カーボンクレジット格付とは何か?― なぜ価格との相関が生まれているのか ―
近年、 voluntary carbon market(VCM:ボランタリーカーボン市場)において、「カーボンクレジット格付」が注目を集めています。
カーボンクレジットは「1t-CO₂を削減・吸収した」という価値を取引する仕組みですが、その削減量が本当に信頼できるのかについては、これまで多くの議論がありました。
そこで登場したのが、第三者による「格付」です。
本記事では、
カーボンクレジット格付とは何か
どのような状況か
なぜ格付と価格に相関があるのか
について整理します。
カーボンクレジット格付けとは?
カーボンクレジット格付とは、簡単に言えば、
「このクレジットは、本当に温室効果ガス削減につながっているのか」
を第三者が評価する仕組みです。
カーボンクレジットでは、「1t-CO₂削減した」と主張されていても、
実際には削減されていない
削減量の算定が不十分
一度吸収された炭素が再び大気中に戻る
といったリスクがあります。
格付会社は、こうした“不確実性”を評価しています。
主なカーボンクレジット格付け会社
現在、主要プレイヤーとして知られているのは以下の3社です。
Sylvera
BeZero Carbon
Calyx Global
これらの企業は、クレジットプロジェクトごとに詳細分析を行い、格付を付与しています。
また、一部の企業は、
データプラットフォーム
認証機関へのデータセット提供
なども展開しています。
まだ格付対象は市場全体の一部
各社とも、詳細分析を伴う本格的な格付実績は500件ほどです。
現時点では、ボランタリー市場のプロジェクトからすると一部のみが格付対象となっています。そのため、カーボンクレジットを調達する際に格付を必須の要件としているケースは希少と思われます。
ただし、本格付以外にもAIを活用した簡易スクリーニングや予備格付のサービスなども進み、それらを合わせると数千件規模になります。
格付けが高いほど価格も高い?
現在、市場では「格付けが高いクレジットほど価格も高い」という相関が見られています。

ただし重要なのは、「因果ではなく相関であり」、「格付けが価格を直接決めている」とまでは言えない
という点です。
つまり、
「格付けが1段階上がったから○ドル高くなる」
という単純な関係ではありません。
なぜ格付と価格に相関があるのか
この背景には、大きく2つの理由があると考えられます。
理由①:高格付クレジットを求める需要が存在する
特に大口需要家である北米テック企業を中心に、
「BBB以上の格付を優先して購入する」
といった動きが見られています。
その結果、
高格付クレジットへの安心感
ESG説明責任への対応
などから、高値でも購入されやすくなっています。
理由②:もともと高品質なクレジットが高値だった
もう一つ重要なのは、
「格付けができる前から、市場は品質をある程度織り込んでいた」
という点です。
例えば、大規模な再エネにより創出されたカーボンクレジットは追加性や定量性に疑義があるとが見られ、価格が1ドル未満まで低迷しています。同様の理由で格付も低くなりがちです。そのため、方法論により格付の分布にばらつきがあります。低品質で低価格のカーボンクレジットに低い格付がついていると言えます。

また同じ方法論の中でも、例えばARR(植林)の場合、外来種を植林する商業林よりも、生物多様性に寄与する在来種の植林により創出されたカーボンクレジットは比較的高値で取引されてきました。商業林はカーボンクレジット以外の収入があることで追加性に疑義が生じて格付にマイナスに寄与することになります。ARRにおいてBBB以上とBB以下では10ドルの差がありますが、これは必ずしも格付が高いからとは言い切れないのです。

つまり、
「もともと高品質(低品質)だった案件に、後から高格付(低格付)が付いた」
という側面も大きいのです。
今後の展望
今後、格付の普及はさらに進むと考えられます。
ただし、カーボンクレジット市場に影響を与えるものは格付の評価対象である「1t-CO₂削減した」という価値だけではなく、
ネットゼロ宣言には吸収・除去系(Removal)しか使えない
気候変動だけでなく生物多様性や人権へのポジティブインパクトも重視したい
炭素除去の技術発展に資金面で貢献したい
特定の国や地域に貢献したい
など多様なニーズが存在します。そのため、1つのクレジットに対するWillingness to Payも多様です。
そのため将来的にも、
「格付と価格が強固に連関」
とはなりにくいでしょう。
ただし、いずれにしてもカーボンクレジット格付はその中で「品質の共通言語」として重要性を増していく存在と言えるでしょう。
