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秋のミュージアム巡り(福岡編)

年を取るごとに、ミュージアム巡りをするのが好きになってきました。ここでいうミュージアムは、美術館、博物館、文学館などの総称のつもりで用いています。
僕の同世代の、元同僚の女性なども最近ミュージアム巡りにはまっているようで、ある程度の年齢になると反復説的に人類はこういう経験を求めたがるものなのでしょうか。動機は人それぞれでしょうが、私は、自分の普段の生活とは少し離れた未知なものに出会いたい、という知的好奇心が強いと思います。

私は東京在住で、改めて東京は経済的にも文化的にも恵まれた場所だなと感じます。上野を筆頭に、多くの質の高いミュージアムが点在しているのが理由です。ただこのnoteは旅ブログ的な位置づけなので、ちょっと出張気味に遠出をした際の記録をまとめておきます。


ということで、先日唐突に福岡に出かけてきました。理由は、九州国立博物館で開催されている「法然と極楽浄土」を観に行くためです。

「1年前に上野でもやってたじゃん」というのはその通りなのですが、当時はスルーしてしまいました。その後ある用事で當麻寺に訪れたのですが、それがきっかけで中将姫に興味をもち、由縁があるとされている「綴織當麻曼陀羅」がこの特別展で展示されているということで見たくて訪れた感じです。

旅の計画を立てているなかで、ついでに小倉の企業ミュージアムにも立ち寄ってみたいな、といろいろ予定を積み重ねていくうちに、旅程のほぼすべてを使ってミュージアムのはしごをする、という計画になりました。

このnoteでは散々「日帰り一人旅」について書いてきていますが、今回の福岡訪問も当然のことながら日帰り、マイルを使って航空券代を無料にした格安旅行になります。一応ここは旅noteなので、展示の細かい詳細というよりは、行程、プロセスを中心に書いておきます。


今回のざっくりとした行程としては、行きは北九州空港経由で小倉に向かい、そこから新幹線で博多に移動、太宰府周辺を巡った後に福岡空港経由で帰路につく、という感じです。
この日はとても良い天気で、機上から肉眼で厳島神社の鳥居を目視することができました。

厳島周辺
拡大するとこんな感じ

北九州空港行きの飛行機は小さい機体ながら乗客も多かったようで、小倉行きのリムジンバスは満員で乗れず何本か待たされるような状態でした。
北九州空港は近くに朽網駅というJRの駅があり、こちら経由でも小倉近辺に訪れることができます。私は今回はこちらの選択肢を選びました。

北九州空港~朽網駅~南小倉駅
朽網と書いてなんと読むでしょう?
正解は、くさみ

バスの券売機で係の人に「どこまで行きますか~」と声をかけられて逡巡しました。関東の人間には朽網を「くさみ」とはとても読むことはできません。様々あたふたしたあげくに「空港近くのJRの駅」と伝えたら発券できました。
今回は9:40北九州空港着の便に乗ってきましたが、この便だと朽網駅で神乗り継ぎができます。9:57にバスに乗り、10:14に朽網駅に着き、10:17の日豊本線に乗り込みました。
最初の目的地は南小倉駅周辺なので、ここで下車しました。

南小倉駅

この辺の行程で、どこに訪れようとしているか分かる人には分かるのかもしれませんが、最初の目的地はTOTOが運営しているTOTOミュージアムです。

TOTOの便器を想起させるような美しい造形美

訪問の理由は、無料であること、口コミの評価が著しく高いこと、よく伝わってくる大量の便器の写真などを見てネタ的に面白いのでは、というあたりです。
実際、TOTOがプロモーション活動のために作成した「トイレバイクネオ」はネタ要素の満足度が極めて高い作品でした。椅子が便器でできたバイク。

企業ミュージアムは会社のPRも目的として作られているため、その企業について今までより深く知ることができます。TOTOについても、来館以前は私は単純に便器の会社だという認識でしたが、色々と理解が深まりました。

明治以後に金が諸外国に流出することに懸念をした創業者が日本の陶磁器技術を海外に売り出すのが祖業のきっかけであること、西洋の最先端の衛生習慣を日本に普及させるために陶磁器技術を用いて上質の便器を作成し今や世界最高峰の便器を作り出していること、現在においては最先端のセラミック技術が半導体含めさまざまな産業において欠かすことができないものになっていること。などなど。
「東洋陶器」がTOTOの由来だというのも初めて知りましたし、日本ガイシや、僕が個人的に注目していた日本特殊陶業も広い意味でTOTOと源流を同じする企業であることは驚きでした。私が想像していた何倍も、日本の経済を支えている優良企業集団です。

