星屑のティアラ #3つのお題に空想のひらめきを
約1000字・ショートショート
ホテル最上階の披露宴会場。
永遠に記憶に残る素敵な夜。
私の隣に座る彼が緊張で小刻みに震えていた。
「どうしたの? 緊張しすぎよ」
彼はギョッとしたように目を泳がせ汗を拭った。
私の頭上にある星屑のティアラを見て友人たちが歓声を上げた。
エレガントに微笑もうとしたが、口角を数ミリ持ち上げた瞬間、頬の筋肉が痙攣を起こし、笑みがひきつった。
彼から贈られたこのティアラは、最新の宇宙工学が凝縮された究極のジュエリーだ。
直径数ミリの星の欠片――超高密度の物質――を散りばめたその輝きは、ダイヤモンドなど比較にならないほど神々しい。
だが、致命的な欠陥が一つある。星の欠片は、その見た目に反して、とてつもない質量を持っているのだ。
ズシリとした重みに頚椎が断末魔の悲鳴を上げている。
たった数グラムに見えるその可憐な装飾は、まるで漬物石を頭蓋骨に直付けされたような暴力的重量を誇っていた。
「ねえ、こっち向いてよ。写真撮ろう!」
友人がスマホを構える。私は首を巡らせようとしたがピクリとも動かせない。奇跡的に垂直をキープしているこの首を少しでも動かしたらポキリといってしまうかもしれない。
「あれ? なんか、体が……」
友人が一歩、また一歩と私に詰め寄ってくる。
違う。彼女は近づこうとしているのではない。フローリングの床に、見えない急勾配が現れたかのように、靴底がズリズリ、ズリズリと変な摩擦音を立てて滑ってきているのだ。
彼女は海鳥のように両手をばたつかせながら、こっちに近づいてくる。
「ちょっ、なんで止まれないの!?」
「待って。来ないで!」
ガシャン、ガシャガシャガシャッ!
テーブルの上で整列していたテーブルナイフが金属音を鳴らしながら、ゆらゆらと宙へ浮かぶ。
「うそ、やめて……」
そうだった。質量あるところ引力あり。
私は今、輝ける特異点となり、パーティー会場の視線と凶器を引き寄せるブラックホールと化していたのだ。
編隊を組んだテーブルナイフが真っ直ぐに私の額に狙いを定めて向かってくるのがスローモーションで見えた。
「ああ……」
不変の質量は、不変の引力を生んだ。
そうか。彼の手が震えていたのは、ティアラの引力に抵抗していたからだったのか。
ナイフが目の前に迫ってくる。
ああ、やっぱり永遠に記憶に残る夜になりそうだ。

