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【ショートショート】こんなに暑くなるとは思わなかった


「扇風機だけじゃ耐えられん!!!」

そう喚いて家から飛び出してやってきた近所のカフェ。平日なのもあって人は少なめで、カラン、とコップの中の氷が鳴る音がやけに響いた。

向かいに座る男がヤケクソになって注文した2つのクリームソーダは、提供された瞬間こそ、店に入った理由も忘れて盛り上がったけれど、一口飲んで、一息ついたあと、この一杯をいかに長くもたせるかを考えねばならなかった。

「…不味い」
「氷溶けて薄なってもうたからな」

アイスも食べ切り、薄まったメロンソーダを恨めしそうに睨む彼の気持ちもわかる。異例の早さで解禁したエアコン。それすら音をあげた暑さ。予定外が立て続いた苛立ちを追いやるように、ストローで小さくなった氷をつつきながら返した言葉は自分が思っていたよりも投げやりだった。

「はあーっ、…エアコンさえ…」
「まあ、もう30分もしたら業者の人来てくれるやろ?」
「そやけどさあ」

突っ伏した彼の腕が当たったコップは、氷の音すら鳴らさない。
代わりに震えた俺のスマホは業者の名前を映し出す。

「きた!」
「声でかい!…もしもし、あ、はい、そうです、…え、あ、ああ、わかりましたー、失礼します」

目を合わせながら電話を切る。溜息を堪えるのに必死な俺をよそに、開かれた彼の口は店員さんを呼んでいた。

「すみません、アイスコーヒー2つ」

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