口座から簡単に売買できる。現物金のように自分で保管する必要もなく、盗難や紛失も心配しなくてよい。

金価格へ投資したいだけなら、かなり効率のよい商品です。運用会社も、GLDMについて、現物金の購入・保管・保険にかかる費用と比べ、低コストで金へ投資する手段として説明しています。

ところが、ここで別の疑問が出てきました。

「金融システムそのものが止まったら、ETFは売れないのではないか」

そこから疑問が次々に広がりました。

それなら、現物金を持つ方がよいのか。

金地金より、小型の金貨の方が使いやすいのか。

銀行の貸金庫へ入れたら、銀行が休業しているときに取り出せないのではないか。

海外の銀行や証券会社へ資産を置けば、日本の規制から逃れられるのか。

しかし、日本へ戻す段階で規制を受けるなら、日本に住み続ける限り完全には逃れられないのではないか。

一つの金ETFを調べていただけなのに、いつの間にか預金封鎖や資本規制への備えを考えることになりました。

GLDMは金を持つことにかなり近い

金価格への投資という意味では、GLDMは現物金を持つことにかなり近い商品です。

金価格が上がれば、基本的にはGLDMの価格も上がります。金価格が下がれば、GLDMも下がります。

現物金と違い、買取店へ持ち込む必要はありません。証券口座から市場で売却できます。

保管場所や金庫も不要です。真贋確認や盗難対策も、自分でする必要はありません。

純粋に投資商品として考えるなら、現物金より金ETFの方が扱いやすいでしょう。

ただし、GLDMは「金融システムの外に置かれた金」ではありません。

売却するには、証券会社、証券取引所、決済機関、銀行口座などが動いている必要があります。

証券市場が休止していたり、証券会社からの出金が制限されていたりすれば、GLDMに資産価値が残っていても、すぐには生活費へ換えられません。

つまり、金価格へ投資する目的なら、GLDMは現物金にかなり近い。

しかし、金融システムが止まっている間も自分で直接管理できる資産という意味では、現物金とは異なります。

金融システムの外に置くなら現物金になる

金融機関や証券会社を介さずに金を持ちたいなら、候補になるのは金地金や地金型金貨です。

現物金は、証券口座に表示される数字ではありません。自分の手元に金そのものがあります。

ただし、現物金を非常時の通貨と考えるのは、少し違うように思います。

金融危機が起きたからといって、金貨をスーパーへ持っていき、そのまま支払いに使えるとは限りません。

店側は金の価値や真贋をその場で判断できませんし、お釣りも出せません。

現物金は、危機の最中の日常的な決済手段というより、危機の前から危機の後へ価値を持ち越すための資産です。

自国通貨の価値が大きく下落しても、社会や市場が正常化した後に売却し、別の通貨や生活資金へ換えられる可能性があります。

「今すぐ使うためのお金」ではなく、「混乱が収まるまで価値を運ぶ資産」と考えた方が実態に近そうです。

現物金は想像していたよりコストが高い

現物金について調べると、購入価格と売却価格には意外に大きな差があります。

金地金や金貨を買うときは、金そのものの価格に、加工費、製造費、流通費などが上乗せされます。

売却時には、購入価格より低い買取価格が提示されます。

この売買価格の差が、現物金を保有する大きなコストになります。

特に、小型の金地金や金貨ほど割高になりやすい傾向があります。少量であっても、製造、梱包、検査、流通には一定の費用がかかるからです。

さらに、保管の問題もあります。

自宅に置けば、盗難、紛失、火災のリスクがあります。金庫を購入したり、防犯対策を強化したりすれば、その費用も必要です。

投資効率だけを考えるなら、証券口座から売買できる金ETFの方が有利です。

現物金は、効率を求めて持つというより、金融システムの外に資産を置くために、あえてコストを負担するものなのでしょう。

金地金より金貨の方が非常時には使いやすいのか

現物金を持つなら、金地金と金貨のどちらがよいのかという問題もあります。