エントランス。館内の写真は非営利目的でのみ使用可能だそうです。

ミュージアムとしては今まで作り出してきたTOTOの様々な便器が大量に陳列されており、やはりそれが当館の一番の魅力ではとは思います。
世の中には色々な産業がありますが、便器はおそらくしばらくは人類に必要なものとして残り続けるでしょうし、人類への貢献度としてはTOTOは極めて高い位置を占めているのでは、と展示を見て思いました。

お土産屋さんで買ったトイレットチョコレート
蓋を開けると中には
便器型のチョコレートでした

小倉にはもう一件寄りたいところがありました。地図の製作を事業とするゼンリンが運営しているゼンリンミュージアム。TOTOミュージアムからはバスで移動しました。
ゼンリンミュージアムは小倉城近くのリバーウォーク北九州内にあり、かなりの一等地に拠点を構えています。小倉駅からも行きやすい場所。

TOTOミュージアム~ゼンリンミュージアム

旅好きはかなりの確率で地図も好きだと思いますが、僕もご多分に漏れずそういう人間で、ゼンリンにはもともと関心が強く、個人的な話ですが株も少し所有しています。株のホルダーになると半年に一回くらい冊子が送られてきますし、株主優待としてしばらくは「マップデザインギャラリー」というミュージアムショップの商品との引き換えが行えるようになっていました(この制度は今は廃止)。ということでミュージアムにも以前から訪れたかったのですが、ようやく今回初訪問できました。

チケットホルダー。チケットを購入(1500円)するとついてきます

ゼンリンミュージアムは入館料が1500円しますが、チケットホルダーやしおりなど各種グッズがついてくるので結構お得感があります。もちろん間宮林蔵や長久保赤水などの絵柄のチケホルに価値を感じるのであれば、ですが。

館内は基本的に撮影は不可。世界中の地図の複製品を通じて、地図の歴史を学ぶことができます。
一部、床に実寸大の伊能図(伊能忠敬の日本地図)がプリントされている区画があり、こちらは撮影可能でした。あらためて、地図の大きさと、海岸線のリアルさには驚かされます。

原寸大の伊能図

地図というのは当時の国家機密で、詳細な地図を手に入れることが国家戦略においてもかなりの重要事項だったことが展示から伺えます。
伊能忠敬による地図作成が幕府の隠密事業として公金で行われたことや、明治時代になるまでその存在は秘密裏にされていたこと。シーボルトなどを経由に地図の写本が漏れたことで幕府の関係者は重罪になり、最終的にペリー擁するアメリカに日本の正確な地図が伝わってしまったことが日本の開国圧力へとつながっていくことなど、展示を通して学ぶことができます。

今でも、Googleマップなどを見ていると国により地図の正確さや精緻さに差があることがわかります。その国が正確な測量技術を持っているかということと、機密のコントロールがどのレベルで行われているか、が伺えます。

Googleマップといえば、ゼンリンが以前は地図データを提供していましたが、その契約が切れた後にGoogleマップの精度が急落したことがありましたね。
今でも、Googleマップは利便性は圧倒的ですが、嘘情報が結構多いので国土地理院やゼンリンの地図の重要さは揺るがないです。

ゼンリンミュージアムはリバーウォークの高層階にあり、ラウンジ的なスペースで景観を楽しみながら休憩することができます。この景観も含めると1500円というチケット価格は決して高くないように思います。

眼下に日本製鉄の工場が広がります。

全くどうでも良いことですが、日本製鉄も個人的に少し株を持っているので、ゼンリンミュージアムからの眺めは格別でした。

1Fのグッズショップ「マップデザインギャラリー」では、地図関係グッズを大人買いしました。最近は47都道府県靴下がお気に入りです。

こちらは47都道府県をモチーフにしたチャームです

この後は、新幹線に乗り込んで小倉から博多まで移動。博多からはバスで太宰府、ひいてはその近くにある九州国立博物館に訪れる予定でした。

ただこの日は太宰府周辺への来場者が極めて多く、バスも遅延が連発し混乱の極みだったため、Alternative なプランとしてJR二日市まで移動し、西鉄二日市まで歩いて訪れる、という力技で訪問しました。Googleマップではまったくサジェストされないですが、自分調べでは最速の移動手段です。

