見出し画像

蓄音機専門店・梅屋の主人が語る「私の好きなSPレコード」その1

みなさま、こんにちは。

最近、いつ、レコードを聴きましたか?

〝レコードブーム〟と言われて久しいですが、とはいえ、レコードを聴く機会はなかなかないという方が多いのではないでしょうか。

当社は、2021年に『今日からはじめる蓄音機生活』(著・梅田英喜)を発行したご縁もあり、ちょっぴりレコードが身近な会社なんです。

この度、noteで著者の梅田英喜さんに、レコードや蓄音機にまつわるあれこれを書いていただくことになりました。本コーナーでは、LPレコードが登場する前の媒体、SPレコード(蓄音機用のレコード)を取り上げます。

どうぞ、ごゆるりとお楽しみください。

はじめまして。
大分県・湯布院にある蓄音機専門店「梅屋」の主人、梅田英喜です。

これから、ときどき、お気に入りのレコードを紹介します。

最初に取り上げるのは、キャスリーン・フェリアが歌う「風よ、南へと吹け」です。Kathleen Ferrier “Blow the wind southerly”


ア・カペラ(無伴奏)で歌われるイギリス民謡で、最初に聴いたのは30年以上も前。蓄音機から聞こえてきた、豊かで、温かみのある、深々とした歌声。そしてどこか憂いを含んだその声にいっぺんに虜になりました。


エディンバラにて。スコットランドの首都で1947年からはじまった芸術の祭典エディンバラ・フェスティバルにフェリアは1947年から毎年参加、数々の名演をのこした。
写真は “Kathleen Ferrier – A Memoir”(1954)より


録音は1949年2月10日、同じ日に録音された”Ma bonny lad”, ”The keel row” の2曲を裏面にした1枚として、同年の12月にイギリス・デッカから発売されました。10インチ(25cm)盤でレコード番号は F9300。


「Blow the wind southerly 」(Decca F9300)


F9300はSPレコード(78回転)の番号ですが、この曲は45回転、33回転のEP、LP、カセット・テープ、8トラック・テープ、CDとあらゆるフォーマットで発売され、デッカのカタログからは消えたことはありません。それほど愛された曲と言えますね。

最初に入手して以来、このレコードは20枚以上購入していると思います。今も見つけるとゲットしています。このレコードがきっかけで蓄音機の世界にはまる人もいます。

ア・カペラのSPレコードはほとんどなくて、ぼくが知る限り、シャリアピンに1枚あるくらいです。伴奏なしで歌うフェリアの声が聴く者の心に直接届く、そんな歌唱です。

フェリアは、1951年の「グラモフォン」誌のインタビューで、「私が録音した民謡、特に伴奏なしの“Blow the wind southerly”や“The Keel row”は、なかなか良い出来だと思う。」と話している。

いずれ、蓄音機で再生したものをアップします。

歌詞の内容を書いておきましたので、参考にしてください。

「Blow the wind southerly」(「風よ、南へと吹け」)

南風よ、南風よ、南風よ。美しい青い海を越えて、南へ吹け。吹け、愛しいそよ風よ、私の恋人を私のもとへ。昨夜、沖に船が見えると言われたので、私は急いで波のうねる海辺へと駆け下りた。しかし、どこにいても、私の恋人を運んでくるあのバーク船は、私の目には見えなかった。

風よ、南へ、南へ、南へと吹け。美しい青い海を越えて、南へと吹け。吹け、愛しいそよ風よ、彼を私の元へ連れてきて。深くうねる海を越えて軽やかに吹き抜けるそよ風の歌声を聞くのは、なんと心地よいことか。しかし、私の最愛の人の船を無事に私の元へ運んでくれる時ほど、その歌声ははるかに甘く、愛おしいものはない。

キャスリーン・フェリアは1912年イギリス中部の町プレストンに生まれ、1953年ロンドンで亡くなりました(享年41歳)。

活動期間はわずか10年ほどでしたが、ブリテンなどの作曲家や、ワルター、バルビローリ、クレンペラーなどの名指揮者に愛されました。

最後の舞台は、1953年4月の『オルフェオとエウリディーチェ』(ロンドン・ロイヤル・オペラ)でした。ブルーノ・ワルターはフェリアについて次のように語っています。 
        
「私の人生において、音楽の分野で最も素晴らしいことは、キャスリーン・フェリアとグスタフ・マーラーに出会えたことです――その順番で」

                *



蓄音機とSPレコードに興味・関心のある方は必読です!

★ご購入はコチラから〜!
『今日からはじめる蓄音機生活』梅田英喜

★目次
蓄音機ギャラリー 著者選りすぐりの有名モデルや珍しいタイプを34機種紹介します
Ⅰ章 準備編 蓄音機の種類と選び方を提案します(音質重視派/メカニズム派/インテリア派など)
Ⅱ章 操作編 ディスク型・シリンダー型の操作手順を写真構成で解説します
Ⅲ章 おもな蓄音機メーカー 内外10ブランドの盛衰の歴史を辿る
Ⅳ章 用語解説・文献資料 専門的な用語を詳しく解説


梅田英喜(うめだ・ひでき)
1957年北海道生まれ。明治学院大学仏文科卒業。10年あまりの編集者生活(青土社、音楽出版社など)ののち、蓄音機専門店「梅屋」をはじめる。都内の駒場、青山、神保町であわせて20年あまり営業。2015年春、店舗を大分県・湯布院に移す。さまざまな蓄音機イベントを通じて蓄音機とSPレコードの魅力を伝える活動を続けている。

梅屋
〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上1835
Tel:0977-85-8845
E-mail: info@umeya.bz