片想いイルミネーション #クリスマスは片想い文芸部
約800字・ショートショート
聖夜のイルミネーションは、暴力的に眩しかった。
巨大なクリスマスツリーの電飾がドクンドクンと心臓のように脈打つ。
それもそのはずだ。
この街の聖夜は、数多の片想いから搾り取られたエネルギーによって灯っているのだから。
冷え切った歩道に、聖夜電力の腕章を巻いた男が立っていた。彼は無機質なハンディ検針器を手に、通行人の胸元を次々とスキャンしていく。
「……次の方」
僕の番だ。男が僕の胸に検針器をかざすと、耳障りな電子音が夜の空気に刺さった。液晶に表示された数値を見て、男の眉がわずかに動く。
「なかなかの高電圧ですね。重症だ。では、回収します」
職員が胸元のデバイスに細いプラグを差し込んだ瞬間、視界が白く弾けた。
胸の奥に溜まっていた、あの子のキラキラな笑顔、弾む声、伝えられなかったメッセージ――それらがエネルギーとなって、一気に体外へと吸い出されていく。
引き換えに訪れるのは、肺のあたりがすうすうとするような、奇妙な空虚感だった。
僕から奪われた片想いの熱が巨大なクリスマスツリーへと流れ込む。
残酷なほど鮮やかなイルミネーションがツリーの下で肩を寄せ合う恋人たちを照らす。
「わあ、綺麗!」
たくさんの歓声が上がり、スマートフォンのシャッターが切られる。
彼らの弾けるような笑顔を照らしているのは、僕の、そしてここに並ぶ「持たざる者」たちの、切なさの燃えカスだ。
ふと隣を見ると、見知らぬ女性が寂しそうにツリーを見上げていた。
「……綺麗ね、本当に」
彼女の声は、乾いた枯れ葉のように響いた。
誰かの幸せを彩るために、誰かの孤独が燃料として燃やされる夜。
僕は空っぽになった胸をコートに押し込み、眩しすぎる街路を後にした。
来年は星の光さえ届かないほどの、静かで、冷たい、誰も傷つかない闇がこの街を包めばいいのに。
そんなことを思いながら、僕は吐き出した白息の行方を追った。

