泣き虫な太陽 #3つのお題に空想のひらめきを
約1400字・童話
ある晴れた朝のこと。
窓を開けた僕は、「あれっ?」と驚きました。
空には雲一つないのに、きらきらした雨が降ってきたのです。
その雨は、普通の雨ではありません。
蜂蜜のように甘そうな金色をしていて、頬に当たると、お風呂のようにぽかぽかと温かいのです。
「大変です! おてんとうさまが、太陽が泣いています!」
テレビの中のニュースキャスターが、驚いた顔で言いました。
太陽は、ポロポロ、ポロポロと、涙を零し続けていました。
太陽の涙は、地面に落ちるとカチカチに固まって、綺麗な飴玉のような石になりました。
みんなはそれを「お日様の雫」と呼びました。
「お日様の雫」をお部屋に置くと、ストーブが要らないくらい温かくなります。
「わあ、これは便利だ!」
街の皆は大喜び。網やバケツを持って、お日様の涙を競って拾い集めました。
でも、僕だけは少し心配でした。
太陽の元気がなくなってきたからです。
空はどんよりとした灰色になり、きらきらした涙は降ってくるけれど、本当の「太陽の光」は届かなくなってしまいました。
「どうして泣いているの?」
僕が空に向かって聞いても、太陽は何も答えてくれません。
ある日、僕は庭の隅っこで、小さくて透明な、一粒の雫を見つけました。
そこは、三年前になくなった僕のおばあちゃんが、よく日向ぼっこをしていた特等席でした。
その雫を手に乗せた瞬間、不思議なことが起こりました。
目を閉じると、おばあちゃんの匂いがしたのです。
洗濯物を「ぱんぱん」と丁寧に広げるおばあちゃん。
蟻を踏まないよう、御飯をあげていたおばあちゃん。
誰も見ていないのに、道に落ちたゴミをそっと拾っていたおばあちゃん。
そんな優しいおばあちゃんの姿が、温かな記憶となって、僕の心に流れ込んできました。
僕はハッと気がつきました。
「そうか! 太陽は、おばあちゃんを探していたんだね」
おばあちゃんはいつも、「おてんとうさまが見ているからね」と言って、にこにこしながら良いことをしていました。
太陽も、そんなおばあちゃんのことが大好きで、毎日会えるのを誰よりも楽しみにしていたのです。
おばあちゃんがいなくなって、太陽は、ずっと寂しさを我慢していました。けれど、遂に寂しさがあふれて、涙が止まらなくなってしまったのでした。
僕は急いでお部屋に戻り、おばあちゃんが使っていた眼鏡を持ってきました。
そして、ベランダに立って、その眼鏡を空に向けて高く掲げました。
「おばあちゃんなら、ここにいるよー!」
僕は精一杯、手を振りました。
「おばあちゃんは星になったけれど、この眼鏡の中で、おばあちゃんは太陽を見てるよー!」
すると、空の高い所で、太陽が嬉しそうにピカッと光りました。
眼鏡のレンズも、キラリと輝きました。
まるでおばあちゃんと太陽が、「やあ!」と挨拶を交わしたみたいです。
太陽の涙は、ぴたっと止まりました。
灰色だった空は、みるみるうちに、突き抜けるような青空に戻りました。
ぽかぽかの、力強い光が、街中に降り注ぎました。
「わあ、温かいや!」
街の皆もお日様を見上げて笑いました。
それから、太陽が泣くことはありませんでした。
ある日、僕は誰も見ていない道端で、転がっていた空き缶を拾って、ゴミ箱に入れました。
その瞬間、雲の隙間から一筋の光が差し込んで、僕の指先を優しく包み込みました。
僕は空を見上げて、太陽にニッコリ笑いかけました。

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