一般的には、金地金は大きいほど重量当たりの売買コストを抑えやすくなります。

その代わり、大型の地金は一つ当たりの金額が大きくなります。

生活費として一部だけ換金したくても、必要な分だけ切り分けて売ることは現実的ではありません。

金貨なら、複数枚に分けて保有できます。一枚ずつ売却でき、持ち運びもしやすい。国際的に流通している地金型金貨であれば、比較的換金先も見つけやすいと考えられます。

ただし、小型になるほど購入時の上乗せ価格が大きくなり、売却時との差も広がりやすくなります。

投資効率を重視するなら大型の金地金。

小分けや持ち運びを重視するなら金貨。

どちらが絶対に正しいというより、目的が違います。

金貨は効率よく金価格へ投資する商品というより、金融システム外に少額の価値を置いておく保険に近いのだと思います。

現物金をどこに保管するか

現物金を買ったとしても、次は保管方法を考えなければなりません。

保管方法主な利点主な弱点自宅保管金融機関が閉まっていても取り出せる盗難、紛失、火災、防犯コスト銀行の貸金庫自宅より盗難や火災に強い銀行休業時には取り出せない可能性貴金属会社への預託自宅で保管しなくてよい会社、システム、物流に依存する海外での保管国内だけに置くより地域分散になる費用、法制度、現地へのアクセス

自宅保管の強みは、金融機関が閉まっていても自分で取り出せることです。

一方で、盗難や紛失のリスクは自分で負うことになります。

銀行の貸金庫は、自宅より盗難や火災には強いでしょう。

ただし、銀行が休業していたり、災害などで店舗へ入れなかったりすれば、必要なときに取り出せない可能性があります。

盗難対策としては有効でも、金融システム停止への備えとしては完全ではありません。

貴金属会社へ預託する方法もあります。

サービスによっては、預けている金を後から金地金や金貨として引き出せる場合があります。

ただし、預けている間は自分の手元に金がありません。

現物化するには、会社の営業、システム、在庫、配送網などが動いている必要があります。

危機が起きてから慌てて現物化しようとしても、希望どおり引き出せるとは限りません。

また、預託方法によって所有権や返還方法の扱いが異なる場合があります。「現物を引き出せる」という説明だけでなく、契約内容まで確認する必要があります。

少額の現物金は焼け石に水なのか

ここまで考えると、別の疑問が出てきます。

少額の金貨を数枚持ったところで、本格的な預金封鎖が起きたら焼け石に水ではないか。

長期間の生活費、住宅ローン、教育費、税金まで現物金で賄うには、かなりの量が必要です。

大量に持てば、今度は盗難、保管、換金、持ち運びのリスクが大きくなります。

大規模な金融規制が長く続くことを前提にすれば、少額の現物金だけで生活を守るのは難しいでしょう。

ただし、少額だから無意味とも限りません。

短期間の生活費。

一時的な宿泊費や移動費。

金融機能が回復するまでのつなぎ。

別の地域や金融圏へ移るための費用。

役割を限定すれば、意味を持つ可能性があります。

現物金の役割は、生活を永久に守ることではありません。

「逃げる」「待つ」「別の金融圏へ再接続する」ための保険と考えれば、少額であることにも意味があります。

預金封鎖は銀行破綻とは別の話

預金封鎖を考えるときは、銀行破綻と区別する必要があります。

銀行破綻は、特定の銀行の経営や信用に問題が起きることです。

一方、預金封鎖や資本規制は、政府が預金の引き出しや送金、外貨交換、資本移動などを制限する措置です。

日本では現在、企業や個人による海外との資本取引や決済は原則自由とされています。一方で、外為法は外国為替や対外取引を対象とする基本法であり、一定の取引には報告制度も設けられています。

将来、実際にどのような規制が行われるかは分かりません。

ただ、本格的な金融規制が実施される場合、影響が円預金だけに限定されるとは限りません。

国内銀行の外貨預金や、国内証券会社からの出金、国内証券口座で保有している外国株や米国ETFについても、制度の内容次第では取引や資金移動の影響を受ける可能性があります。

