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【前編】ひらかれた道 見えない手

それは
四月の下旬のことでした


心の奥底から
突き上げるような衝動が湧き上がってきたのです


「出雲へ行かなければ」と

私にとって出雲という場所は
人生の転換期に必ず訪れる

いわば羅針盤のような場所


良き縁を繋ぐために
あるいは悪しき縁を断ち切るために

導かれるようにして足を運んできました

けれど
今回はどうしても無理な状況でした


仕事の合間も
夜 筆を置く瞬間も

ずっと心の中で葛藤していました


「行きたい でも行けない」


現実は冷たく
動かしようのない壁が立ちはだかっていたのです

私は仕方なく
一度その願いを畳んで
心の中で静かに手を合わせました

「出雲の神様 申し訳ありません
今回ばかりはどうしても伺うことができません

けれど次は必ず参ります
その時は どうかよろしくお願いいたします」


それは
諦めというよりは

誠実な「ご挨拶」のつもりでした


ところが

その瞬間から物語が動き出したのです

そこからは
まさに奇跡の連続でした

絶対に行けない理由となっていた障壁が
まるで見えない手にひとつずつ取り除かれるように

とんとん拍子に消えていったのです


物理的に無理だと思っていたスケジュール
重なっていた事情……


それらが鮮やかに 滑らかに

解決へと向かっていきました

「ああ これは神様が
『来なさい』と道を作ってくださっているんだ」

そう確信せざるを得ないほどの
澱みのない流れ


気がつけば
私は予定していたよりもずっと早く

新しい旅の支度を整えていました

新しい門出への予感と
不思議な高揚感


一度は閉ざされたはずの門が

祈りによって再び
それもかつてないほど軽やかに開かれたのです


なぜ
神様は無理にでも私を呼んだのか


その答えは

実際に現地へ降り立った瞬間に

さらなる驚きとともに手渡されることになるのですが……

(後編へ続く)

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