貴重な証言が満載! 新幹線開業に尽力した人々を取材した『鴨宮物語』
みなさま、こんにちは。
2026年4月、当社の代表・髙橋団吉の著書『鴨宮物語——新幹線を創り出した男たち』が、イカロス出版より出版されることになりました!
今回は、当社note担当が、代表・髙橋に、本書を執筆した経緯や注目してほしい点などについて聞いてみました!
——本書は、季刊誌『新幹線EX』で連載された「鴨宮物語」をまとめられたものですね。そもそもなぜ、鴨宮モデル線区で活躍された方々を取材しようと思われたのですか?
国鉄総裁の十河信二。国鉄技師長の島秀雄。東海道新幹線を作った両雄について雑誌連載して、以前、書籍にしました。
『新幹線をつくった男 島秀雄物語』と『新幹線を走らせた男 十河信二物語』です。
でも、この二人は、大組織国鉄のトップです。総指揮者。取材を進めるにしたがって、現場で活躍した数多くの人々について、そのリアルな体験談を書いてみたいと思うようになりました。
日本の鉄道はおもに狭軌(線路のレール幅)を採用していましたが、東海道新幹線は、広軌新線です。軌道も線路も橋も駅もトンネルも車両も……すべてを新しく作りました。
「鴨宮モデル線」は、新幹線開業前に作られた試験線です。小田原の酒匂川(さかわがわ)から東方向に30数キロ。ここで繰り広げられた現場の人々の活躍について、追いかけてみました。
——今回、取り上げた人物は、国鉄総裁から運転要員養成学校の先生など、じつにさまざまです。どのように人選したのですか?
20数年前、他社の雑誌連載準備のために、鴨宮モデル線区で「主任」を務められた方々に予備取材をさせていただきました。
しかし、その連載はスタート早々に中断となり、取材テープや資料などはそのままお蔵入り。二十年近く放置しちゃったんです。この間、ご逝去された方々もたくさんいらっしゃいます。
季刊誌『新幹線EX』で連載した記事は、そのときの取材テープをもとに構成しています。季刊誌だったので、一人に約1年かかります。
じつは、この連載(本書)ではまだ扱えていない方々も、たくさんいらっしゃいます。取り上げられたのは、ざっと半分ほどの方々です(冷や汗)。いずれ機会を見つけて、続きを書きたく夢見ております。
——取材中の印象的なエピソードを教えてください。
たーくさん。数え切れませんデス。
ここでは、当時、高校生だった方をご紹介しておきましょう。
磯兼雄一郎さん(本書P.341〜)。
磯兼雄一郎さんは、当時、小田原高校に通う高校生。毎日、通学しながら鴨宮モデル線区の様子をカメラに収めていた青年です。その写真記録はとっても、貴重。モデル線区関係者の方々も「よくぞここまで撮ってくれた」と絶賛しています。

右:掘削工事がはじまって間もない小峰トンネル(1961年9月14日)
撮影:磯兼雄一郎(本書より)
磯兼さんとご一緒に、60数年後のモデル線を散策させていただきました。とっても、愉しかったです。