日本の証券会社でGLDMを持っている場合、保有資産は米国上場ETFです。

しかし、口座の入口は日本国内にあります。

「外国資産を持っていること」と「外国の金融機関で管理していること」は別なのです。

海外資産なら日本の規制から逃れられるのか

それなら、海外の銀行や証券会社へ資産を置けばよいのでしょうか。

国内だけに資産を置くよりは、規制への耐性が高まる可能性があります。

日本国内の金融機関が一時的に機能しなくても、海外口座の資産は海外の金融システム上に残るからです。

ただし、日本政府の規制から完全に切り離されるとは限りません。

日本の居住者である限り、日本の税務や申告制度との関係は残ります。

現在も、日本は共通報告基準であるCRSに基づき、諸外国の税務当局と金融口座情報を交換しています。海外口座に置けば、日本の制度から見えなくなるわけではありません。

また、危機時に海外送金、円転、資本取引、国内への資金移動などへ、どのような規制が設けられるかは事前には分かりません。

海外から日本へ資金を戻す段階で、送金制限、審査、円転制限、報告義務などが設けられる可能性も否定できません。

海外に置いているだけで、あらゆる事態から守られるわけではありません。

海外資産の強みは、戻さずに待てること

それでも、海外資産を持つ意味がないわけではありません。

海外資産の強みは、日本へ無条件で自由に戻せることではなく、日本へ戻さずに保有を続けられることです。

外貨のまま持ち続ける。

海外証券口座で運用を続ける。

規制が緩和されるまで待つ。

資産を戻す時期や方法を選ぶ。

国外で生活する場合に現地で使う。

海外資産は、規制を完全に無効化するものではありません。

資産を動かす時期と場所の選択肢を増やすものです。

日本へすぐ戻せないとしても、「戻さずに待てる」ということ自体に意味があります。

日本に住み続ける限り、完全には切り離せない

ただし、日本に住み続ける限り、日本円や日本の金融システムへの依存は残ります。

住宅ローン、家賃、教育費、医療費、税金、日々の買い物。

生活の大部分は、日本国内の決済手段を使って支払います。

海外に十分な資産があっても、それを日本での生活費として使うには、どこかで日本の金融システムへ接続する必要があります。

海外資産を本格的な避難先にするには、海外口座だけでは足りません。

国外で使える決済手段、居住資格、住居、収入源、医療、家族の生活基盤まで必要になります。

そこまで準備しないのであれば、海外資産は完全な避難先ではありません。

あくまで選択肢を増やすための分散手段です。

日本に生活基盤を置いたまま、日本の金融規制だけを完全に切り離すことは難しいのだと思います。

預金封鎖に備えて、どこまでやるべきか

極端な事態への備えは、考え始めると際限がありません。

すべての預金を海外へ移す。

大量の現物金を買う。

自宅に大型金庫を設置する。

国外で生活できる環境を準備する。

そこまでやれば耐性は高まるかもしれません。

しかし、対策そのものにもコストがあります。

現物金なら、売買価格差と保管費。

海外口座なら、税務、申告、口座管理、送金の手間。

資産を分けすぎれば、全体の管理も複雑になります。

発生するか分からない極端な事態への対策として、資産の大半を現物金や海外口座へ移すことは、それ自体が別の集中リスクになり得ます。

現実的には、一つの方法へ賭けるより、何層かに分けて備える方がよさそうです。

たとえば、

  • 国内銀行を複数に分ける

  • 国内証券会社も分散する

  • 円だけでなく外貨建て資産を持つ

  • 金価格への投資には金ETFを使う

  • 一定額の現金を手元に置く

  • 必要性を感じるなら少額の現物金を持つ

  • 海外資産も選択肢の一つとして持つ

といった方法です。

どれか一つで完全に守ろうとするのではなく、それぞれの弱点を別の資産や保有方法で補います。

完全な安全より、依存先を分散する

GLDMについて調べ始めたときは、金ETFと現物金のどちらがよいのかを知りたいだけでした。

しかし、調べるほど、どの方法にも役割と限界があることが分かりました。

GLDMは、低コストで金価格へ投資する手段としては使いやすい商品です。

ただし、証券会社や取引所などの金融システムに依存します。

現物金は、金融システムの外に置けます。

その代わり、売買コスト、保管、盗難、紛失、換金の問題があります。

海外資産は、国内資産だけを持つより規制への耐性を高める可能性があります。

しかし、日本へ戻す段階で規制の影響を受ける可能性があり、日本に住み続ける限り、日本円や国内の決済システムとの関係は残ります。

結局のところ、預金封鎖や資本規制に対して、完全に逃げ切れる資産はないのだと思います。

だからこそ、完璧な逃げ道を探すよりも、国内と海外、円と外貨、金融資産と現物資産を少しずつ組み合わせる。

特定の国、金融機関、通貨、保有方法に依存しすぎない。

その方が、現実的な資産防衛になるのではないでしょうか。

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