JR二日市駅~西鉄二日市駅。西鉄二日市からは西鉄で太宰府まで移動

太宰府の参道はとんでもない人の数でしたが、国立博物館へのルートは参道からちょっと逸れて行けるので人も少なく快適でした。

国博通り / Museum road
九州国立博物館

私は九州国立博物館は初来訪でしたが、開館20周年ということもありとてもキレイで現代的な空間でした。展示も「法然」という渋いテーマなのに長蛇の列で、入場規制がされていました。

展示内容すべてについて概観しないですが、私個人が見たかった「綴織當麻曼陀羅」の本物を目の当たりにすることができて満足しました。国宝だというのに、奥まったエリアにあるせいか人もまばらでした。
損傷も激しいですし、中将姫が蓮糸で織ったというのはあくまで伝説上のものでしょうが、そのナラティブに多くの人が惹かれ、救いを求め、後世に多くの写本が作られた、その原典の作品というのを踏まえて見ると歴史的な重みを感じる作品でした。

展示全体の感想としては、私は特に浄土宗の檀家というわけでも無いので法然の教えに格別の興味があるわけではないですが、専修念仏という平等な思想・教えに当時の人たちが救いを求めていた、その姿が展示を通じて感じられました。

というのは表向きの感想で、本音としては「五劫思惟阿弥陀如来坐像」のやりすぎなアフロヘアーを堪能したり、「仏涅槃群像」で入滅した釈迦の胸に「卍」の文字が刻まれているのを見て「キン肉マンみたいだな」と一人でクスクス笑っていた、というのが感想でした。
あまり堅苦しく考えないで、造形の面白さを楽しむのが、こういう展示では良いのではと個人的には思っています。

写真撮影OKエリアの展示「仏涅槃群像」。胸に刻まれた卍、悲しみのあまり失神して倒れる人、なぜか足の裏を触ろうとする人など、ツッコミどころが満載。普段は高松の法然寺に展示。

まったく関係ない話ですが、福岡では道すがら、千手観音や螺髪を想起させるような意匠のものをたくさん見かけ、信心深い人達が住む街なのだな、といたく感心しながら街をそぞろ歩きました。

千手観音
釈迦をも想起させる螺髪(パンチパーマ)

ミュージアムではないですが、せっかく国博まで来たのだからと、近くの太宰府天満宮、そして最近話題の竈門神社にも足を伸ばしました。どちらも人がとても多く、地元の人、そして海外の人も多く見かけ、多くの人に支持さる熱狂の現場になっているのは感じました。

太宰府天満宮
竈門神社

竈門神社は、噂には聞いていましたが完全に「鬼滅の刃」の聖地と化しており、訪れる人の大半は10~20代と思われる若者、絵馬には数多くの鬼滅の刃の絵が描かれている、という趣でした。
私は本当は山の上まで参拝したかったのですが、さすがに今回の旅程に含めるのは難しかったので、また改めて訪れたいと思います。九州は熊がいないはずなので、そういう意味でも安心感はあります。

紅葉はまさに見頃。これも人が多かった理由かも
夕暮れ

ミュージアム巡り、さすがに旅先でも無い限りは1日に何件もはしごをすることはないですが、個人的には「未知なるもの」をいかに短時間で咀嚼し、新しい知識や物語を身につけて帰ることができるか、という知的ゲーム的な様相で取り組んでいます。造形の不思議さや美麗さをまずは感じ、その上で「何のために作られたのか」「なぜこれが求められたのか」を自分なりに考えるのが楽しい、と感じています。
多くのミュージアムでは学芸員が極めて丁寧に解説を書き添えてあり、直接説明をしてくれる場所もあったりするので、そういう意味でもやはり現地に訪れてみるのが一番良いと思います。

旅先でのミュージアム巡りは、福岡以外でも最近は長野(小布施)にも訪れたりしていますが、その辺も書いていくと内容がくどくなるのでこの記事はここで終了。旅先で味わった食事関連の写真を貼って締めたいと思います。

東京で人気爆発の「資さんうどん」。小倉では空いてました。めちゃくちゃ美味しい
伊都きんぐのどら焼き
びっくり亭の焼き肉。店員と湯気の勢いがすごかった
ご当地じゃがりこ。九州しょうゆ味

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