「教育費にいくらかけると子どもの年収が上がるか」──文科省×厚労省データのクロス分析
90秒でわかる結論
教育費は「投資」として割に合うのか。文科省の教育費データと、厚労省・JILPTの生涯賃金データをクロスさせると、答えははっきり出る。最強の投資は「大学進学」、それも国立大学だ。 国立大に約242万円かけると、高卒との生涯賃金差は男性で約4,270万円、女性で約4,750万円――投じた学費の約17.6〜19.6倍が返ってくる。私立でも7.9〜11.6倍と、株式投資の比ではない。 一方で、データが「割に合わない/効果不明」と判定するものもある。私立小中高にかける上乗せ1,380万円が将来の年収を上げるという直接データは存在しない。専門学校は男女で結果が割れ、大学院は約39倍という数字が出るが、これは「もともと優秀な人が進む」選択バイアスの塊だ。 そして最大の注意点――「学歴が高い=年収が高い」は相関であって、全てが教育の因果効果ではない。能力・意欲・家庭環境という交絡を無視すると、ROIを過大評価する。本記事は数字を出したうえで、その数字の正しい読み方まで踏み込む。
「子ども一人を育てるのに数千万円」「いい大学に入れれば将来安泰」――教育費をめぐる言説は、期待と不安に満ちている。だが、実際のところ、教育費はいくらかけると、子どもの年収はいくら上がるのか。 投資としてのリターン(ROI)を、感覚ではなく公的データで計算した人は驚くほど少ない。
本記事は、文部科学省「子供の学習費調査」(令和5年度)と、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとにJILPT(労働政策研究・研修機構)が推計した学歴別生涯賃金(2024年版)を突き合わせ、教育投資のROIを学歴・学校種別に算出する。どこに金をかけると報われ、どこにかけると報われないのか。データで損益分岐を引く。
1. 教育費は「投資」として割に合うのか——結論と大原則
最初に結論を言う。平均で見れば、教育費は「投資」として極めて優秀である。 とりわけ大学進学のROIは、世の中のどんな金融商品もかなわない水準だ。ただし、この結論には2つの大きな但し書きがつく。
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│ 教育投資ROIの「3つの大原則」 │
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│ ① 大学進学の平均ROIは桁外れに高い(学費の約8〜20倍) │
│ ② ただし「学歴の種類・コスト」でROIは大きく変わる │
│ ③ そして「相関≠因果」――数字は教育の効果を過大に見せる │
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