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「わかっている」のに今日も指を切る

覚えているし
ちゃんとわかっているのだ

動くとき

ほんの一瞬だけ

記憶がどこかへいってしまうらしい

気づくと
いつも同じもので指を切っている

「痛っ」と思ったときにはもう遅くて
見慣れた場所に
見慣れた赤い線がじわりと浮き上がってくる

確信犯的なおっちょこちょい
とでも言うのだろうか

「次は気をつけよう」

その瞬間は心に誓うのに

私の身体は
学習というステップを鮮やかに飛び越えて
また同じ過ちを繰り返す

厄介なのは
その傷ができる場所だ

関節の曲がり目だったり
指の絶妙なキワだったりして

絆創膏を貼ろうにも
どうせすぐに剥がれることが目に見えている

おまけに
私の仕事はよく手を洗う

せっかくきれいに貼れたと思っても
容赦ない水流と石鹸の泡の前に
絆創膏はあっけなくその粘着力を失っていく


端の方からめくれあがり
ふやけた白い塊に変わっていくのを見るのは
傷そのものよりも少しだけ切ない

貼っても意味がない

だけど

剥き出しのままなのも
なんだか心許ない

結局

いつも中途半端に浮き上がった絆創膏を
指先に纏わせたまま
また次の手洗いに向かう

頭と身体が
ほんの一瞬だけすれ違う

そのすれ違いの代償として
私の指先には今日も

小さくて
ひりひりとした

だけどなんだか憎めない日常の印が刻まれている


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