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決算書が悪くても融資が通る会社、良くても断られる会社 銀行審査歴10年の私が見てきた「数字の先にあるもの」

先日、ある経営者の方からこんな相談を受けました。
「九鬼さん、うちは赤字なんです。」

少し申し訳なさそうな表情で続けられました。
「やっぱり融資は難しいですよね。」
この質問は、本当によくいただきます。

でも私は、すぐに「難しいですね」とは答えません。
代わりに、こんな質問をします。
「なぜ赤字になったんですか?」

銀行員として25年。
融資審査にも10年間携わってきました。
その中で強く感じたことがあります。
決算書は大切です。

でも、決算書だけで融資を決めているわけではありません。

例えば、設備投資をして赤字になった会社、新店舗を出して一時的に利益が減った会社。
新しい人材を採用し、将来への投資をした会社。
こうした会社へ融資を行ったことは何度もあります。

一方で、黒字なのに融資を見送った会社もありました。
「えっ、黒字なのに?」と思われるかもしれません。

でも理由はありました。
利益は出ている。しかし、売上が毎年少しずつ減っている。
社長に今後の方針を伺っても、「何とかなると思います。」具体的な打ち手が見えない。

銀行が不安になるのは、赤字そのものではありません。
未来が見えないことなんです。

私は銀行員時代、一生懸命頑張っている経営者ほど、ここが伝わらず苦労する姿を何度も見てきました。

社長の頭の中には、ちゃんと改善策がある。新しい営業先も考えている。
価格改定も検討している。

でも、それを銀行へ伝えていない。

一方で銀行は、決算書しか材料がない。結果として、お互い真剣なのに、話が噛み合わない。

私はその姿を見ながら、銀行と経営者の間には、見えない壁があると感じていました。

だから銀行を離れた今、私は銀行の見方を経営者へ、経営者の想いを金融機関へ翻訳する役割を担いたいと思っています。

銀行は、過去を見る仕事ではありません。
もちろん決算書は見ます。
でも本当に知りたいのは、「この会社はこれからどう変わるのか。」
その答えです。

だから、決算書が悪くても、改善への道筋が見える会社には前向きな融資が行われることがあります。

逆に、決算書が良くても、将来への準備が見えない会社には慎重になることもあります。

数字は大切です。でも、数字には必ず理由があります。
そして、その理由を銀行へ伝えるのは、決算書ではなく、経営者自身なんです。

最近、息子と将棋のようなボードゲームで遊んでいた時のことです。
息子は駒を勢いよく前へ進めます。
「かった!」と嬉しそう。大はしゃぎ。
でも数手後には、大事な駒がなくなっていました。

私は、「今だけじゃなくて、次も考えてみようか。」と言いました。

すると息子は少し考えて、今度はゆっくり駒を動かし始めました。
私はその姿を見て思いました。

経営も少し似ています。
今日の数字だけではなく、半年後、一年後をどう考えているか。
そこが未来を変えていきます。

実際にご相談いただく経営者の方も、最初は「赤字だから無理ですよね。」
とおっしゃることがあります。

でも話を聞いてみると、銀行が知りたかったのは赤字の事実ではなく、「赤字からどう立て直すのか。」という社長の考えだった。

そんなケースは少なくありません。
もし今、決算書を見て不安になっているなら、数字だけで自分の会社を評価しないでください。

銀行員として25年、審査歴10年の私が見てきたのは、良い決算書の会社ではありません。
未来を自分の言葉で語れる経営者の会社です。
その想いが銀行へ伝わった時、数字だけでは見えなかった可能性が開けることを、私は何度も見てきました。

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