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1時間前の余裕と 10分前の焦燥

いつもより少し早く家を出たのは
大切な友人の店に顔を出すため


心にゆとりを持たせるはずのその選択が

まさかあんなに慌ただしい結末を連れてくるなんて
その時の私は知る由もなかった


現地に到着したのは
約束の時間の1時間以上も前


「さすがに早すぎたな」と苦笑いしながら
近くで少し時間を潰すことにした


お気に入りの本を開くか
それとも街の空気をのんびり眺めるか


そんな贅沢な「余白」を楽しんでいたはずだった


ふと時計に目を落とした瞬間
心臓が跳ね上がった

残り あと10分

あんなにたっぷりあった時間は
どこへ溶けてしまったのだろう


1時間以上も前に
すぐ近くまで来ていたというのに

気づけば約束の時間が目の前に迫っている


そこからは
まさに時間との追いかけっこ

しかも
初めて訪れる場所だ


スマートフォンのマップを頼りに
歩き出すものの

焦れば焦るほど
道が歪んで見えるような気がしてくる


「こっちで合っているはずなのに」


路地裏に入り込み
思わぬ方向へ進んでしまっては引き返す


軽い迷子になりながら

内心はヒヤヒヤ
頭の中はフル回転


足早に歩き続け
なんとか本当に
事前ギリギリのタイミングで目的地に滑り込んだ


「間に合った……」

安堵の息を漏らしながら
火照った体に流れる汗を拭う


1時間も早く着いていたのに
結局いつも通りの

いや
いつも以上の大慌て


予定通りにはいかないからこそ
日常はちょっとおかしい


今日は少し
無駄に心地いい汗をかいた日でした

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