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勉強には「気合と根性」が必要 〜粘り強さの大切さ〜

はじめに

先日、授業で一橋大学の整数問題を扱った時のことです。

(問)
自然数 $${x,y,z}$$は$${1 < x < y < z}$$および$${\left(1+\dfrac{1}{x}\right)\left(1+\dfrac{1}{y}\right)\left(1+\dfrac{1}{z}\right) = \dfrac{12}{5}}$$を満たす。$${x,y,z}$$の組をすべて求めよ。

生徒さんは順調に進めていました。$${x,y,z}$$の大小関係から$${\left(1+\dfrac{1}{x}\right)^3>\dfrac{12}{5}}$$を導き、$${1+\dfrac{1}{x} > \sqrt[3]{\dfrac{12}{5}}}$$まで到達。ところが...
「先生、三乗根が出てきました。もうだめです」
「…えっ?そこまでできているのになんで?」と思わず聞き返してしまいました。

あまり見慣れない三乗根の記号に怯んでしまったのかもしれません。でも$${\sqrt[3]{\dfrac{12}{5}}}$$つまり、$${\sqrt[3]{2.4}}$$なんて、$${1^3³= 1, 2^3= 8}$$だから、$${1}$$と$${2}$$の間のどこかです。もう少し試せば$${1.3}$$とか$${1.4}$$を三乗してみて、だいたい$${1.3}$$ちょっとだと分かる。

そうすれば、$${1+\dfrac{1}{x}  > 1.3}$$つまり、$${x}$$は整数だから、$${x}$$は$${2}$$か$${3}$$しかあり得ないことが分かって次に進めたのに…。
方針は良かったのです。あとちょっとの実験で答えにたどり着けたはずが、「三乗根」を見ただけで思考停止してしまいました。

こんな経験、皆さんにもありませんか?

多くの生徒が抱く勘違い

「数学の問題は解法をマスターすればスムーズに解ける」
これは大きな誤解です。解法を知っていても、それをどう適用するか、計算途中で出てきた式をどう変形するか。これらには「粘り強く取り組む姿勢」が必要です。
効率的な学習法や解法パターンの習得と同じくらい重要なのが「諦めない心」、「粘り強さ」なのです。言い換えれば、絶対解いてやるぞという気合と根性です。

「もったいない」を防ぐ3つのアプローチ

1. まず「具体的な数で実験」してみる

見慣れない記号や概念が出てきても、まずは具体的な数で試してみましょう。三乗根が分からないなら1³、2³、3³...と計算してみる。文字$${n}$$が扱いにくいなら$${n=1,2,3}$$と代入して実験し、法則が無いか調べてみる。
そんな時こそ、この「具体的な数で実験」が威力を発揮します。
抽象的で分からないものは、まず具体的に観察してから一般化を試みる。これが題意把握のポイントです。

2. 「端と極端」を確認する

関数の問題なら「$${x=0}$$のとき」「$${x\to\infty}$$のとき」、図形問題なら「正三角形の場合」「直角三角形の場合」など。極端なケースを調べることで、問題の本質が見えてきます。
冒頭の例でも、1³ = 1、2³ = 8という存在区間の「端」を確認することで、$${\sqrt[3]{2.4}}$$の範囲が絞れました。

3. 「どこで止まったか」を明確にする

「分からない」ではなく、「三角関数の合成まではできたが、その後の範囲の求め方が分からない」のように言語化してみましょう。問題の所在が明確になると、次の手が見えてきます。

いつまで粘るべきか?

これは多くの人が悩むポイントではないでしょうか。
おすすめしている判断基準は「こうしたらどうだろう?」というアイディアが浮かぶかどうかです。具体的な数値を代入してみる、極端なケースを試す、式を変形してみるなど、何らかの手(こういった“打つ手”のストックは持っておくと良いでしょう)が思い浮かぶうちは粘る価値があります。

本当に打つ手がなくなった時は答えを見て構いません。大切なのは、自分なりに試せることを試し尽くしてから答えを確認することです。
冒頭の例では「方針は合っている」状態でした。こういう時こそ、もう一歩踏み込んで実験してみる価値があるのです。

失敗も貴重な財産

ここまで「粘り強く取り組もう」という話をしてきましたが、たとえ方針が間違っていても、試行錯誤した経験は決して無駄ではありません
「こういう時はこうしてもうまくいかない」という知識は、新たな問題を解く際に「こっちのやり方ではないな」という形で、外堀を埋めるように解法を絞り込んでいく判断を下支えしてくれます。
失敗を恐れずに、さまざまなアプローチを試してみる経験こそが、数学的な直感力を育てるのです。

粘り強さのバロメータ

最後に、科学的研究でも裏付けられている「粘り強さのバロメータ」があります。それは問題を解くときの姿勢です。

実際、サンフランシスコ州立大学の研究では、猫背で座った学生は直立姿勢の学生よりも数学問題を有意に困難に感じることが分かっています。特に数学に不安を感じる学生ほど、姿勢の影響を強く受けるのです。また、台北市立大学の研究では、椅子の前1/3に座り、低い背もたれを使った時に、暗記・計算・論理的判断の学習課題で最高のパフォーマンスが得られることが示されています。

私の指導経験でも、椅子の背もたれに寄りかかり猫背で問題に向かう生徒より、前傾姿勢で「さあ、やるぞ!」という気迫で取り組む生徒の方が、粘り強く問題と向き合う傾向があります。

おわりに

数学は(もちろん他教科も)、粘り強さを持って問題に向き合えば、力はついてきます。
次に問題で行き詰まった時、すぐに諦めるのではなく「もう少し実験してみよう」と思い出してもらえたら嬉しいです。その一歩が、あなたの数学力を大きく伸ばすきっかけになるはずです。
そして実力がついてきたなら、ウンウン唸って考えることで、自分の限界を超えていくことができるようになります。


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