写真提供:磯兼雄一郎(本書より)
——当初、国鉄内外でも「笑いもの扱い」だったという新幹線計画。これまでの取材を経て、なぜ実現できたのだと思いますか?
本書にご登場いただいた方々は、みなさん、戦前に生まれています。鴨宮モデル線区で主任クラスとして活躍されたとき、三十代の前半です。
彼らの話を聞いていると、時代のエネルギーというものを強烈に感じてしまいます。自分たちが、新しい日本を作るのだ……という強烈なモチべーションを持っていらっしゃる。とっても、ポジポジポジティブ。そうでなければ、とうてい新幹線は完成されていません。
新幹線計画は、すべてが「きわめて非常識」と伝えられています。予算、日程、マンパワー……「超非常識プロジェクト」でした。
それらの非常識の巨壁に穴をこじ開け、乗り越えて、夢の超特急が実現されます。鴨宮で奮闘した彼らには、組織の中で保身しようとする気配が微塵も感じられません。
「新しい時代を自分たちで築きあげるんだ!」
という力強い、健康なメンタル・パワーで輝いているのです。
筆者は、ここ数年、平静に読み上げることのできない一文があります。
技師長・島秀雄が、東海道新幹線開業のとき技術系専門誌に書いた文章の一節です。
「……それにしても人間というものは、ある決意のもとに事を進めていけば大体何事でもやれるものだという教訓を、この鉄道からわれわれは教えられたような気がする」
本書でも、ご紹介してありますので、ぜひ、ご一読ください。
ここで島秀雄が書こうとしている「ある決意」とは、国鉄総裁・十河信二の揺るぎない〝虚仮(こけ)の一念〟であったことはいうまでもありません。
虚仮(こけ)の一念
愚かな者でも一つのことを心に掛けてやればやり遂げられるということ。
そして、その「ある決意」は、当時新幹線計画に携わった数多くの人々、とりわけ鴨宮モデル線区で悪戦苦闘したわれらの主人公たちにも濃厚に受け継がれて、そして実践されていたことをあらためて実感いたします。
以前、作家の新井満さんと雑談していたとき、新幹線の話になって、新井さんは「新幹線は戦後日本の青春の証明ですね」とおっしゃいました。その通りだと思います。
——本書は、夢の新幹線計画を実現したみなさまへの感謝と、安全運行に携わるすべての鉄道マンへのエールを感じました。日々鉄道の現場で奮闘されるみなさまへメッセージをお願いします。
新幹線は、もう60年以上、「高速・定時・無事故」で当たり前です。しかし、その「当たり前」は、それを支え続けている数多くの関係スタッフさまたちの連日連夜の努力・尽力の賜物であることを忘れてはいけません。
鉄道という交通手段は、「人間社会」というとっても複雑怪奇な世界を、走る。走り続ける。走らせ続けています。そこには、「技術の合理性」では御しきれない不合理との戦いも、あります。どんなに自動運転化が進んでも、関係スタッフたちのプロフェッショナルな力が安全運行を支えているのだということを忘れてはなりません。
筆者は新幹線を利用するとき、ホームで待ちながら、車中で食事をしながら、車窓を眺めながら……どこかのタイミングで「ありがとうございます」と一言、心のなかでご挨拶しております。みなさまも、ぜひ、お声がけください。
髙橋団吉(たかはし・だんきち)
1955 年生まれ。千葉県出身。早稲田大学文学部露文科卒。株式会社デコ(出版/編集/イベント・プロデュース)代表取締役。ソーラーカー製作&レーシング「ZDP(ゼロtoダーウィン・プロジェクト)」代表。1995年、FIFAワールドチャンピオン(電気自動車部門)獲得。「NPO法人むしむし探し隊」理事長。
著書に『カマキリのエクスタシー』(小学館、1996 年)、『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(小学館、2000年、第 26 回交通図書賞)、『島秀雄の世界旅行 1936 - 1937』(技術評論社、2008年、第 35 回交通図書賞)、『新幹線を走らせた男 国鉄総裁十河信二物語』(デコ、2015 年)、『新編 新幹線をつくった男 伝説の技術者・島秀雄の物語』(イカロス出版、2024 年)など。

東アジア・シニアサッカー大会(over60歳)に三回出場!(撮影:八木達夫)
(右)小学生時代の筆者。
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髙橋団吉『鴨宮物語——新幹線を創り出した男たち』(イカロス出版)

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★番組情報
当社の代表・髙橋が、「先人たちの底力から〜知恵泉(ちえいず)」(NHK Eテレ)に出演します! ぜひご覧ください!
番組テーマ:「新幹線を作った男・島秀雄 伝説の鉄道エンジニア」
本放送:2026年4月7日(火)22:00〜22:44
再放送:2026年4月14日(火)13:50〜14:34
※本放送翌日(水曜日)〜1年間、NHKオンデマンドでの配信があります。
