約束の駅 #3つのお題に空想のひらめきを
約700字・ショートショート
約束の駅のホームに立っていた。
吐き出した白い息は、張りつめた冷気に触れて瞬く間に氷の粉のように砕け散り、寂寥とした空間に吸い込まれていく。コンクリートのベンチが尻の下で体温を奪い、指先は感覚を失っていた。
「来てくれるかなぁ…」
不安が、凍えた指の先からゆっくりと胸の中心を蝕む。
大切な約束を、まるで昨日のことのように鮮明に思いだす。
僕のこれからは、たった一つの約束に懸かっていた。
もし来てくれなかったら、僕はもう自分自身を信じられなくなるだろう。
遠い闇の奥から、低く重い汽笛の音が響いてきた。
汽笛は一拍ごとに大きさを増し、足元を伝う線路の振動が微かに肌を震わせる。
ヘッドライトが夜の帳を勢いよく切り裂き、轟音とともに列車がゆっくりと滑り込んできた。
扉が開く。
凍える空気の中に光が溢れた。
その光源の中央。そこに立っていたのは、待ち焦がれたその人だった。
未来の僕だ。
苦労の跡を感じさせない、勝利の希望に満ちた瞳をしていた。
「来たよ」
未来の僕のその一言は、世界の雑音を打ち消す、静かで確かな宣言だった。
「ああ、やった! 絶対来てくれるって信じてた!」
僕は思わず駆け寄った。未来の僕は僕の目の前でぴたりと立ち止まり、僕と同じ顔で、しかし何物にも揺るがない確信を宿した瞳で微笑んだ。
「僕が来たということは、どういうことかわかるね」
「ああ、もちろん」
未来の僕が過去の僕に会いに来た。
つまり、周囲の嘲笑を浴びながらも、僕がこれから開発するタイムマシンが必ず成功するという揺るぎない保証だ。
絶対に成功する保証がなければ、この孤独な挑戦を始めることなんてできなかった。
だから僕は自分自身に約束したんだ。
「成功したら、必ずこの約束の駅に来る。だから信じて待っててくれ」
開発に着手する直前の自分に、そう誓った。
昨日、しっかりと。

