銀色の要塞(移動式プライベート・ラウンジ)を乗りこなす猫の名は鮪(ツナ)|猫の癒やし|歩行器|ラグドール|エッセイ|家族の日常|
吾輩は猫である。
名は鮪(ツナ)。
……皆まで言うな、吾輩にも分かっておる。
人間どもが「覚えやすい」という短絡的な理由で付けた、実にフザケた名である。
吾輩とて、断じて認めてはおらぬのだ!
だがしかし…。
所詮しがない猫の身ゆえ、
吾輩に拒否権などありはしないのだ。
おのれ…人間め…。
適当な名を付けおってからに…。
現在、吾輩が住んでいるこの屋敷であるが、5人の人間(=下僕)と同居をしておる。
世間一般では、(吾輩以外の)不特定多数の人間と生活を共にする屋敷のことを「シェアハウス」などと呼んでるらしいが…。
吾輩はこの屋敷を「シェアハウス」などとは認めぬ。
ここは『吾輩の城』であり、
人間どもはそこに従事する『下界の住民』に過ぎないのだからな!
そんな吾輩にとって、この城内を統治する上で欠かせぬ
「銀色の要塞」がある。
人間どもはそれを「歩行器」と呼び、母上の補助道具だと思い込んでおるようだが、
ふん、実におめでたい誤解である。
これは吾輩のための
「移動式プライベート・ラウンジ」であり、
母上という動力源を備えた「連結装置」なのだ。
母上がふらつきながらも動く時、吾輩は自ら歩くなどという野暮な真似はせぬ。
「母上、出発進行である」
そう心の中で命じ、要塞の上に鎮座する。

母上の歩みに合わせてゆっくりと景色が流れるこの瞬間こそ、至高の甘えの極致。
これぞ「癒し担当」としての特権というものだ。
また、この要塞は戦略的拠点としても極めて優秀である。
吾輩には、冷蔵庫という名の「北壁」を制圧するという野望がある。
この高みへ到達するには、まず歩行器へ飛び乗り、そこを足場として一気に跳躍する。
猫としての身体能力をフルに発揮する瞬間である。
そうして北壁へとたどり着いた「最強の観察者」たる吾輩にとって、
高所からの見下ろしはこの家の支配権を象徴する儀式に他ならぬ。
そしてその他にも…。
家族の団欒――
すなわち人間どもが『食欲』という本能に支配される時間。
吾輩はこの要塞の上で深い眠りを貪ることにしている。
(……むにゃ……次の吾輩のご飯は、1時間前から催促するのを……忘れてはならぬ……)
そんな『我の前に敵なし!』の吾輩であるが、唯一の例外も発生する。
言わずとしれた『天敵=父ちゃん』の存在だ!
この天敵…吾輩の隙をついては果敢に『抱っこ』を試みる不届き者。
お気づきの者もいるであろう。
吾輩、抱っこは好かぬのだ。
そんな『抱っこ拒否勢』の吾輩にとって、
『抱っこ推進委員会・名誉会長』の父ちゃんは『天敵』以外の何者でもない。
天敵=父ちゃんが動けば、即座にこの要塞から離脱し、ベッドの下へ退却する。
だが、母上が動くならば、吾輩は共に旅に出る。
抱っこなどは断固拒否するが、この歩行器を通じた
「母上との距離」だけは、何物にも代えがたい。
今日も吾輩は、シルバーに輝く愛車に乗り、
混沌とした家族の日常を、高みから優雅に、かつ冷徹に見守り続けるのである。
銀色の要塞以外にも、吾輩の華麗なる日常は多岐にわたる。
下界の住民諸君、暇つぶしに吾輩のマガジンを覗いてみるがよい。
皆様の家にも、我が家のような小さな統治者はいますか?

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