いつかまた、あの日のケモノ道で会おう│青春│人生│闘病│選択│記憶
その日私は絶望を覚えた。
光り輝く未来への道は目の前で扉が閉まり 閉ざされた。
ーー病気。
そのたった2文字で、光り輝く綺麗に舗装された未来への道は…一瞬にして閉ざされた。
残された道に目を向ける 。
そこには薄暗く 凸凹と曲がりくねったケモノ道だけが残っていた。
ある日の放課後、私は誰もいない教室で帰り支度をしていた。
その時 女の子が1人、入ってくる。
名前は A さん。
彼女は いわゆる不良の女の子。 髪は金色で、 制服なんか着崩していて。
化粧もバッチリして 、アクセサリーも ジャラジャラつけている …そんな子だ。
その A さんが私の元に近づいてきて こう言った。
「あんた何してるの。」
私は答えた 。
「今から帰るから 荷物 片付けてる。」
すると A さん 、何を思ったのか 「じゃあ一緒に帰らない?」
と言ってきた。
正直「何で ?」と思った。
それはそうだろう。
モブで陰キャな私と派手なタイプの彼女 。
接点なんて一度もない。
今で言うスクールカーストの 一番上と一番下だ。
そんな彼女が私に何の用なのだろうか?
2人で並んで帰る 駅までの道のり。
緊張のせいか暑さのせいか。
肌には汗が じっとりとまとわりつく。
A さんが口を開いた。
「今までずっと思ってたんだけど、真面目にするのって疲れない?」
「なんで ?
私は別に…疲れないよ ?
だって大人に言われた通りにやってればいいだけだもん。」
そんな私に彼女は言った 。
「私は 親や先生の言うことに、何でもかんでも従うのは嫌だ。
私には私の 意志がある。
それを我慢して大人の操り人形になるのは…我慢できない 。」
そして、大きなあくびを一つした。
「眠いの ?」
という 私に
「昨日も 夜中 ずっと遊んでたからね 。」
そう言いながら口角を上げる彼女 。
「ふーん、そうなんだ。
私は夜、寝れない方が嫌だな。 だって次の日、 ずっとしんどいんだもん 。」
そういう私を、彼女は笑いもせずにじっと見つめた。
「あんたはすごいね。」
そう一言だけ、つぶやいた。
「私は A さんの方がすごいと思うよ ?
私は自分の意思を貫き通すほど 強くないんだもん。
それぐらいなら…大人の言うことをニコニコ笑って受け入れてる方が絶対楽!」
真顔でそう答える私に A さんは意外そうな顔をした。
「あんた、やっぱり面白いね。」
そう言って 笑ったんだ 。
「そうかな?」
そういう私の顔も笑っていた 。
「でも反抗するのも楽じゃないんだよ。
夜 、眠たくても外に出なきゃいけないし、 家でゆっくり過ごしたくても…そういう環境じゃないしね。」
うつむきながら答える彼女に、私はそれ以上のことは聞けなかった。
この横断歩道を渡りきるとすぐ目の前に駅がある 。
「今日はありがとう 。楽しかったよ。」
手を振りながら 笑顔で 言う 彼女に 私も小さく手を振り返した。
それから卒業まで 彼女と話すことはなかった。
交わることのない 2人の世界が 小さく交わった瞬間だった。
あの日、彼女は
「大人の操り人形にはなりたくない。」
と言って自分の意志で、あの薄暗く凸凹なケモノ道へと飛び出していった。
私はといえば、人形のままでいる方が楽だと言い切っていた。
だけど病気になって安全な道を失い、この過酷な道に立たされた今なら…。
彼女が不敵に口角を上げた理由が痛いほどよく分かる。
私はもう、誰かの言う通りにニコニコ笑うだけの人形にはならない。
どんなに泥水をすすることになろうとも、私は私の意志で、このケモノ道を歩いていく。
いつかまた、あの日のケモノ道で会えたなら。
お互いが笑っていられるように…。
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