無冠詞の kind of & 文法化
kind of や sort of は、語調を和らげる副詞(「ちょっと」「なんか」)として使われる。
その場合、a が消えて「無冠詞(単に kind of)」になる。
元々は「ひとつの種類」という意味の "a kind of..." だったものが、長い時間をかけて名詞としての性質を失い、1つの塊の副詞へと変化した結果、無冠詞となったのである。
1.本来の姿(名詞としての機能)
kind は「種類」という意味の普通名詞なので、数えられる名詞として当然 "a" がつく。
He is a kind of genius.
彼は、天才の一種だ。
(天才というカテゴリーに属するタイプだ)
この段階では、構造としては a + 名詞(kind) + of + 名詞(genius) という綺麗な形を保っている。
2.形容詞や動詞を修飾し始める(副詞へのジャンプ)
人間は言葉を話すとき、便利なフレーズを別の場所にも応用したくなる。
この「〜の一種だ」というニュアンスを、名詞だけでなく形容詞や動詞にも使うようになる。
*I am a kind of tired. (× 文法的に不自然)
「疲れている(形容詞)」の前に a kind of を置こうとすると、形容詞の直前に a(冠詞)が浮いてしまうため「座り」が悪くなる。
そこで、邪魔な "a" を落としてしまおう、という省略が起こった。
I am kind of tired.
3.フレーズ全体の、パーツ化(文法化)
冠詞の a が脱落したことで、kind of は「名詞の塊」から、完全にひとつの 「副詞(なんか、ちょっと)」 というパーツ(機能語)へ生まれ変わった。
言語学ではこれを文法化(Grammaticalization)と呼ぶ。
パーツ化してしまったため、もはや kind 自体が「種類(名詞)」として意識されなくなる。
数える対象ではないので、a が戻ってくることもない。
日本語の「一応」と同じ現象
これと全く同じ現象は、日本語にも見られる。
日本語の「一応(いちおう)」は、元々は「一(ひとつの)」「応(こたえ・応じること)」という漢字の組み合わせ(名詞的なルーツ)を持っている。
しかし、現代の我々は「一応、やっておきました」と言うとき、頭の中で「1つの〜」などとは全く考えていない。
文字通り「ひと塊の副詞」として消費している。
英語の kind of / sort of も同様に、副詞として特化するため、名詞の目印だった "a" を捨てた、というのが無冠詞になる理由だ。
