子どもの頃、我慢ばかりしていた人へ。私が大人買いで報われた話
あなたは初任給で何を
買いましたか?
私はあるものを“大人買い”
しました。
えっ?あるものって何かって?それはね…。
私が小学生の頃、当時では
珍しく両親は共働きを
していた。
「学校から帰ってお腹空いて
たら、これでおやつを買って
食べなさい。」
そう言われ、毎日100円を
渡された。
学校から帰って妹と2人、近所のお店に走っていく。
手に握りしめた100円は楽しみの固まりだった。
お店の駄菓子コーナーでは100円で沢山買えるように、
頭を捻りながら買い物かごに
お菓子を入れていく女児2人。
やっとレジに行くも、
通りすがりにいつもの商品棚に鎮座している、例のおやつを
眺めながらいつも思う。
『いつかお金を貯めて、絶対にあれを買うんだ!』
そこから私の貯金生活が
始まったのだ。
預金を決意した私はそれは
もう、頑張った。
毎日ギリギリまで使っていた
おやつ代を、お菓子1つ減らして貯金に回す。
金額は10円単位の微々たるものだったが、飢えた野獣の私には身を削る思いの結晶だ。
“これでいつかあれが買える”
その思いを胸に貯金箱に響く
チャリンという音は、
何ものにも代えがたい
至福のチャイムのように
聞こえた。
…だが、断腸の思いでおやつ代の節約をしても、
一向に貯まらない貯金箱。
私にはその理由が
分からなかった。
そんなある日、私は見て
しまったのだ。
妹が私の貯金箱からお金を
抜き取っている姿を…。
私は急いで
取り返しに向かった。
「何してんの?
それ、私のだよね!」
怒鳴りながら近づく私に、
妹はキョトンとしながら
こう言ったのだ。
「だって!
毎日残してるじゃん。
そんなに要らないなら
私が使ってもいいんじゃない?」
私はあっけにとられて開いた
口がふさがらなかった。
そして、そんな油断しまくった私を尻目に、今取り出した私の貯金箱のお金を握りしめて
駆けていく妹。
お前は女版ジャイアンか?
使わないんじゃねーよ!
貯めてんだよ!!
そんな事も分かんねーのかよ!
そう、言いたくても言えない
私は泣いた。
泣くしかできなかった。
だって私は
“おねえちゃん”だから。
妹が欲しかったら我慢して
譲らなきゃいけないから。
私はその夜、仕事から帰った
母親に実情をぶちまけた。
「妹が私の貯金箱のお金を
取ってる。」
そんな私に母はなんて言ったと思う?
母はこう言ったんだ。
「あの子がそんな事を
するわけないでしょ?
お金を無くしたなら素直に
そう言いなさい。」と…。
そして私は母に言うのは
止めた。
それでも、諦めきれなかった
私は地道に貯金箱にお金を投入し続けた。
いつの日か溜まることを
夢見て…。
月日は流れ、母の仕事が偶然にも早く終えたその日。
帰宅した母は見てしまったのだ。
妹が私の貯金箱をつついている姿を。
「何してるの?」
「お金取ってる」
「それ…お姉ちゃんのだよね?なんで人のを取るの?」
「お姉ちゃんのだけど、
いつも使わないから。
それなら私が使っても
いいでしょ?」
母はあの日、私が嘘をついた
のではないことがやっと
分かった。
そして妹に、
人のものを黙って使っては
いけないこと。
欲しいものがあるならお母さんに言うこと。
今すぐそのお金は返して
お姉ちゃんに謝ること。
を諭しながら説明した。
その夜、妹が謝ってきた。
ごめんなさい、と。
もうしません、と。
私はモヤモヤしていたが、
謝ってきた人を許さない選択肢はその頃持っていなかった。
その日から私は貯金を止めた。
だって、取られるくらいなら
自分で使ったほうが良くない
かな?
こうして大人になり、
自分で働いた高校生のバイト代で私は大人買いをした。
当時、買いたくても買えなかった『パイの実』と『ポポロン』を。
全種類の味を買い物かごに
入れ、レジに向かう私は
誇り高い勇者の姿をしていた
と思う。
あの日、全てを諦めた私が
微笑んでるような気がした。
後日談。
大人になった私にある日母が
言ったんだ。
「妹が昔、お姉ちゃんの貯金箱からお金を取っていたのを見たよ。あの日はあなたの言う事を疑ってごめんね」と。
息子たちが大きくなった今、
あの頃の話をすると、妹の
「もう…勘弁してよ。
あの時は悪かったってば〜」
という声と一緒に、私たちは
笑い合う。
それから家族は時々、
“パイの実”を買ってきてくれる。
「はいこれ!
高級菓子なんでしょ?」
ニヤニヤしたその言葉と
一緒に。
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